邪神とチタ
邪神は現在、光輝くもの達によりフルボッコなう。倒すだけなら問題ないが、ラヴィを助けなければならないとなると…
「うーん…」
私は脳みそをフル回転させる。状況打開のために何をするべきか……
「まあ、ロザリィがたくさん…」
「どーなってんだ?」
「やあ。大変そうだな、ロザリンドちゃん」
「つうか、なんであんな増えたん?分裂か?」
「んなわけあるかい!」
思わず思考を中断して全力でツッコミをする私。ミルフィ、シーダ君、シュシュさん、彼方さんが来てくれました。あ、レオールさんとディルクのお祖父様…金獅子族と闇豹族も揃いましたね。
「大変なことになっていますね。主がたくさん…」
「うむ。ロザリンドちゃんや、何をしたのだい?じぃじに言うてみい」
「私のせいじゃないです!!お祖父様は味方だと思ってたのに!!」
ひどいや!なんか変なことが起きたら、大体が私のせいなんですか!?名誉毀損だ!訴えて勝つぞ!!
「やあ、大変なことになっているようだね」
「ロザリンド、説明」
「はい!喜んで!!」
クリスティアからも皆が来てくれました。もうオーバーキルな気がしてきた。デストロイ!いや、破壊したらダメなんだった。もう面倒くさい。
とりあえず現状を報告しました。しかし、光輝くもの達については私もなんでこうなったかよくわからない。
「…くるっぽー。それに関しましては、シヴァ様、ミスティア様、スレングス様、インジェンス様によるものです。神の特殊な能力、願いを叶える力を使われたのです」
「…マジか」
一瞬、ドラゴンなボールの龍が頭をよぎったが、見なかったことにした。
「はい、マジです。ロザリンド様の助けになるようにと」
助けどころか、ラヴィごと滅しそうになってるけどな。私より、シヴァ達に報告、連絡、相談のほうれんそうを仕込むべきではないかと思われる。
「これだけいれば、大概の事はできそうだね」
私はようやく思いついて、サラサラと魔法陣を書いていく。
「賢者様、これは可能かな?」
奥方様にさりげなくセクハラされてた美人なじじいに話しかけた。
「多少荒い……が、うん。可能だ。本当になんというか、君僕の弟子を名乗らないでくれない?この規格外弟子!破天荒弟子!天才と紙一重弟子!!」
「世の中、諦めもなきゃいけないこともあると思うの。じじいが私に魔法を教えたのは間違ってないし。大半自習だったけど、教材提供したでしょ」
私は美人な賢者にイイ笑顔を向けてさしあげた。じじいがキレた。カルシウムが足らないじじいである。
私の考えた魔法陣…魔を閉じこめる簡易陣を魔法院とセインティアの神官達がさらに仕上げていく。彼らは素早く準備に取りかかった。
「力仕事なら任せてくれ!」
「今日は大盤振る舞いしちゃうわよ!」
あ、ミスバタフライやウルファネア商人軍団も来ているみたいだね。
魔法陣がすごいスピードで完成していく。
「さて、特攻してラヴィを取り戻すよ!」
メンバーは、私と凛花とジューダス様。
「ロザリンド、俺も行く!」
ディルクが私にしがみついた。今回ディルクはお留守番というか、結界要員です。
「駄目。ディルクはあの魔法陣の要だから。なるべく私が危なくないように魔の力を削ぐって役目がある。必ず帰るから、待ってて」
多分、このメンバーで1番危ないのは私だろう。だが、仕方ないのだ。
だって、私は……
「ごめんな、ディルク。ロザリンドは必ず俺が護るから、行かせてくれ。いや、ロザリンドが居なきゃダメなんだ」
金色に輝く妖精さんみたいなチタは、本当の姿を取り戻したのだろう。
「ラヴィ君?いや、チタ君ッスね」
チタは金髪だけどラヴィにそっくりだった。
「いや…どっちもある意味間違いではないかな。俺もアイツの…あいつらの一部なんだ。思い出したよ。女神ミスティアが封じた、ラヴィアスの神としての力の一部が俺だったんだ。俺が女の格好をしていたのも、今思えば俺を隠すためだったんだ」
そもそも、最初からおかしかったのだ。邪神を、魔を退ける唯一の存在が、ただの精霊であるはずがなかった。しかも、他の聖属性に私は会ったことがない。噂も聞かない。この世でチタだけが持っていた聖属性。
私がラヴィを見たとき、チタにそっくりだったから…なんとなく予感はしていた。
「薔薇と馴染んじゃってちょっと変質したけどな」
「………絶対に、無事で帰ってきてね」
「…………………………うん」
「間が長いです、ロザリンドさん!!」
「いやまあ、うん。なるべく頑張る」
「うわああああああ!!」
「!?」
悲鳴があがったので外を見ると、邪神が溶けだしていた。大地を穢しているようだ。
陣の完成が間に合ったらしく、陣のなかでドロドロの魔神が浮かんでいる。光輝くもの達がすぐに地面を浄化する。
「時間がないみたい。行ってきます!!」
「気をつけて!」
「女は度胸ッス!!」
「うむ、できる限りの事はしよう」
こうして、私は凛花とジューダス様を連れて邪神の中に入りこんだのでした。




