ダンジョン攻略・ようやく○○が抜けました
とりあえず、扉が開くのはわかりました。なんかドンドンされてるけど、知らんぷりです。入れるとわかったんだから、作戦たてないと。
「ラストのボスってなんだったっけ?」
「神クラスモンスターのヤマタノ首領ラゴンッスよ」
「大物だな」
ジェラルディンさんが楽しそうである。
「戦ったことは?」
「若い頃遭遇した時には逃げるしかなかったが…」
今なら勝てる、と言いたげですね。互いににんまりと笑った。
「全属性耐性、物理防御にも耐性があるのか、削るしかなかったッスよ。超強いはずッス」
「僕、戦いたい」
「相手に不足はないようですね」
「…久しぶりに本気を出せそうだね」
「にゃー!ボッコボコ!」
獣人組はヤル気満々です。凛花はビビってるな。まぁ、神クラスモンスターといえど、このメンツには敵うまい。
「で、作戦なんだけど…」
轟音とともに扉が弾け飛び、ディルクが私を抱いて回避した。凛花はジェラルディンさんが避難させ…加減しなかったな?凛花の顔色が悪い。高速移動って、酔うんだよね。マリー、ジャッシュ、ジェンドは自力で回避したみたいです。
土煙の向こうから現れたのは、ドラゴン…いや、多分ヤマタノ首領ラゴンだと思う。ヤマタノ首領ラゴンは、8つの首を持つドラゴンである。何故多分かというと、首ひとつが門から出て動けなくなっているからだ。
恐らく1回開けたくせになかなか入らない私たちに業を煮やして扉をぶち破り、詰まったのだろう。
首は必死でピチピチしているが、抜けないらしい。どーしよう。ヤマタノ首領ラゴン涙目だよ。
「イテテテテ!!」
おや?どうやらしゃべれるらしい。神クラスだからかな?恐らくむこう側の本体も慌てているのだろう。
「斬るか?」
ジェラルディンさんの冷静なひとことに、ヤマタノ首領ラゴン…長いから首領ラゴンでいいや…がビクリと…いや、めっちゃガクブルしとるやないかい!
「お、お前は脳ミソ筋肉狼獣人!!SSSランク魔物組合ブラックリストのNo.2じゃないか!!嫌だぁぁ!死ぬぅぅ!!殺されるぅぅ!!やっと神クラスになれたのに、こんな死に方あんまりだぁぁ!!」
確かに。なんかかわいそうになったような…いやいや、どうせなら戦意を根こそぎ奪わないと。
「えと…SSSランク魔物組合、ブラックリスト入りしてるロザリンドでっす」
首領ラゴンは口をあけて固まった。
「ナンバーワンじゃないかぁぁぁぁ!!しかも『暴食のロザリンド』だなんて!!食われる!皮を剥がれるぅぅ!!いやあああああ!!許して!殺さないで!!食べないでぇぇ!!」
誰だよ、暴食のロザリンドって。私が大食らいみたいじゃないか。たくさん食べるのは私じゃないっつーの!
いや待て!ブラックリストナンバーワン、私なんだ!?なぜに??解せぬ。
いや、もう過ぎたことは仕方ない。やるべきことをしよう。
「つまり、貴方は戦う意思がない。私たちに降参する…ということでよろしいですか?」
「!?ああ、戦う意思はない!助けてくれ…いや待て!他の首と話し合う!」
首領ラゴンはもめているらしい。まあ、他の首は無事だしねぇ。
「私は基本意思疎通がとれる魔物は食べませんけど…私の大切なものを傷つけるやつには容赦しませんから、そのつもりで。あと、できたら貴方とは戦いたくないですねぇ」
動けない首は、赤い鱗のドラゴンだ。またとない先制チャンスなのは解っているのだが、コウを思い出すので出来るなら斬りたくない。
「……お前、ワシが怖くないのか?」
「ドラゴンの友達がいますから、怖くないですよ」
それ以前に、命乞いして泣き叫ぶドラゴンは怖くないだろうというツッコミはしないでおいてあげてください。
「………そうか。なんのドラゴンだ?」
「ハーフドラゴンのコウと、クリスタルドラゴンのルランが友人です」
「………結論が出た。我らは戦わぬ」
「わかりました」
「ぐう!?」
ダンジョンマスターが用済みとばかりに扉を直し始めたらしい。首領ラゴンが苦しみだした。首を
絞められているらしい。
「ディルク!凛花!ジェラルディン!ヴァルキリー!」
「任せて!」
「変身!大工さん!」
「うむ!」
「ロッザリンドォォ!!」
ヴァルキリーが首領ラゴンの首を保護し、ディルク、凛花大工さん、ジェラルディンさんが壁を破壊する。
「いやああああ!!」
ディルクが壁を切り刻む。
「一撃必殺!!大工さんとは、創造と破壊の使者!!壁なんて一撃ッスよ!!チェストー!!」
凛花がハンマーで壁を割る。大工さんについて誤解がある気がしなくもない。微妙に間違ってはいない。
「うおおおおお!!」
壁を蹴り、ぶち割るジェラルディンさん。
一瞬だが、壁全体が全壊し、首領ラゴンの首は無事に抜けたのでした。




