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悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!  作者: 明。
ロザリンド7歳・もふもふ従姉弟編
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再会と報告

 ルーミアさんには早速お店を辞めていただき、さらにお家も引き払っていただきました。どちらもこっそり私が口止め料と迷惑料でお金を出しました。

 荷物は少なく、ルーミアさんだけで持てるぐらい。本当に慎ましい生活してたんだなってぐらい物がなかった。






 さて、我が家に着きました。ジェンドは私の帰りがわかったらしく、ダッシュでお出迎えです。


「あ、あー!」


「いい子にしてたよ、お帰りなさいだって」


 相変わらずコウが通訳ですね。

 ジェンドは勢いよく私に抱き着き、尻尾を振りまくり大喜びです。わ、抱き着いたまま飛び跳ねないで!


「ジェンド、ただいま。会いたい人を連れて来たよ」


 ジェンドは目を見開いて動かない。ルーミアさんが両手を広げて、呼んだ。


「ジェンド!」


 ジェンドは私の腕からルーミアさんの腕に勢いよく飛び込み、泣きじゃくった。


「あ、ああああああ!」


「ジェンド、ジェンド…辛い思いをさせてごめんなさい。もう離れないからね」


「あああああああ!」


 ジェンドは何度も何度もルーミアさんに身体を擦り付けた。まるで存在を確認しているみたいだった。ルーミアさんも泣いていた。本当にジェンドに会いたかったのだろう。

 ジェンドの泣き声は、本当に…私まで泣けてしまいそうだった。私はしばらくは親子で、と2人をジェンドが寝泊まりしていた客室に通した。






 そして、私はレオニードさんとディルク、マーサで応接室にいました。

 マーサ、目が怖い。殺気をしまってください。


「マーサ、仕方ないよ。レオニードさんはルーミアさんが好きだからマーサに逆らってまで情報を隠したんだよ?」


「えほっ!」


 むせるレオニードさん。ん?私へんなこと言った?


「な、なんで…」


「えー?だって、妙に肩入れしてるし、私を口説いたのはルーミアさんにどこか似てたからかなぁと」


「…そうだよ!悪いかよ!全く相手にされてねぇけどな!ちょっといいなと思ってもつがい候補持ちとか、俺の女運悪すぎだろぉぉ」


 レオニードさんが壊れた。ちょっといいなは私か?なんかすいません。泣かないで。悪かったよ。


「…お嬢様」


「はい」


「相手の心を的確にえぐる…素晴らしい手腕にございます」


「違うから!わざとじゃないからぁぁ!」


「うん、でもそこはそっとしておいてあげるべきだったと思うよ?ロザリンドに悪気が無いのは解るけど」


 ディルクにまで言われました。


「うう…レオニードさん、すいません…」


「いや、俺もな…」


 お互いしょんぼりした所で状況報告です。


「マーサ、首尾は?」


「上々ですわ。あれと繋がりのある者は9割洗い出しております。あと1日もあれば完了いたします。それにしても、お嬢様…よくルーミア様を説得なさいましたね。流石にございます」


「あー、ルーミアさんをうちで住み込みジェンド付きで雇うことにしました」


「…お嬢様は、たまに予想外すぎます」


「ルーミアさんは多分、ルーミアさんが危険だからでは動きません。自分のプライドを傷つけても、現状でジェンドの最善としてここでの労働を選択しました。時間もないし、若干脅しもしたけどね」


「なるほど」


「ルーミアが危険?どういうことだ?」


 首を傾げるレオニードさんに説明する。


「これから…いえ、現在私は真っ向からワルーゼにケンカをふっかけてます。そして、私がジェンドを可愛がっているのは少し調べれば解ります。ルーミアさんを人質あるいは利用してこられるのが面倒です。ただでさえルーミアさんはワルーゼを信じていたわけですから、簡単に誘拐も監禁も出来るでしょう」


「…そうか。だから手段を選ばなかったのか」


「そういうことです。後はルーミアさんを私は知りませんでしたから、ルーミアさんの見極めもしていました。ルーミアさんがジェンドの害になるなら関係を断絶させて、私が最後まで面倒を見る覚悟でしたよ。レオニードさんの首尾は?」


「こっちも上々。もともと人望なんざ無いからな。ヤバい奴を怒らせたって噂のせいでどんどん人が離れていってる」


「ディルクの方は?」


「それとなく言われた相手に話してきたよ。本当に大丈夫?」


「ん?大丈夫だよ。むしろルーミアさん雇用については父様に話してなかったから、そっちどうしよう。兄様と最終兵器母様でいけるかな?」


 兄も母もジェンドを可愛がってるから大丈夫。父も多分大丈夫…かな。


「多分旦那様はルーミア様を気にかけてらしたから大丈夫ですよ、お嬢様」


 マーサの言葉にホッとする私。父と付き合いが長いマーサが言うなら大丈夫だろう。


 とりあえず、今日のお話はこれで終了。次この全員が揃うのは、計画決行の日だろうなと思った。









 ジェンド達がいる部屋をノックしてから入る。マーサは仕事でレオニードさんをついでに引きずっていった。レオニードさん、がんばれ。ディルクは私と一緒です。

 泣き疲れたのか、ジェンドは眠っていた。ベッドに腰掛け、ルーミアさんは優しくジェンドを撫でている。


「ロザリンド様、ジェンドは…喋れなくなったのですか?」


「こちらの言葉は理解していますし、はいはあいと意思表示しますが、私が会ってからは喋っていませんね」


「喋れなくなるぐらい辛い思いをしてきたのですね」


 悔いる表情のルーミアさん。私は彼女の手をとった。


「ジェンドが辛かったぶん、たくさん褒めてたくさん幸せにしてあげてください」


「…はい」


 ルーミアさんがすすり泣く。ジェンドは目が覚めたらしく、ルーミアさんの涙を舐めとる。


「あー、あー?」


「泣かないで、どこかいたいの?だって」


 コウがすかさず通訳する。ああ、ルーミアさんの涙が…


「ジェンド、お母さんはジェンドが優しくて嬉しいから泣いてるの。痛くないんだよ」


 ルーミアさんが頷く。涙でぐしゃぐしゃだけど、ジェンドに笑ってみせた。とても魅力的な笑顔だった。


「あー」


 ジェンドも笑った。通訳がなくてもわかる。よかったって言ってるんだね。


「ジェンド、ジェンドはこれからお姉ちゃんちでお母さんと暮らします」


「あい」


「お母さんとずっと一緒です。お姉ちゃん達とも家族になってくれますか?」


「あい!」


 ジェンドはニコニコで尻尾を振った。


「お姉ちゃん、ジェンドも一緒に住むの?」


「そうだよ。私の弟みたいなものだから、仲良くしてね」


「うん。やったー!ジェンドも一緒!」


「…貴方は、蛇の獣人?ジェンドのお友達?」


 最近のコウは人の姿でよくジェンドと遊んでいるので今日も人型でした。


「んーん、僕ドラゴンで、お姉ちゃんの精霊だよ。ジェンドの友達!お姉ちゃん、僕皆にもジェンドも一緒に住むの教えてくるね!」


 ルーミアさんは固まっていた。


「ドラゴン?」


「せ、正確には火の精霊とのハーフドラゴンです」


「まああ、そんな子の加護があるなんて、ロザリンド様は凄いのね」


「ママ!ジェンドもここに住むの?ジェンド、ずっと一緒だね!」


「あい!」


 アリサとジェンドはハイタッチして嬉しそう。


「…まま?」


 ぎぎぎ、とこちらを見るルーミアさん。


「いや、初潮も来てない身体ですから、出産できませんよ」


「マグチェリアに魔力を注いで生まれたから、言ってるだけだよ。ジェンド、良かったね」


「よかったな、ジェンド!俺も嬉しいぞ」


 スイ、ハルも来ました。私の精霊さん達に囲まれ、ジェンドはキャッキャと楽しそう。


「まあああ、精霊様がいっぱい…」


「ちなみに、全員ロザリンドの加護精霊です」


 ばらさないでくださいよ、ディルク!ぷうっと頬を膨らませる私に苦笑するディルク。


「まああああ、ロザリンド様って…凄いを通り越しておかしいのね」


「私は普通です」


 どの辺が?と真顔で全員からツッコミを受けました。か、悲しくないもん!


 ちなみに父はアッサリとルーミアさんの雇用を了承。もともと結婚も反対してなかったらしく、別に貴族に戻るでも働くでも好きにしていいとのこと。ルーミアさんは頑なで、働く選択をしました。ルーミアさんは母と友人だったそうで、母と楽しそうにおしゃべりしてました。



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