ダンジョン攻略・色々しかたないと思うの!
ダンジョンマスターと思われるモノはゆらゆらした影になっていた。さっきは人の手が下敷きになっているように見えたのだが、見間違いだったのだろうか。ダンジョンマスターが影の手をあげると、ナニかが召喚された。
なんか、すごい見たことあるドラゴンだった。赤い鱗に、立派な角。もう1体も美しいクリスタルの輝きを持つ鱗。理知的な瞳はどこか優しい。
「マリアさんとルラン!?」
私のコウのママドラゴンと、クリスタルドラゴンの友人、ルランでした。
「あら、ロザリンドちゃんじゃない。元気かしら?」
「げ、元気ですよー。コウも元気です」
「久しぶりだな、ロザリンド。ジャッシュ、また焼き菓子をくれ」
「あ、はい」
ジャッシュは自分の鞄から焼き菓子を取り出すとルランに渡した。
「…まだ焼き菓子あげてるの?」
「私はたくさん酷いことをしましたし…クリスタルドラゴンさん達、毎回すごく喜んでくださるので続いてますね」
いやまあ、ジャッシュがいいならいいけどね。クリスタルドラゴンとはすっかり仲良くなったらしい。
「ぐうっ!?」
「うあっ!!」
マリアさんとルランが苦しみだした。ダンジョンマスターが洗脳しようとしているらしい。
「ふんっ!」
しかし、マリアさんは自力で洗脳を解いた。
「あの魔とかいうのに比べたら、楽なものだわ!そう何回も体を乗っ取られてたまるもんですか!」
それは確かにそうだよね。そして、マリアさんはダンジョンマスターに襲いかかった。それにより気がそれたのか、ルランも自力で洗脳を解いた。
マリアさんはダンジョンマスターを噛む直前で消えた。ルランも襲いかかろうとした瞬間に消えてしまう。
「なんなんだよ、お前ら!!なんでこんなに魔物に知り合いがいるんだよ!これじゃ試練にならないじゃないか!!」
ダンジョンマスターに怒られたが、正直そんなこと言われてもとしか言いようがない。
ダンジョンマスターがまた手をあげると、空間が歪んで竜のような巨大なお魚がぴちぴちした。
バハムート。それは、巨大なお魚さんである。飛べるがいきなり召喚されたためか、ぴちぴち…いや、ビッチビチしている。でかいから危ない。尻尾の一撃で即死しかねない。
バハムートの知り合いもいるんですよね。見覚えあるバハムートなんですが。いや、そんなにバハムートは知らないけどね。
「ふいー、いきなり陸に呼ばれたからビックリしたよ。おや、ロザリンドさん、こんにちは」
「…………こんにちは」
やはり知り合いのバハムート…クーリンパパでした。ダンジョンマスターよ、何故こうも知り合いばかりを喚ぶんだい?
「うあ!?」
洗脳しようとしているらしいが、クーリンパパは魔に侵されたクーリンママ(水の精霊王)の側にいても魔を寄せ付けなかった猛者である。
「なんの!!」
案の定、洗脳を自力で解いてしまった。ダンジョンマスターの洗脳は、魔より下位のようなので当然といえば当然である。バハムートには効きにくいのか、クーリンパパが特別なのかはよくわからない。
「悪いが、私は他人に簡単に使役されるような雑魚ではないんでね」
確かに、雑魚ではなく(釣り的な意味でも)大物ですよね。もし釣れてしまったら、船が転覆しそうです。クーリンパパがどや顔して、消えました。
「本当になんなんだよ!上位の魔物に知り合いが多すぎるだろ!!」
「えっいや…はい…なんかすいません」
キレるダンジョンマスターについ謝罪する私。あれ?ダンジョンマスターは影というか…黒っぽいモノがまとわりついてる?
「チタ!」
「おうよ!」
あっさり浄化できました。どうやらとりついてたわけではなく、怒りに引き寄せられてまとわりついてただけみたいですね。
そして、魔が取れたダンジョンマスターは予想外の姿をしていた。
「こうなれば、俺自身がお前達を試してやろう!」
「ディルク、手出し無用です。私が行きます」
「…まあ、適任かな?油断したらだめだよ」
「はい!」
ディルクから許可をいただきました。他メンバーも頷く。やや呆れた目線がある気もするが、気にしない。私の意識は完全にダンジョンマスターに向いていた。
ダンジョンマスターが駆け出した。飛んで火に入る夏の虫。私はダンジョンマスターを捕まえて、我がゴールデンフィンガーを全力全開で発動してやった。100%中の100%ぉぉ!!である。心、技、体の全てを尽くし、私はもふった。そう、もふって、もふってもふもふしまくってやった。
「き、きゃいいいいいん!!」
ダンジョンマスターが悲鳴をあげる。ディルクが可哀想なものを見る目をしている。凛花が成仏しろよと言っていた。死なんわ。
そう、ダンジョンマスターは…力強く地面を踏みしめる足に、ピンとした尻尾。凛々しい瞳。昔のジェンドそっくりの銀色毛皮をしたもふもふ子犬…ではなく子狼の姿をしていたのだ!
「ふふ…ふふふふふ」
これは私の獲物である。最愛のもふもふは当然ディルクだが、目の前のもふもふは愛でねばなるまい。敵だから、手加減も無用である。
結果、ダンジョンマスターはモフ落ちした。
「あふーん…」
ヨダレを垂らしてピクピクしている。うむ。やり過ぎたね。もはや人語を話さないよ!
「………どーすんスか、これ」
「…………どーしよっか」
凛花からシャイニングウィザードをくらったのは、言うまでもない。しかし、後悔はしていない。ディルクほどではないが、よきモフモフでした!




