なんでこうなった
私の雄叫びにより、世界滅亡の危機は去った。しかし、皆べったりくっついて離れない。うちの子達はいいけど、精霊王は帰っていただきたい。
「ロザリンド、はい」
落ち着いたスイから渡されたのは、転移魔法入りのブローチ。あえて持っていかなかったら裏目に出てしまった品だ。
「ありがとう」
素直に受け取り、ナデナデしてあげた。うちの子、気が利くのよね。
「あ、あんまり心配させないでよね」
スイがデレ期です。でら可愛い。ツンデレ、素晴らしい。なんだかんだで大人しく私にナデナデされておる。可愛いー。
「ママ、アリサは?」
「アリサもお利口さんだからナデナデ〜!」
もちろんアリサも安定の可愛さです。
ええと……何故、皆さん並ぶのですか?ロザリンドさんにナデナデされる会の行列はこちらでしたか。人気者はつらいぜ。何故かミニサイズ精霊王まで撫でたよ。解せぬ。
「マスター、世界ノ危機モ去ッタコトデスシ、状況ヲ確認シテモヨロシイデスカ?」
行列もなくなり、皆が笑顔で帰還してからナビィ君にわかる範囲で説明した。
「カミサマンモ整備ガ必要デスネ。コノ施設デナラバ可能デス。他設備モ整備ト修復ノ必要ガアルヨウデス。許可ヲイタダケマスカ?」
「うん、お願いするわ」
「了解」
ナビィ君はドローン的な機械を飛ばし、忙しそうに働き始めた。
「手伝える事、ある?」
「プラント丿魔力ガ不足シテイマス。供給ヲ要請シマス」
「オッケー」
プラントはよくわからないけど隠れ家を維持するための生産施設なのだそうだ。ナビィ君によれば、管理上必要不可欠なモノらしい。魔力供給を終えた私を待っていたのは、鳴り止まない通信魔具である。私を心配していたのは、精霊さん達だけではなかった。
はよ連絡よこせブリザードな大魔神・兄はもちろん、両親。ミルフィやラビーシャちゃんに、口うるさい賢者。さらにウルファネアの従僕達(自称も含む)やセインティアの皆様にも説明する羽目になった。ご心配をおかけしました。忘れてなんてイマセンヨ……?
さらに、すっかり忘れていたが、そもそも私はモフモフ接待をしていただくために真琴が住む羊獣人の国、ユーフォリアへ行く予定で……その道中襲撃を受けて行方不明になった。旅券は、ディルクから日程を聞いたユーフォリアが手配したそうで……国際問題になりかかっていたそうな。あっっぶなぁぁい!!真琴がマジ泣きでしたよ!!いや、うん……ごめん……すっかり忘れていたとは流石に言えませんでした。真琴は責任云々より、本気で私達の身を案じてくれていました。他の皆はなんだかんだで『どうせロザリンドだから無事だろうとは思ってたけど』とか『今度は何をやらかしたんだ』とか……酷くない!?私は被害者ですよ!??
だからこそ、罪悪感が凄まじい!!真琴、マジごめん!!
思いつく限り、関係各所に連絡してから隠れ家を出て………ドアを閉めた。首を傾げて、ワンモアトライ。
「え!?えええええええええええええ!??」
寂れた農村だったはずが、光り輝く綺麗な町になっていた。ナニコレ、ドユコト!?
「マスター、村丿機能ヲ九割修復イタシマシタ。後ハ、カミサマンノ自己修復機能ニ任セマショウ」
「なんで光ってるの?」
「ソモソモ、ココハ魔力貯マリト呼バレル場所デス。世界樹ガ吸イキレナカッタ余剰魔力ヲ村人ガ快適ニ暮スタメ丿動力トシテイタヨウデス。カナリ危ナイ所デシタ」
なんだろう。ものすごーく嫌な予感がする。
「危ないって、何が?」
「主ニ、コノ村ノ住人ト近隣諸国丿生命ガ、デスネ。マスターガ来ナケレバ、噴火ヤ大地震ナドノ大規模災害カスタンピードガ発生シテイタト思ワレマス」
「セェェェフ!!」
予想以上にヤバかった!!光っているのは修復された魔具が余剰魔力を吸い上げているからなんだそうだ。
「ありがたや、ありがたやぁぁ……」
なんか、拝まれているんですが?それも、複数の村人達に。以前、私はコレとよく似た眼差しをされたことがある。そう、肉の聖女わっしょい事件の時に!
「崇メ、讃エルガヨイ。コノ御方ノ命令ニヨリ、村ハ甦ッタノダ」
「………え!?」
いや、まあね!確かにナビィ君から聞かれて許可したよ?でも、直したのはナビィ君であって、私じゃない!!今純朴な村人さん達にそんな事言っちゃったら……!!
「皆の者!この御方こそ、この村のそうししゃであり、救世の聖女・コトハ様の血縁者……マチビト様である!!」
そして、さらにいらん情報を追加しやがったカミサマン。やめて、私はちょっとお転婆なだけの女の子ですから!!
「みぎゃああああああ!?」
そして、私は悲鳴に気がついたディルクが救出してくれるまでわっしょいされてしまった。ううう……わっしょい恐怖症になりそうです。エルフといい、ウルファネアの住人といい、なんで皆わっしょいが好きなんだろうか。永遠の謎である。
そもそも普通はそんなにわっしょいされない……と思うのは、私だけでしょうか?




