大変合理的な狩り
ダンに書いてもらったリストを読み返す。
・億千万バッファローの肉
・ウコッカトリスの卵
・獣王牛鳥の肉
・海王マグロ
・レインボーシュリンプ
…等々。
狩りといえば、ジェラルディンさん。喜んでついてきました。尻尾をブンブンしています。ジャッシュも非番なんだそうで、ついてきました。ジェンドも来てくれました。彼も私のために何かしたいのだそうです。彼らに依頼料を払おうとしましたが、少しでも恩返しがしたいと断られました。
さて、世界地図を広げて思案する。生息地がバラバラなんだよね~。どっかにボスクラスモンスターがまとめて生息してるとこないかなぁ…って、海系はさすがに無理か…
これはまともにやったら年単位になっちゃうかもしれないなぁ。そんなにほいほいボスクラスはみつからないし…
「あ」
あった。ありましたよ、すべての獲物が狩れる場所!
というわけで、やってきました!ウルファネア城地下のエクストラダンジョン!!
「…まぁ、協力するけどさ」
鍵子さんのお膝でまったりしているやる気なさげなダンジョンマスターだが、協力してくれるらしい。
「待ち人様への態度がなっていません」
「キャイン!?」
なんと鍵子さんはダンジョンマスター(子犬バージョン)の尻尾を鷲掴みにして振り回した。ダイナミックすぎる!
「鍵子さん!?わんこの尻尾を持ったらダメ!わんこは優しくもふるべきです!尻尾がちぎれる!」
「いや、犬じゃない。銀狼族だ」
「いや、そもそもダンジョンマスターだからね」
「と、とりあえず可哀想だからやめてあげてください!」
論点がずれてるジェラルディンさん、クールなジェンド、優しいジャッシュなのでした。
「喜んで協力させていただきますぅぅ!!」
泣き叫ぶダンジョンマスターは、そう言ってようやく解放されたのでした。
そしてボス部屋に転移させられ、狩りの開始です。
億千万バッファローがあらわれた!
ジェラルディンさんがやっつけた!
ウコッカトリスの卵があらわれた!
ジャッシュがそっとしまった!
獣王牛鳥があらわれた!
ジェンドがやっつけた!
海王マグロはピチピチしている!
ジャッシュが微妙な表情で捌いた!
レインボーシュリンプの群れがあらわれた!
銀狼親子がやっつけた!
雑!!
いや、楽だけども!提案したのは私だけども!待ってれば獲物が召喚され、倒すだけというなんともお手軽な狩り。
卵なんかしまうだけだよ!!
「なんか、物足りないね…」
「うん…」
しかも銀狼親子の機動力が高すぎるので、ヴァルキリーの出番もなかったよ。
「ワガママだなぁ…デザ「それやったら、チョン切るから」
あの、確かにチョン切るとは言いましたが、貴殿方ではないですよ。あと、股間を隠さないで。せいぜい丸刈りにするぐらいですよ。
「じゃあ、こんなのは?」
見たことない…バッファロー系?のわりに、頭が3つ、角も生えててドラゴン並みにでかくて超強そうな魔物があらわれた!
「ぬ!これは…」
魔物はジェラルディンさんの一撃を避け、ジェンドの一撃を結界ではじき、ブレス攻撃をしてきた。
「あっぶなぁぁ…」
咄嗟に結界をはったから被害はないが、下手したら即死じゃない?
「ふははははは!相手に不足はない!主!あれは恐らく不可説不可説転バッファローだ!!」
「なんか凄そう!」
私もゲームで見たことないよ! あ、よく見たら尻尾が蛇…ジャッシュが絡みつかれてるぅぅ!?
「ヴァルキリー!」
「ロッザリンドォォ!!」
かぷり。
いや、ヴァルキリーよ…何も自ら頭を蛇の口に突っ込まなくても……と、とにかく今がちゃーんす!!
「風よ!」
焼いたり凍らせてはいい肉にならない!血抜きせねば!
「わわわわ!?」
「あわわわわ!」
「ぬおっ!?」
「きゃあああああ!?」
私の魔法が反射された!?しかも乱反射されたから、味方と私が危なかったよ!!
「どうやら、毛皮に魔法反射能力があるようだな」
「なるほど」
ならば、手はある!
「ヴァルキリー・バリ観音モード!!」
「ロッザリンドォォ!!」
くっだらない駄洒落である。山□君、座布団持っていかないで!
しかしバリカンを持った千手観音風ヴァルキリーが容赦なくバッファローの毛を刈っていく。手が多いから、早いねぇ。その間、私たちはバッファローの気をこちらにそらしていた。
「なんか、毛がないとみすぼらしい…」
しかも、ヴァルキリーったらお茶目だからモヒカン風に刈ってるよ!
「ぶも!?ぶもぉぉぉ!!」
なんか言葉が通じちゃったのか、バッファローが私を狙って突進してきた。やばい、避けられない!結界で耐えきれるか!?
「主!我が主は、俺がまもぉぉる!!」
「ぶもぉぉぉ!?」
ジェラルディンさんが私を庇い、ドラゴンサイズのバッファローをぶん投げた。流石です。
そして、まるでそれを読んでいたかのようにジェンドがバッファローの腹部を切り裂いた。
「ぶもぉぉぉ!?」
「ていっ!」
とどめはジャッシュが3つの頭部、眉間にナイフを打ち込み、バッファローを倒しました。あ、蛇にもナイフが刺さってたわ。
しかし、素晴らしい連携です。そして、ジャッシュが初めて活躍したからか…とてもやりきった感ですね。
なんかジャッシュがチラッチラッとこっちを見てる。なんとなく背伸びして頭を撫でたら超喜んでた。いや、君はいつも頑張ってるからもっと誉めてあげたいぐらいだよ。
当然ジェンドとジェラルディンさんにもねだられた。ジェンドはともかく、おっさん…息子を押し退けてまで撫でられに来るでない!
いや、撫でたけどね。
「ねー、待ち人様ぁ」
「んー?」
「このリストより高ランクの魔物の方がいんじゃね?出そうか?」
私はにんまりと笑った。ジェラルディンさんも楽しそうだ。ジェンドとジャッシュはナニかを諦めた様子だが、付き合うと言ったからには最後まで付き合っていただこう。
そして、私は…私達はやりきったのだった。
味見してみたら塩焼きでもどれも美味しすぎて口から怪光線が出たり、目からビームが出たり、涙と鼻水とよだれが止まらなく高なったりしましたが、そのインパクトを上回る美味しさでした。




