悪の侯爵夫人様
凛花視点になります。
信じられない光景だった。ラヴィータ君の胸から銀色が生えて、抜けた。
ねえ、ラヴィータ君?どうして倒れているの?
ねえ、どうしてロザリンドちゃんは、笑っているの?髪の毛が真っ黒になってる…
ねえ、振りかざしたその刀を、どうするの?
心は理解を拒否したが、戦いに慣れた身体は即座に反応した。ラヴィータ君を庇うようにロザリンドちゃんとラヴィータ君の間に滑り混み、ロザリンドちゃんの刀を自分のつーさんで弾いた。
「どうして!?なんでこんな…ロザリンドちゃん!!」
聞きたいことはたくさんあるが、うまく言葉にできない。
「リンカ…」
ラヴィータ君はまだ息があるらしい。私に手を伸ばそうとして、黒い獣…ディルクさんに抑え込まれる。今しなければならないことは…!
「…どいて!!ラヴィータ君を助けるんだから!!」
今ならまだ間に合うかもしれない!怒りで魔力が暴走しだす。だが、この人に勝つならそのぐらいしなきゃダメだ!!急がなければラヴィータが死んでしまう!
魔力をつーさんにこめて解き放とうとした。
「たったらー」
ロザリンドちゃんは
『ドッキリ大成功!』
と書いた看板を出した。
どっきり、
だいせーこー?
どっきりとは、有名人等にイタズラをしかけ、反応をたのしむもの??
意味を理解したとたんに気が抜けて、魔力が霧散した。そのままよつん這いの…正しくOrzのポーズになりました。
「ごるああああああ!!やっていい冗談とダメな冗談があるッスよ!!これは確実にダメなやつッス!!」
「てへ☆ゴメンゴ☆」
ちくしょう、絶世の美少女め!テヘペロも可愛いだと!?
「あまりにも反省の色がない!しかし、美少女のテヘペロごちそうさまッス!!」
自分は地面に倒れた。いや、待て!!ラヴィ君は!?すぐに飛び起きるとラヴィータ君に駆け寄った。
「ロザリンドちゃん、酷いッス!人殺しッス!神殺しッス!逮捕ッス!!なんで、こんな……」
「「いや、死んでないし」」
ロザリンドちゃんとラヴィータ君の声が重なった。ラヴィータ君には怪我ひとつなく、むくりと起き上がった。
「だ、だまされたああああああ!!」
自分は叫んだッス!いやもう、本気で騙されたッス!
「誰まで!?誰までがグルなんスか!?」
「ディルクまでだよ。ラヴィータが起きたらバレるから、ディルクに抑えてもらいました」
「ディルクさんはまともだと信じてたのにいいい!!」
「いや、その…ごめんね?ロザリンドが危険な時にラヴィだっけ?とイチャイチャしてたって聞いたから…つい」
「「大変申し訳ありませんでしたああ!!」」
ラヴィータ君と二人で一斉に土下座した。確かに!!これは土下座案件ッス!!報復されても仕方ないッス!!一見穏やかそうなディルクさんの目が、一切笑ってなかったよ本気とかいてマジだったよ超怖えッスぅぅ!!
「誰が…誰がばらしたんスか!?」
「…すまぬな、我だ」
「闇様ああああ!?」
「いや、すまぬ。何故ロザリンドはチタがいたものの気配が独り離れていたのかとディルクに問い詰められて…怖かったのだ」
闇様、プルプルしてたッス。すんませんでしたッス!!怖い思いさせてごめんなさいッス!!
「で、それをディルクから聞いたからついでもあるし、茶目っ気を爆発させました!」
「くっそイイ笑顔で解説アザッス!!」
「…ロザリンド嬢もホッとしたんだろうな」
「ああ、あんなに楽しそうにはしゃいでいるのは久しぶりに見るよ。最近よく考えこんでいたからね」
ロザリンドちゃんの兄的存在であるアルフィージ様と、兄であるルー様がほほえましげでした。
「自分が悪いのは確かッスけど、納得いかねぇッスぅぅ!!」
「あっはっは」
軽いノリで笑うロザリンドちゃん、ルー様、アルフィージ様。くそう、どSどもめ!!
皆様も和やかムードで味方がいなかったッス!!
いや、味方はいた。拗ねて地面でゴロンゴロンしてたらラヴィータ君がよしよししてくれました。精霊王達も慰めてくれました。ご褒美アザッス!これで生きていけます!!
自分、チョロいのであっさり復活したッス!なにはともあれ、一件落着ッスかね!
今回のタイトルは悪の侯爵夫人様。
正確には『(人が)悪い侯爵夫人様』です。
ロザリンドと作者の茶目っ気が爆発。みんなからわりと『どうせ大丈夫でしょ』的な冷めたコメントが来たからって、拗ねてたりなんかしてないんだからねっ!




