この姪にしてこの叔母あり
ロザリンドちゃんは凍った魔物を容量がおかしい鞄にひたすら仕舞いながら、迷うことなく歩き出した。歩きながらこちらに話しかけてくる。
「凛花を呼んどく?」
「凛花ちゃん?なんで?」
「ここのダンジョンが該当するかはわからないけど、ゲームに出ていたダンジョンのマップをすべて暗記してる変態だから」
「………へ?マジで?」
「マジマジ。変態でしょ?」
変態というか、それはスゲーわ。普通は覚えられないだろ。
「変態っつーか、凛花ちゃんって記憶力スゲーんだね」
ロザリンドちゃんが遠い目をしていた。
「興味があることへの記憶力と集中力と腐女子力はすごいから、それを勉強に活かしていたのよね」
「ナニソレ」
ロザリンドちゃんは沈痛な面持ちだ。何かを思い出したらしい。というか、腐女子力って何よ。嫌な予感しかしないから聞かないけど。
「ゲームに関連付けて暗記したまでは良かったけど、弊害もあってね」
「うん?」
「回答欄にゲームキャラの名前とか国名を書いちゃったり、もはや別の物語を創作しちゃったみたいよ。あれね、二次製作」
「うわぁ……」
それはもう、あらゆる意味で痛い。
「国連加盟国に、クリスティアが入ってた」
「世界を超えちゃったね!!」
クリスティアって確か、ロザリンドちゃんが住んでる国だね!そんなゆるーい会話をしていたら、ダンジョンに到着。
「……敵はいないみたいね。真琴、一応全部凍ってるけど罠が作動する場合もあるから気をつけて」
「わかった」
「あ、一応やっとくかなー。私は渡瀬凛!渡瀬言葉の姪であり、待ち人でーす!!」
なんかの暗号??ロザリンドちゃんが叫ぶと、洞窟が揺れて氷が割れていく!
「ぎゃああああ!?」
「危ない!」
危うく崩れた氷の下敷きになるところだったが、間一髪でディルクさんが俺とロザリンドちゃんを担いでダンジョンから出てくれた。残念なのは俺もいるせいでロザリンドちゃんまで俵かつぎされてることかな!
「大丈夫?怪我はない?」
いや、ディルクさん、マジイケメン。カッコいいなー。
「アニキって呼んでいいですか?」
「やめて」
「ああん、ディルク超イケメン!好き!」
ロザリンドちゃんにじゃれられて、はにかむイケメンディルクさん。ロザリンドちゃんはマジでいいお婿さん捕まえたね。ああ、ウールンで癒されたい。俺も嫁に会いたくなってきた。あのフカフカなおっぱいとフワモフな体毛が恋しい。
ところで、ダンジョン入り口で土下座しているロボはいつまで放置なのかな?すげえさっきからチラッチラしてるよ?あ、まだ無視ですか。サーセン。
「………マチビトサマ……」
「ディルク、ありがとう!ディルクが居なかったら危うく生き埋めになる所だったよ!」
「にゃ!?こ、こら!人前だからね!?服の中に手を入れない!」
ロザリンドちゃん、明らかにロボが話しかけたら生き埋めになってたを強調したな……。ロボよ、ロザリンドちゃんが落ち着くまで待つしかなさそうだぞ。あ、地面に額を擦り付けてる。
「………ロザリンドちゃん、ロボかわいそうじゃね?」
「ディルクが居なかったら、私はともかく真琴は死んでたけど?私は最悪ヴァルキリーでダンジョンぶっ壊すなり結界張るなりできたけど、真琴は無理だよね?」
ロザリンドちゃんが指差したダンジョンを見た。うん、死んでたね!間違いないわ!
「ロボ、反省しろ!」
「モウシワケアリマセンデシタ」
ロボは素直だった。というか、このロボはなんなの?ロザリンドちゃんが叫んでた話となんか関係があるの?
「ロザリンドちゃん、待ち人ってナニ?」
ロボではなくロザリンドちゃんに聞いたのだが、答えたのはロボだった。
「マチビトトハ、ワレラガますたーニツグケンゲンヲモツオカタデス。ワレワレハ、ズットマチビトサマヲオマチシテオリマシタ。ナゼカシセツがトウケツシテシマイ、ハソンシタタメニタイハンガトウカイイタシマシタガ、マチビトサマヲカンゲイイタシマス」
つまり、ロザリンドちゃんが凍らせたから俺は死にかけたのではないだろうか。ロザリンドちゃんをジトーッと見ると目をそらした。本人もそこに思い至ったらしい。気まずそうだ。
呆れた目でロザリンドちゃんを見ていたら、預かった袋が光だした。
「うお!?」
「あ、ナビィ君かな?」
ロザリンドちゃんに袋を渡すと、彼女はそこから鍵を取り出した。何故か鍵から新しいロボが出てきた。
「座標ヲ確認。ハラペコンノエリアト確認。遺跡ノ大規模ノ損壊ヲ確認。マスター、修復許可ヲ要請シマス」
「うん、許可します」
「了解」
ロボは壊れた遺跡に入っていった。土下座していたロボもついていった。
「ロザリンドちゃんはロボの親玉なの?」
「ちっがあああああああう!!たまたま父方の叔母が遺産として残したの!」
「え?つまり、ロザリンドちゃん……凛さんの叔母さんが御茶ノ湯博士?」
「それもちっがあああああああう!!」
それから丁寧に待ち人について説明されたが、つまりロザリンドちゃんがロボの親玉で、凛さんの叔母さんが御茶ノ湯博士って認識で合ってるんじゃね?と思ったのだった。
この叔母にして、この姪ありだな。




