爆走聖女ロッザリンドオオ
シープルちゃんのご両親を落ち着かせ、勧誘してみた。いい人材はいくらいてもよいのです。これはもう、スカウトするしかない!
「ところで、ご息女なのですが」
「はい?」
「大変利発で魔術の才能がございます。百年に一人の逸材……と申し上げても過言ではないかと」
「うちのシープルが?」
ご家族は半信半疑なご様子だね。しかし、意外にもここでシープルが発言した。
「あたし、習うならロザリンド様から習いたいです。今じゃなく、もっとちゃんとしたあたしになれたら。あたし、ロザリンド様みたいに強くなりたい」
「「シープル!」」
ご両親が感動している。シープルちゃん、いい子や……!それに、瞳の強さが気に入った。その、強い意思を宿した瞳に免じて、ここは引くべきね。
「シープル、貴女の意思を尊重します。必ずや、わたくしに会いに来てちょうだい」
シープルにバートンの家紋が入ったペンダントを渡した。これはバートン家に縁がある者の証だ。他国から私を訪ねてくる自由気ままな友人達が門前払いされないように作ったもの。
「ロザリンド様……必ず、会いに行きます!」
そんな和やかムードをぶち壊したのは、さきほどこってり絞ったご婦人であった。旦那と部下を連れてきたらしい。なかなかいい根性である。
「大勢で失礼する。妻が失態について執拗に叱責されたと訴えているのですが、事実でしょうか?」
「一部は事実ですが、全部ではありませんわね。執拗にとの事ですが、奥方から謝意が微塵も感じられませんでしたから。そもそも、奥方が何をしたからこのような事態に陥ったかご存知ですの?その上で抗議なさっているのでしたら、公爵様はクリスティアやウルファネア……人族・猿族・狼族・犬族を内包するすべての国家と戦争でもなさるおつもりで?」
妻は直情的だが、公爵はそれなりに理性的なようだ。私の言葉に激昂せず……怯えもしなかった。
「いいえ、そのようなつもりはございませんが、我々にも矜持がございます」
「では、どういたしましょうか。奥方はわたくしに『不当かつ執拗に』謝罪を要求されたと言い、わたくしは『謝意を感じられなかったため、妥当だ』と言っております」
「そうですね。互いの話は平行線だ。ですから、私と勝負していただけませんかな?」
「勝負?」
結果として、私は勝負を承諾した。面白そうだったし、得意分野だったからね!勝負の方法は『闘牛』だった。こちらでの正式名称はバトル・カウと言うらしい。
「本当に大丈夫なのですか?なんなら俺が代理をつとめます!」
シープルちゃんのパパ……いい人!
「いいえ、大丈夫ですわ。シープル」
「はい!」
「わたくしをよく『視て』いなさい。貴女にもわかるように戦うわ」
「は、はい!!」
うむ、いいお返事だね。笑顔でシープル達に手を振った。
「ロザリンド、くれぐれもやり過ぎないようにね?」
「ええ、理解しておりますわ。カーティスよりも加減は得意ですもの。問題ありませんわ」
バトル・カウのルールは簡単。いかに美しく牛魔物と戦い屈服させるか。審査員が審査して、得票数で競うものなのだそう。武器の使用は不可。専用の布と縄のみ使用可能。こちらはルールもあやふやなので、公爵が先攻としてもらった。
今、専用の闘技場でなかなかに見目がいい羊獣人がひらりひらりと牛魔物のをかわすたびにお嬢様達がキャーキャー言っている。やがて疲れた牛魔物を縛り上げ、その背に飛び乗った。
「ふぅん……」
あの程度なら問題ない。動きも直線的だ。ドレスのまま闘技場に立ち、一瞬で先ほどの羊獣人が着ていた服と似た服装にチェンジした。髪をポニーテールにまとめあげ、艶然と微笑んでみせた。
「ロザリンド様、素敵いいいい!!」
シープルの声援に、笑顔で手を振った。なんか、明らかにさっきの牛魔物より強力な奴を連れてきたな……?まあ、いいけど。
「棄権しますか?」
「いいえ、ずいぶん美味しそ…………活きがよさそうな牛さんですわね」
開始と共にオープンゲートから……出る予定だったのだろうが、ゲートを突き破って先ほどより大きな牛魔物が突進してきた。いくら速くとも、直線的な動きだ。難なくひらりとかわす。お手本は散々見せてもらった。再現するのは問題ない。
「ロザリンド様、カッコいい!!」
シープルちゃんの声援に、余裕で手を振る。しかし、困ったな。先ほどの牛魔物の上位種であるからか、スタミナが切れる様子がない。ロープで縛ろうにも、わかりにくく切れ込みが入っているし今の状況では拘束してもロープが弾け飛ぶ。
「うん、よし」
魔力を練り上げ、一気に解放した。テーマソングはハナと雪の女王のテーマソングで、『あるがままに』をお願いします。牛さんは暴れると嫌だから、威圧をかけて大人しくさせた。硬直した隙に、解放した魔力で歌って踊りながら氷の城を作っていく。城のてっぺんに牛さん(支えはお腹だけ)がいる。私への恐れと高さへの恐怖で真っ白になっている。
「……なんにも怖くないわ♪」
歌のフィナーレでお腹の支えが砕け、牛さんはで氷の城の塔からのびる滑り台を滑っていく。その勢いたるや、ジェットコースターも目じゃないだろうなって勢いである。最後に象の鼻みたいに宙返りするよう作られた滑り台を越え、空中で高速回転し、私が魔法で緩やかに着地させた。
牛さんは、どこかのジョーさんみたくすっかり燃え尽きてしまったらしく、私が背に乗っても動かない。ロープでリボン結びしてあげた。
あれ?フィニッシュなのに歓声が………??と思ったら、一拍遅れて大歓声が響き渡った。
「素晴らしい!!これは………新しい芸術だ!!」
先ほど手本を見せてくれた羊獣人さんは号泣していた。んんん??どゆことかなー??
苦笑いするディルクを見て、悟った。ヤリスギタンデスネ??後悔するも、あとの祭りである。今、場はスタンディングオベーション。皆が感動していて………無力な私には、感動の閾値が低すぎるよ!!と内心つっこむしかできないのであった。
安定のロッザリンドであります。




