ロザリンドさんは押しつけたいだけ
皆のアイドル(笑)ロザリンドさん視点です。
カップ麺をすすりつつ聞いたのだが、ハラペコンはユーフォリアの食料事情を改善するために居たらしい。本来なら、ダンジョンを踏破した勇者に食料を渡していたようだが、ユーフォリアの民が弱体化してしまった為に誰も来ず………ついにスタンピードまで発生してしまったらしい。
「これさ、真琴と彼方さんで売らない?ユーフォリアの特産品になるよね」
「なるやろな。なんで俺もなん?」
「彼方さんはチョコレート作ってるから、珍しい食品を扱う商人にも繋がりがあるかなと思いました」
ポテチをかじりつつ、彼方さんが首をかしげる。
「そら、あるにはあるけどもなぁ。ここの正当な継承者はロザリンドちゃんやから、自分でやったらええんちゃう?あの、性別不明なオッサンもおるやん。かなりの儲けは間違いないやろ。間違いなく売れる」
「ミス・バタフライは現時点でオーバーワークだから、これ以上仕事を増やしたら過労死しかねませんよ。私も他に仕事がありますし、余裕があるなら彼方さんに頼みたいです。なんならうちの凛花も貸しますよ」
凛花を差し出すと、猛烈に抗議してきた。
「本人の許可なく貸すなッス!訴えて勝つッスよ!?つーか、凛花と書いてアホと読むなッス!!」
「今度みんなで肉じゃがパーティしよーよ」
「なんでもいたしますッス!なんなりとお申し付けくださいませッス!」
我が姪ながら、大丈夫なのだろうか。扱いやすすぎやしないか。
「一応シュシュ達とも相談してからでええか?特にアンドレが過労死せんか話し合っとかんと」
アンドレさん……。彼方さんの奥さんであるシュシュさんと彼方さんの補佐をしている死んだ魚のような瞳がデフォの蛇獣人さんを思い出した。なぜだろう。無理無理言っている気がする。
「返事は急ぎません。真琴とも擦り合わせが必要でしょうし」
アンドレさんの妄想を無視して彼方さんにそう告げた。ついでにウルファネアの復興にも役立つだろう。アンドレさんには頑張っていただこう。でっかい貸しもあることだし、損にはならないしねー。
それから、ユーフォリア城に戻ると、盛大に歓待された。
「本当に、本当にありがとうございます!!」
「ふぇ?は、はい??」
国王様までお出迎え!?ユーフォリア貴族と思われる人達が、総出で頭を下げている!?あの険悪だった公爵様まで!?
「我が国をお救いくださいまして、ありがとうございます。数々の無礼を……お許しいただけないでしょう。この命をもって贖いますゆえ、どうか……」
「あなた!?」
「いやいや、死ぬな!?」
いきなり自殺しようとしたウルリア公爵を、ディルクがアッサリ取り押さえてくれた。流石はできる旦那様!マジ愛してるぅ!!
「妻は他人の命を貰って喜ぶような鬼畜ではありません。贖いたいとおっしゃるなら、これからの貴殿の行動でお願いします」
「………そうですか。痛っ!」
どうやら公爵は足が痛いみたい。怪我でもしたのかな?
「ちょっと失礼」
足の神経断裂……古い傷みたいだけど多分治せる。欠損はなく、途中でちぎれたみたいね。
「足が……!?」
「治しました」
「あ、ありがとうございます!このご恩は一生忘れません!!」
「あなた………足が治ったの!?本当に!?ああ、非礼をお詫びいたします。なんとお礼を申し上げたらいいか……!!」
この夫婦、仲良しなのねってか、大袈裟すぎやしないかい?
「いや、気にしなくていいですよ」
「我らウルリア一族は、必ずやこの恩義に報いると誓います」
「気まぐれだから気にしないで!」
「ロザリンド……」
ウルリア公爵をさっさと解放した愛しの旦那様が、そっと私の肩に触れた。旦那様、フォローしてくれるの!?
「……時には諦めも肝心だよ?」
「絶対ノー!過剰な感謝はいらないです!」
フォローじゃなかった!いや、もうこのパターンはいい加減やめてくれ!普通でいいよ!別にたまたま出来るからやっただけであって、みんなの命を救いたいとか博愛精神とかは無いから!モフモフ目当てだから!!
「なんと謙虚な……」
「ロザリンドちゃん、諦めろッス」
「ロザリンドちゃん、諦めな」
「よくわからんが、感謝されるのはいいことでは?」
「だから、過剰な感謝はいりません!普通でいいんですよ!」
ディルクが私をよしよしと撫でてくれた。くっ、こんなナデナデぐらいでこの私が落ち着くとでも?はふぅ……落ち着くぅ。
「妻は照れ屋なのです。我らとしましても、今後ユーフォリアと友好的な関係でありたいと考えております。気持ちはわからなくもないですが、今回は貸しということで」
「………承知した」
流石はディルク!私が撫でテクにうっとりしている間に上手くおさめてしまった。スパダリ度がめきめき上がっておるよ。
お城で祝勝会をするとかで、案内されたのだけど。城に行ったら、やたらとやつれた真琴に会った。この短時間でいったい何が!?
「…………真琴、異常にやつれてない?」
「…………だいじょーブイっ☆」
「明らかに大丈夫じゃない!!!」
真琴は明らかに大丈夫じゃなかった。どーしちゃったわけ!?




