朱に交われるなら、赤
狩りをしていて思ったのだが、真琴はあまりにも貧弱すぎた。なんだかんだで弱肉強食な獣人社会で暮らすならば、これはよくない。
「真琴、修行しよう」
「修行?嫌な予感しかしないんだけど。というか、趣味がゲームのインドア派に無茶言わないでよ」
真琴が修行を拒否したので、それがいかにこの世界……というか獣人社会において必要なものであるかを説明した。真琴も渋々ながら頷く。さらに、真琴自身にはある特技があった。それを活かせれば、彼はとてつもなく強くなるに違いない。
「今から筋トレしたって、一朝一夕で筋肉はつかない。非力さを補う、文明の利器を与えよう」
「これは……………!」
そう、銃。かの有名なアニメ・ルンパ五世の愛用銃のレプリカである。なかなかいい出来だと思うのだ。真琴はゲーセンに行くとガンシューティングで常にハイスコアを叩き出していたと聞いた。つまり、射撃が得意ということだ。魔力を弾にして打ち出すタイプなので、ゲーセンの銃と同様に反動もない優れものであーる!
「どうかな?」
「ロザリンドさん、作り直し」
「………………………へ?」
「作り直し」
真琴の目が、すわっていた。
「これ、ルンパ五世の愛用銃のレプリカだよね?気持ちはありがたいんだけどさ、作りが雑なんだよね。いい?そもそもこの銃の構造は………」
オタクターボスイッチがオンになった兄と、今の真琴の目が重なった。地雷を踏んでしまったらしい。それから、私は延々と銃について真琴に説明を受けた。最初は隣で大人しく聞いていたディルクさんもにゃんことなって昼寝してしまった。情報量が多すぎるよ!わかったよ!なんちゃって銃はダメなのね!悪かったよ!!レプリカ作るなら、ちゃんとしたのにしろって事ね!
謝罪するから、解放してくれと願ってから、さらに一時間。
ようやく解放されたのですが、リテイク続きで泣きそうです。
「も、もうよくない?」
「駄目。俺の命がかかっているんだよ?」
そう言われてしまうと断れない。作る、試し撃ち、作る、試し撃ちを繰り返し、最終的に真琴はいわゆる短銃……本来ならば一発しか撃てないデリンジャーに似た魔法銃と、連射式自動小銃で落ち着いた。デリンジャーもどきは魔法銃なので魔力が尽きるまで連射可能。自動小銃は弾倉に魔法陣を刻んだため、大量の弾を装填することが可能。
すでにワルサーの面影は微塵もない。真琴の希望でマシンガンやライフルも作ったが、結局は反動負けしたり射撃精度が落ちて味方を傷つけかねないので、お蔵入りとなった。
「じゃあ、行くか!」
「もーヤダ疲れた……」
真琴は待つだけだからいいが、何度もリテイクされたせいで、私のメンタルがゴリゴリ削られた。拗ねリンドにクラスチェンジである。
「帰ったらもふ接待だぞ」
「地の果てまででもお供します!」
「その武器は遠隔用だろうから、護衛としてついていくね」
というわけで森へリターン。
「ははははははははははははは!!来いや来いやああああああ!!」
「「……………………」」
「わははははははははははは!当たる当たるううう!!」
「「………………………」」
銃を入手した真琴は、ヘタレを返上して殺戮の限りを尽くした。私達は、真琴が倒した獲物をひたすら血抜きするだけ。
「…………護衛は要らなかったかな?」
「いいえ、ディルクがいないと私の癒しが無くなります。友人とはいえ、二人きりなんて嫌ですよ」
変な噂を流されても困る。真琴も私も余所者なのだ。用心しておかないとね。
「そっか。それにしても、マコトさんはこう……ロザリンドの友達にしては大人しいと思ってたけど、やっぱりロザリンドの友達なんだなぁと思った」
「どーゆー意味ですか!??」
「いやその……ロザリンドを筆頭に、リンカさん(かなり変わってる)ユウキさん(だいぶ変わってる)カナタさん(やっぱり変わってる)だから……」
「違うもん!クランもふもふ主義のメンバーがちょっと……だいぶ変わってただけで、私ってか凛はマトモだもん!!」
「ええ?あー、うん?」
納得してなさそうだが、同意を得たのでよしとしよう。
銃を得た真琴は、もはや別人であった。自信に溢れている。ちょっと心配になったが、本人はきちんと自分の非力さや銃撃に他者を巻き込む危険も理解していて私から索敵や戦い方を教わる姿勢があった。
真琴の銃は持ち主以外は使用不可。分解不能にしたので悪用の心配もない。とりあえずこれで真琴は大丈夫だろうと城に戻ることにした。
なかなか更新できず、すいません。
少し落ち着いてきたので、また更新していきたいと思います。




