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悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!  作者: 明。
ロザリンド7歳・もふもふ従姉弟編
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宰相執務室の現在

 可愛いジェンドは起きたら全裸でした。完全獣化は可愛いのですが、服が脱げるのが困りますね。私はディルクと別れて父の執務室に戻りました。聖獣様はお散歩らしいです。

 戻った私に父が声をかけました。


「遅かったな」


「騎士団の模擬試合トーナメントに飛び入り参加して優勝してきました」


「そうか」


「いやいや、昼休憩に何してるんだよ、お嬢様!」


 即座にツッコミするアーク。私もそう思います。


「いや、模擬試合やってるよと聖獣様が教えてくれて見に行ったら、ルドルフさんに誘われて…後は成り行きで。楽しかったです」


「感想は聞いてません!全くお嬢様は目ぇ離すと毎度とんでもないな」


 頭痛ぇとため息をつくアーク。


「えー、毎回ではないでしょ…」


「エルフの森」


「…不可抗力です!」


「…あの、エルフの森って、冒険者殺しを倒したとかって…」


 おずおずと会話に入る秘書官さん。この人は父の執務室で初めて半年継続している猛者である。気弱そうだが、意外に図太いなと思うことも多々ある。というか、図太くないと宰相執務室秘書官は無理である。

 皆様は覚えているだろうか。彼は私が3歳で初めて城に来た日に書類提出を押し付けられた既婚の文官さんである。名前はジャックさん。


「ほぼお嬢様独りで仕留めたらしいぞ」


「…え?」

「…は?」


 さすがにもう一人の秘書官さんも反応した。


「ち、違う!ディルクも協力しましたよ!」


「…囮としてな。相手を無力化して一刀両断とか…お嬢様」


「…はい」


「情報は正確に!面倒だからって省略すんな!しかも意図的に省いただろ!」


「気のせいです」


「ユグドラシルの件は」


「説明が面倒でした」


「一刀両断については」


「嘘はついてません」


「…本当の事も言ってないよな?」


「てへ」


「ゴルァァァ!!ちゃんと話しなさい!!」


「いや、兄が居る場では話せなかったんですよ」


「なら、後で話せよ」


「了解です」


 ジャックさんが再びおずおずと聞いてきた。この人、結構気弱そうに見えるけど度胸あるよね。


「結局、ロザリンドさんは冒険者殺しを仕留めたんですか?」


「…わ、私がやりました」


 沈黙が気まずい。もう一人の秘書官さんは仕事に戻っている。さすがクールですね!


「…小さな頃から思っていましたが、ロザリンド様は規格外ですよね」


 穏やかで遠い目をしたジャックさん。帰ってきてください。


「いや、普通です」


「「「どの辺が」」」


 アーク、ジャックさん、もう一人の秘書官ナーダさんまで揃ってつっこみました。


「な、ナーダさんまで酷い!俺興味ない的な雰囲気してたくせに!」


 机をバシバシ叩いて不満を表明する私。対してナーダさんは私から目を逸らす。ナーダさんは普段前髪で目が見えないのです。


「…いや、事実ですから」


「…せい!」


「うわぁ!?」


 ロザリア協力のもと、ナーダさんの前髪を上げてやりました。

 明らかに狼狽する彼の顔には額から頬にかけて無数の鱗があります。硬質な針金みたいな銀の髪に、きらめく銀の鱗。瞳は澄んだ水色ですね。


「は、離して…「綺麗…」


「…は?」


「ああ、失礼しました」


 さっさと解放してやる。予想はしていたが結構な美青年なのだから、前髪で隠さなくてもいいのに。


「ロザリンド様は蛇獣人も平気なのですか?」


「あ、蛇さんなんですね?ドラゴンか何かかと思ってました」


「…ドラゴン?」


「私の精霊さん、ハーフドラゴンなんですよ」


「……」


「……」


 秘書官2人は顔を見合わせ、声を揃えて言いました。


「「ロザリンド様はおかしいです」」



「2人してなんですか!私だってたまたま知り合ったんですよ!」


「知り合うとかいう発想がまずありえません」


 バッサリと切るナーダさん。


「そもそも、普通討伐ぐらいでしか会いませんし、会ったら即座に戦闘になりますからね?生死を賭けた戦いになりますから、会話とか手なずけるとかまず無理ですし」


 一応説明してくれるジャックさん。


「ううううう…」


 私はやはりおかしいらしいです。アークも父も笑わない!うー、なんかショック…


「…まあ、ドラゴンが普通なお姫様なら、蛇獣人ぐらいどうってことないですかね」


「?普通にナーダさんはかっこいいですよ?」


 意味がよくわからない。説明を求めました。

 ナーダさん曰く、女子供は特に爬虫類系統の獣人を嫌うらしい。基本的に獣人に差別意識のないと有名な私にまで嫌われるのは悲しいので、ナーダさんは鱗をひたすら隠していたらしい。

 ごめん、最初から鱗は気がついてた。むしろ私が怖がると思って隠してた方が知らなかった。


「すいません、ナーダさん…私、4つに頭から裂けて臓物撒き散らしながら触手とか出てきたらさすがに怖いですが、蛇(正確にはケツァルコアトル)に変身できる精霊さんも友人なんで、蛇は大丈夫です。鱗はむしろ撫でたいぐらい好ましいです」


「…俺の努力はなんだったのか…髪切ってくる!」


 ナーダさん、ご乱心!?宣言通り前髪切って帰ってきました。前髪邪魔そうにしてたもんね。男前ですよ。


「だーから、お嬢様は平気だって言ったろーよ。無駄な努力だったな」 


 ケラケラ笑うアーク。頷く父。穏やかに笑うジャックさん。


「おかえりなさい。前髪、素敵です。お似合いですよ」


「ふむ、悪くない」


「お仕事溜まってますよー、ナーダ殿の分はとってありますから」


「…はい。遅れた分、しっかり働きますね」


 すっきりした顔で笑うナーダさん。素早く着席して仕事を始めました。


 宰相執務室は、やっとちゃんとした補佐を得られたのだと思います。彼らのおかげで父やアークの負担も軽減。有能なのでいいことずくめです。

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