融合と隠していたもの
お待たせしました、ロザリンド視点になります。
皆様こんにちは。邪神に飛び込んだロザリンドです。オンリーロンリーロザリンドです。
「何故はぐれたし」
「仕方ないよ。無意識にラヴィが呼んだんだ。気配がした。あの二人は、やっぱりラヴィにとって特別だし…きっとわかってるんだと思う」
「…何を?」
いや、独りじゃなかったよ!チタが居たよ!セーフ!!ホッとしつつ、チタにたずねた。
「多分、あの二人が…」
チタが周囲を警戒する。
「囲まれてるね」
いやまあ、それ以前に邪神の腹の中にいるようなもんだからなぁ。凛花達がラヴィを起こすのを信じて時間を稼ぐしかない。
魔力酔いの薬をあらかじめ飲んでおいたが、はたしていつまで効いているだろうか。
ゾンビみたいのをひたすら倒す。そして、解決策を思いつかないまま時間だけが過ぎていく。ついに邪神に捕まってしまった。
「ロザリンド!」
チタがフォローしようとするが、ゾンビみたいなのに囲まれてしまった。
腕をつかむ触手を斬ろうとしたら、頭に声が響いてきた。
『貴女のせいで、私の人生は台無しよ』
それは、幼い少女の…よく知る相棒の声だった。その一瞬の隙を逃さず、さらに触手が絡み付いていく。
「しまっ…」
『貴女のせいで、私は死んだかもしれない。こんな大変なことを押し付けられるなんて思わなかった』
それも、よく知る女の声だ。ロザリアが怖がる気配がした。まずい。
「うああああ!!」
触手が巻きついてくるにつれ、声が酷くなっていく。頭がいたい、うるさい!
私は…凛は凛の死を恐れない。ロザリアも慣れている。だけど…………
「あ、ああああああああ!!」
凛はロザリアが死ぬのが怖い。
ロザリアは凛が死ぬのが怖い。
そこを突かれてしまった。これはまずい。侵食されている。
「ロザリンド!!」
チタが呼んでる……応えなければと思いながら…………
意識は闇に沈む。
「あのさ、ロザリンドが危ないから、いいかげん助けに来ぉぉい!!」
かすかに、そんな叫びが聞こえた気がした。
『ロザリンド』
「ん…」
『ロザリンド』
「んん…」
まだ眠りたい。辛いのはいやだ。
『ロザリンド、早く起きないと…俺が暴れるよ』
「!??」
本気と書いてマジな気配がしたので跳ね起きた。姿は見えないが、ディルクだろう。繋がりを感じる。
『ロザリンドに何かあったら、ラヴィがどうのとか関係なく…全力で暴れるから』
声が静かなだけに本気がひしひしと伝わってくる。あと、めちゃくちゃお怒りじゃああ!!
「ごめんなさい!な、なんとかするから!」
しかし、どーしたもんか。多分身体は乗っ取られたな。邪神は愛の神様だったわけだ。ふむ、実験しよう。そうしよう。
「ディルク、愛してます」
『?俺も愛してます』
「これが終わったら、本気で子作りしましょうね」
『!!??』
「ね?」
『ははははははい…』
「子供は何人欲しいかなぁ」
『…俺は少なくとも2人は欲しいな』
私ももふもふな子供が欲しい。何人でも欲しい。
おお、ディルク効果で精神が安定したからか、愛が弱点なのかは知らんが揺らいできた。
「頑張ろうね、ディルク」
『…うん。だから、早く帰ってきて…一緒にあの家に帰ろう』
「「うん…帰りたい」」
「ロザリンドちゃん!」
ああ、凛花が私を呼んでいる。
「ありがとう、ディルク。私、行くね」
優しく微笑むディルクを感じて、私の意識は覚醒した。
「ロザリンドちゃん!今助けるッス!!どけ!どけええええ!!」
凛花さん超スゲー。巫女服に巨大な刀を振り回してゾンビみたいなのをバカスカ倒していく。
「ロザリンド」
「チタ?」
「融合するってさ、消えるんじゃないよ。見せてあげる」
チタがラヴィに融けて消えた。ラヴィに金色の輝きが与えられ、チタの色に染まる。
「…ロザリンド…」
ああ、確かにそうだ。チタは確かに貴方と共にある。バカだなぁ。ずっとずっと、怖がっていたよ。だけど、そんな必要なかったんだね。
「ロザリア…」
「凛…」
本当はずっと怖かった。
大切な私の片割れ。私が来たことで未来を変えたけど、貴女の人生をめちゃくちゃにしてないかって。だから、いつか私は力だけ遺して消えるつもりだったの。
怖かった。
凛は私のせいで輪廻から外されて、大変なめにたくさんあって…死にそうでも私を守ろうとしてくれる。私がいなくても、凛なら大丈夫。私の大切な片割れ。
だからいつか、この身体は凛にあげて私は消えるつもりだったの。
『お主らはとても似ていて、だからこそ融合しきれなかった』
聖獣様の声がする。そうだね。今ならわかる。大切すぎて、互いが互いの喪失を恐れて…隠していた。
私たち、バカだったね。どちらからともなく、苦笑して手を伸ばす。
触れる手が、互いに融け合う。私たちなら…二人なら……なんだって出来るよ!!
「ロザリンドちゃん!?」
「スーパーロザリンド、見参!!」
魔力が溢れ、身体強化して触手を力ずくで引きちぎった。ノリはあれだ。野菜…じゃなくて…いや野菜人的なあれです。金髪で毛が逆立ったりはしていませんが、魔力が気っぽい。
「心配して損したぁぁぁ!!」
地面に転がる凛花さん。
「あっはっは。ゴメンゴ☆」
「軽い!ノリがかっるい!!」
『ロザリンド』
「ロザリンド、この時を待っていた」
聖獣様と闇様。いつ来たのかしら。いやあ、お待たせしました。
「よろしくね、月」
闇様の名前。中国語で月。月みたいに闇様は優しいから、ピッタリだと思う。
「うむ!」
『ロザリンド、名前をくれ』
「ええ?では…モンドはいかがですか?」
ダイヤモンドから来ています。なんとなく聖獣様っぽい。
『うむ、それでよい。さて、我らが愛し子よ。何を望む?』
「…穢れを祓ってほしいかな?」
「それは俺にやらせてくれ。けじめをつけたいんだ」
ラヴィが金色に包まれた。いつも見ていた、チタの光。同調して魔力を分けてあげた。
「ありがとう、ロザリンド」
あ、もしや…チタの加護つき武器からも譲渡ができる?ディルク経由でお願いしてみた。
結果、ラヴィがスーパー野菜人的な感じになった。毛も逆立ってるよ。名前もラヴィとチタで……ラヴィータ……ますます野菜人ぽいわ。
「ロザリンド…」
「はい」
「やたら外から魔力が来るんだが?」
「皆にお願いしちゃった☆」
「ほうれんそうが大事だって、さっき認識したばっかだろうが!思いつきでとんでもない事をするんじゃない!!」
「はっはっは」
ラヴィータ(仮)は、見事に邪神本体をキレイサッパリ浄化しちゃいました。
皆の魔力もあったので、それはもう、あっさりでした。こんなにありがたみのない元○玉も珍しいですね。そもそも本人が力を分けてくれコールすらしてないし。
そんなどーでもいいことを考えちゃうぐらい、アッサリと穢れは消え去りました。
ロザリンドさんがついに融合しました。しかし、こんなに盛り上がらないラストバトル(推定)……どうなんだ。
あ、よく考えたらこの話はバトルものではありませんでした。
いいことにしよう!!
とりあえず、ようやくロザリンド(完全体)と闇様の名付けができてホッとしてます。




