凛花さんとクラリン
今回も、というかしばらく凛花視点になります。
クリスティア城に、稀に現れるじじい。小柄で弱そうだが、いまだに誰も捕まえられず逃げられるというある意味都市伝説となりつつあるらしいじじい。
そりゃ、騎士からしてみたら不審者だから捕まえようとする。しかし、じじいは逃げる。
発見時は一見普通のじじいだが、騎士に遭遇したとたんに機敏な動きで逃げ回り、いつの間にか逃げ切るのだ。
「そのじじいが、ソレ」
「ゴロゴロゴロ…」
クラリンは自分のお膝でくつろいでるッス。ちなみに獣人じゃないので、口でゴロゴロゴロって言ってるッスよ。
「なるほど。クラリンは何をしてたんスか?」
「クラリン、お散歩してたの。いつも魔法院ばっかりだと暇なの。騎士さん達怖いけど、追いかけっこはいい運動なの」
つまり、クラリンの罪状は不法侵入?自分はカーたんのお仕事の邪魔を…いやいや、無抵抗の老人に斬りかかったらダメッス!
「…そのご老人はリンカの知り合いなのか?」
「いや、初対面ッスよ」
『……………………』
アルフィージ様と騎士達が、馬鹿を蔑む瞳で見たッス。冷たい視線が自分を苛むッス!ブリザードッス!
「いや、本物と会うのは初めてッスけど、クラリンの幻に助けてもらったことがあるんスよ!クラリンはロザリンドちゃんの……えと…」
なんだろ。知り合い?友だち?考えてたら、クラリンが補足したッス。
「ロザリンはクラリンの仲間で、天使なの。クラリンに魔法少女としての力をくれたの」
「「「つまり、このじじいがやたらと捕まらなかったのは、ロザリンドのせいか」」」
騎士達が納得してしまったッス。よくわかんないけど、ロザリンドちゃんのせいにされてるッス!な、何か誤魔化せるものは…!?
「あ、自分も魔法少女ッスよ!正確には勇者ッスけど」
「魔法少女という名のパワーソルジャーか?」
「なんでそうなるッスか!?魔法全く関係ないッスよ!?」
「ぶひゃはははは!!」
アルフィージ様は真顔でわけのわからないことを言い、カーたんが爆笑しだした。アルディン様と双子騎士は『?』と言いたげな顔をしている。
そして、クラリンが食いついたッス。
「なんですって!?変身して!貴女が仲間にふさわしいかテストするわ!」
「うえぇ!?わ、わかったッス!シャイニング☆イリュージョン!!世界を繋ぎ、世界を救う!魔法勇者☆リリカルリンカー!!」
最近、変身ばっかりだったからこのカッコは久しぶりッスね。人は慣れるものッス。もうどうとも思わないッスよ。
「ブラボー!ブラボー、リンカー!!貴女を仲間と認めるわ!」
クラリンは惜しみない拍手と称賛をくれたッス。え?あっさり仲間になれちゃったッスよ。
「その杖は……」
「ロザリンドちゃんがくれたッス。なんでもウルファネアにあった聖女の嫌がらせステッキを大改造したとかなんとか…」
「…アレか」
「…アレですね」
アルフィージ様とアルディン様が何か辛いことを思い出したようなご様子ッス。騎士3人は笑ってるし。なんかあったの?
つーさんが魔法少女オッサンの記憶を見せてくれたッス。それから、ひきつった幼いアルフィージ様達も。納得したッス。
「ハピネス☆クラクラ☆ミラクルチャージ☆魔法少女蔵之助☆クラリンって呼んで欲しいの☆」
そして、クラリンも変身した。可愛らしいおじいちゃんになったッス。
「リンカー!」
「は、はい?」
「緊急出動よ!!魔法少女に助けを求める声がする!」
「え?」
「行くわよ!リンカー」
「は、はいッス!クラリン!」
こうして、私達は走りだし、テラスから落ちそうになってた侍女さんを助けたり、スリを捕まえたり、山賊捕まえたり、魔物を倒したりしたッス。
「あ、結局逃げられた?」
「まあいい。正体不明の老人は、ロザリンド嬢の関係者だとわかった。間者の類いでないのは確実だ。問題ない」
カーたんの呟きに、疲れた様子のアルフィージ様がそうしめくくったらしいッス。
そしてさらに後日。ロザリンドちゃんにクラリンへの苦情が来たらしいッスが……
「クラリンの保護者は元魔法院院長らしいですよ」
というわけで、アルフィージ様が元魔法院院長さんのとこで事情聴取。
「ああ、そうだけど?じじいは自由だし、この国の不審者をはじく結界システム作ったのはじじいだから、あのじじいには実質この国で入れない場所、ないよ」
さらに頭痛がする事実が明らかになったッス。アルフィージ様が頑張って説得したらしいッスが、クラリンは………
「つーん」
お話を聞いてくれなかったらしいッス。
「頼む、なんとかしてくれ」
困り果てたアルフィージ様はロザリンドちゃんに頼みに来たッス。
「私より適任がいますよ。凛花ー」
「はいッス」
「頼んだ。クラリンと仲良しでしょ」
「ええー、まぁいいッスけど…」
というわけで、クラリンとお話。
「クラリン、お願いがあるッス」
「なぁに?」
「お散歩なんスけど、自分…クラリンがもし騎士さんに捕まってしまったら悲しいッス。だから、お城をお散歩するのはやめて欲しいッス」
「うん、わかったの。クラリン、お散歩コース変える」
クラリンは、アッサリ説得に応じてくれたッス。
「私の苦労はなんだったんだ…」
付き添いで来ていたアルフィージ様が背後で崩れ落ちたッス。カーたん、笑うなよ。酷いッス。
それから1週間して、城の結界システムに不具合が発生したッス。元魔法院院長さんからひとこと。
「え?じじいが管理してるやつだから、魔法院の人間でも修理、難しいよ?」
「………は?」
「あのじじいは散歩がてら結界魔具をメンテしてるんだよ。だから今まで誰も咎めなかったんだよ?」
「先に言えぇぇ!!」
…………てなことがあって、また説得ッスよ。アルフィージ様が疲れきってたので、快く引き受けたッス。
「クラリン、ごめんなさいッス」
「リンカー?」
「どうしてクラリンがお城に行くのか、自分はちゃんと聞かなかったッス。ちゃんと結界が働くようにしてくれてくれてたって聞いたッスよ。だからごめんなさいッス」
「私も、貴殿に話もきかず…すまなかった」
アルフィージ様も頭を下げたッス。
「いいのよ、リンカーにアルルン。魔法少女は人知れず人助けをするものだからね」
「なら、自分にもやり方を教えてほしいッス」
「オッケー、リンカー!行くわよ!」
というわけで、メンテナンスの方法を習ってこの問題は終わったッス。
それから、クラリンは相変わらず謎のおじいさんとしてたまに城に現れては騎士さん達と追いかけっこをしてるらしいッス。
多分一件落着ッスね!
クラリンと凛花はなんとなくですが気が合います。今後、二人の魔法少女として活躍する………かもしれません。
本気でカテゴリを異世界・恋愛からコメディにお引っ越しを考えなければいけない気がしてきました。ギャグが7~8割を占めているような…気のせい?
そも、ロボが出てくる悪役令嬢ものはここだけって…悪役令嬢も迷子になってる今日この頃です。
 




