ダンジョン攻略・食材集めと戦う英雄
翌朝ダンジョン攻略を再開した。
地下21階。
扉を開けた途端に香る緑の匂い。どうやら次は森みたいですね。
「ちょうどいいから採取しましょうか。ジェラルディン、周囲の敵を蹴散らせ。ジェンド、ついて行きなさい。貴方は自衛に専念するのよ」
「え?わかった」
「では行くぞ!」
「待って…って、速い!待ってよぉぉ!!」
ジェラルディンさんはあっという間にいなくなりました。ジェンドが慌てて追いかけます。
「さて、ゴラちゃん、スイ、アリサ、食べられる植物を教えてくれる?」
「任セヨ」
「仕方ないね」
「はーい」
「え?先に進まないんスか?」
「進むけど、山菜とかを補充しときたい。獣人が多いから、食材が不足しないようある程度補給はすべきだよ」
「なるほど」
というわけで、食材探し。
「あ、松茸的なキノコ発見ッス!」
「毒だね」
「兄様のお土産にするからちょうだい」
「結構珍しいから、ルーきっと喜ぶよ」
「あ、カラフルなキノコ発見ッス!」
「毒だね」
またしても兄様のお土産。
「このほうれん草的な草は…!?」
「毒だね」
「何故毒ばかり…!」
「…お見事」
「嬉しくないッス!!」
凛花はやたら毒ばかり見つけていました。食べれそうなやつから無理そうなやつまで、バラエティに富んでいます。あまりにも毒ばかりなので、最終的にスイが探して凛花が採取するという形になりました。
ちなみにチタは記憶喪失なので採取には不向きです。
「あ、これはどうですか?」
「食エルガ、苦イ」
「…これは?」
「食エルガ、エグイ」
「…これはどうですか!?」
「揚ゲルト、ウマイ」
「やった…!」
何故か微妙な味ばかりを引き当てていたジャッシュ。ゴラちゃんと組んでいます。良かったね。山菜の天ぷら作るからね。
私はディルクとペアです。騎士も場合によっては食料現地調達するらしく、詳しいとのこと。
「あ、ロザリンド、あれはおいしいよ」
「うん」
オレンジっぽい実を大量ゲット。味は……パイナップル……だと?しかしおいしい。
「ロザリンド、あのキノコは高級食材らしいよ」
「そっかぁ」
しめじっぽいキノコ、大量ゲット。スイに後で聞いたら、やはりしめじだった。美味しいよね、しめじ。
「ロザリンド、あっちとそっちのキノコもおいしいよ。前にスープにして食べたことがある」
「ディルクは物知りだね」
「そ、そうかな…」
「惚れ直しました」
「え………あ、ありがとう」
尻尾がご機嫌な揺れかたです。照れる物知りディルク、可愛い。ちょっとだけなら許されるよね?
「にゃっ!?」
尻尾を捕獲してナデナデする。
「ちょ…やめ…ふにゃあ!?」
「もふもふ………」
「ロザリンドちゃん、いちゃつくのは後にするッス」
「「すいません」」
叱られましたが、私たちはその後キノコを大量ゲット!ちなみにエリンギとマイタケが多かった。ナメコもありました。みそ汁にしよう。
うむ、今夜はキノコ尽くしが食べたいな。キノコ汁、天ぷら、炊き込みご飯………
ちなみにキノコは食べれるやつに似た毒キノコもあるんでゴラちゃんに選別してもらいましたが、私たちが採ったやつに毒はありませんでした。
そんなことを考えながら、採取すること一時間。
「お姉ちゃん、採ったどー」
「にゃふー、たいりょー!」
アリサとマリーペアがたくさん採ってきたらしい。
「どれどれ?」
スイが中身を見て、真顔になった。
「ミラクルキノコ、奇跡のハーブ、レインボーアップル、神秘のマンゴー、神の玉ねぎ、月の果実……」
「…最低でもSランク…最高SSSランク食材までも……すげぇッス!アリサちゃんとマリーちゃんは食材集めの天才ッス!!」
「いや、本当にすごいわ。頑張ったね」
「「えへへへ」」
私と凛花にナデナデされて、二人はご機嫌です。うむ、可愛い。
「主!狩ってきたぞ!」
「…………疲れた」
「うわ」
ジャイアントバッファローに、グリーンリザードに、マッドラビット……どれもカバサイズの大物です。
「このフロアの魔物は全て殲滅した。うまい獲物だけ持ってきたぞ」
尻尾をパタパタするわんこ…ではなくジェラルディンさん。
「お疲れ様です。夕飯は期待してください」
「ああ、主のご飯はいつもうまいからな!」
撫でやすいようかがむわんこ…じゃなかった、ジェラルディンさん。うん、お疲れ様の意味をこめて撫でると嬉しそうだった。
「ジェンド」
「何」
「お父さん、どうでした?」
「…冒険者としては、すごかった」
素直じゃないけど、それが本音なのでしょう。最近私達といると前に出すぎないようセーブしているけど、本来のジェラルディンさんは先陣をきって戦うタイプだ。自由に戦ってこそ、その本領を発揮する。
ジェンドは、英雄の本領を見たことがない。
彼は、英雄ジェラルディンは、人として欠落している。それは先天的なものも多少あるだろうが、ほぼ後天的なものであると私は考えている。ウルファネアにおいて、彼は孤独な一匹狼だった。だからこそ、本来のルートで彼は死ぬのだ。他人の心に鈍いのは、自分の心にも鈍いからだ。彼は頼ることを知らず、ずっと独りで全てをこなしてきた。その結末が、死だった。
彼を従僕にすることは不本意だったが、たまにこれでよかったのだと思うことがある。
孤高の狼は、主を得てようやく群れに入れたのだと…今の妻や子供に囲まれて幸せそうな彼は見ると、そう思う。
「わははははは!!」
今は基本迷惑なオッサンだが、多分これでよかったのだと思う。多分。
「ジェンド」
「何?」
「この階層ではしばらく採取をします。その間、ジェンドはジェラルディンさんについていてください」
「…なんで?」
「冒険者として、学ぶべき部分がたくさんあるでしょう?できるかぎりたくさん、盗んどいてください」
「……頑張ってみる」
ジェンドは苦笑した。
21から29階までは、採取しつつ特に問題なく進むことができた。しかし、ジェンドがしんなりした。ジェラルディンさんとの体力差を考慮してなかったわ。ジェンド、ごめん。
あ、珍しく普通に攻略してる気がします!
い、いやいや、うん!真面目に攻略してたよね!?




