ダンジョン攻略・初めてのボス部屋
地下19階で全てのGを殲滅してくれたキングサボ☆天。
ありがとう、キングサボ☆天!
本当にありがとう、キングサボ☆天!
『ワレラガツイテイケルノハ、ツギマデダ。ロザリンドヲタスケタイ』
キングサボ☆天は、そう言って次の階に続く扉をあけた。
そして、つまった。
よく考えなくても当たり前だ。ドラゴンが人間サイズの扉をくぐれるか……明らかに無理である。
トゲがなぜか柔らかいキングサボ☆天を引っ張ったが抜けない。
「主、おれがやろう。フンヌゥゥ!!」
ジェラルディンさんが頑張ったが、キングサボ☆天は抜けなかった。
「手伝います」
ジャッシュも手伝ったが抜けなかった。
「俺も手伝うよ」
ディルクも手伝ったが抜けなかった。
「僕も手伝う!」
ジェンドも手伝ったが抜けなかった。
「ロザリンドちゃん、自分この光景を昔、見た覚えがあるッス」
「うん、なんだったかなぁ………」
うんとこしょ、どっこいしょ、それでも○○は抜けません。
「………おおきなかぶ?」
「それだ!!」
「いいからロザリンド達も手伝ってよ!」
「「はーい」」
ディルクに叱られたので、お手伝いしました。ようやくサボテン(かぶ)は抜けました。やたら胴長になって、ダックスフントみたいだと思ったが、黙っときました。
さて、20階の部屋手前、階段にて作戦会議です。凛花情報によれば、次はボス部屋になるらしい。本来なら、ゴールデンサボテン10体と巨大サボテンがここのエリアボスらしいのですが、私がサボテンさんを結果的に寝返らせてしまったため、奴らが代わりにいるだろうとのこと。
「というわけで、ロザリンドちゃんとディルク様はお留守番で」
色々話し合った結果、Gに確実にパニックを起こす私はディルクとお留守番。ディルクは私の魔力を無意識で安定させているらしい。
「陣形はどーするッスかね」
「このメンバーだと、基本は前衛が3人で凛花さんが後衛。私は状況に応じて動きますが、基本は中距離で全体のフォローをします」
「じゃあそれで」
「このメンバーならよほどがなければ負けないだろうけど、もし何か不測の事態が起きたら私も戦う。あ……あれは嫌いだけど、皆が傷つく方が嫌だから」
いざとなれば、戦える。凛花や皆は大切な存在だ。
「主…」
「お嬢様…」
「ロザリンド…」
「お姉ちゃん…」
なんで皆はうるうるしてんの?なんか変なこと言った?
「じゃ、頑張るとするッスよ!!」
『おう!!』
そして、凛花達は扉をあけて部屋に走りこんだ。
しかし、なんの音もしない。戦闘が開始されたならもっとこう、破壊音とか破裂音とかが聞こえるのではないだろうか。まさかの防音??
「ディルク…」
「大丈夫。みんな強いんだから」
「……うん」
………5分経過。
「ディルク」
「……俺が行くよ」
そして、戻らないディルク。
ナニコレ、ホラー!?地味に怖い!!いや、でもディルクの気配はちゃんと扉の外にある。探ると戦ってはいなくて…動揺と困惑が伝わってくる。
恐る恐る扉をあけ……固まった。
そのもの、緑の野に立ち、白きモノを埋め尽くす。虹色の輝きを纏いしは、伝説の覇王樹なり。
覇王樹=サボテンと読みます。
何が言いたいかといいますと、広大なボス部屋を埋め尽くす、マッチョネスト=サボテン達。その下に、巨大な白いGが3体。すでに死んでいるらしく、腹に風穴が空いている。
「………え?」
私に気がついた凛花が来てくれた。
「ロザリンドちゃんや」
「はい」
「サボテンさん達がボス倒してたッス」
「マジか」
「マジッス。自分らが来たときには、すでにこの状態ッス」
「マジか」
「マジッス。どうやら自分らが作戦会議してる間に倒しちゃったらしくて」
「マジか」
「マジッス。なんか、よく考えたらマッチョネスト=サボテンやたら先回りしてたじゃないッスか。11~20階までなら自在に転移ができたらしいッス。階段は微妙だからさっきは焦ったらしいッスけど」
「マジか」
さっきから、動揺しすぎてマジかしか言えない。いや、うん。挙動不審になるしかない。
「しかも、ドアがあの死体の下でどうやって除去というか、証拠隠滅しようか相談してたんスよ」
「マジかよ!」
「マジッス。答えを出せないままに、ロザリンドちゃんが来ちゃったッス」
「マジか!みんなに怪我がないのは嬉しいけど…どうしよう」
悩んでいたら、サボテン達がGを解体…いや、あれは…吸ってる!?
「いやああああああ!?」
「ロザリンド、落ち着いて!」
ディルクが目をふさいでくれたが、見てしまった。サボテンの足がGの体に埋まり、膨らむのを!食べたらダメ!お腹壊すよ!?
「…ロザリンド、多分もう大丈夫だから、手をはなすよ?」
「は、はい…………」
そして、私が見たのは…
そのもの、金色の野に立ち、白きモノを埋め尽くす。虹色の輝きを纏いしは、伝説の覇王樹なり。
「どうしてこうなった!?」
マッチョネスト=サボテンが、ゴールデンサボテンにクラスチェンジしている!!
体液を吸い付くされたGはもはや残骸で、ジェラルディンさんがポイポイ投げて通路を確保している。
「ロザリンドヲイジメルヤツハ、タオシタ」
「ロザリンド、キヲツケテ」
「ありがとう、サボテンさん達」
でも、2度と吸うな。しばらく近寄れないじゃないか。
こうして、私達は先に進んだのでした。
私は忘れていた。
動揺し過ぎて忘れていた。
あのサボテンズが実家に行ったらどうなるか、考えてなかった。
「なんで皆して進化しちゃったの!?」
ボスを倒した経験値によりサボテン達はゴールデンサボテンになったわけだが、兄からしたらいきなり2段階進化したわけで……大量のゴールデンサボテン発生により、騎士団に通報されたらしい。
「ロザリンドノタメダッタノダ」
既に説教フラグが発生していることを、今の私は知らない。
マジでどうしてこうなった!?
今気がつきましたが、全くまともに攻略してない?
いや、ちゃんと進んでるから問題ない……よね?
次はちょっと休憩になります。




