伝達って難しい・とある農民さん達編
とある田舎の農民さん視点になります。
いつも通りに畑仕事をしていたら、空が光って女神様が現れた。いやあ、たまげたわ。神様なんて初めて見るもんなぁ。他の皆もアホみたいに口開けてポカーンとしてたよぉ。
「はじめまして、皆様。いきなり失礼いたします。私はクリスティアの侯爵夫人にして勇者…ロザリンド=バートンと申します」
美しい青銀の髪は上品に結われていた。意思の強そうな紫の瞳。生き物なのかが疑わしいほどに神々しく美しい。純白のドレスが輝き、更に女神様を美しく見せていた。声までも、鈴がなるように涼やかで綺麗だった。あんな綺麗なもの、女神様以外ありえねぇ。
「女神様!」
「女神様だあ!」
硬直が解けると、皆して慌てて頭を下げた。最初なんて言ってたかわかんなかったけど、ちゃんと次は聞き逃さないようにしなきゃいけん!
「勇者は本来、世界の危機を救う存在です。しかし、現在もう一人、勇者が存在します。ここにいるリンカ=ワタセです。何故勇者が二人存在するのか。それは、この世界が未曾有の危機に晒され続けているからです」
今度は可愛らしい天使様が出てきた。あれ、勇者様だっぺか。まあ、どっちもおんなじだぁ。神様の仲間ってことだな!
「しかし、それに立ち向かう神様がいました」
「「そう、シヴァ神です」」
つまり、女神様だっぺな。うんうん皆頷いている。
「私の贈り人たる凛を召喚し」
「最後の希望として私、渡瀬凛花を召喚した」
「「ゆえに、神は疲弊し、力尽きようとしているのです」」
やっぱりあの可愛らしい子は天使だったんだっぺ。女神様と息がピッタリだぁ!
それより大変だ!女神様が死んでしまう!?皆顔色が悪い。あんなに綺麗なのに、死んでほしくない!皆固唾を飲んで見守った。
「神を神たらしめるモノ…」
「神の力の源…」
「「それは『信仰』です」」
女神様は瞳を潤ませ、涙をこぼした。女神様が泣いている!皆真っ青になった。なんか言ってたけど、難しくってよくわかんなかった。
「皆様にお願いいたします。どうか…どうかシヴァ神をお救いください!」
「きっと一人一人の祈りは強くないけど、皆が祈ったなら神様だって救えるはずッス!」
「「どうか、お願いいたします!」」
女神様達はお辞儀をすると消えてしまった。空を見上げていた皆が一斉に頷いた。おら達の心はひとつだぁ!!
「皆、女神様をお救いするっぺよ!」
『うおおおおお~!!』
盛り上がるおら達。しかし冷静な奴もいた。
「しかし、何したらいいっぺな?」
「祈れって言ってたべ」
「神様に健康祈願すればいいっぺか?」
きっとそうだべ!女神様はご病気なんだべ!
「女神様が元気になりますよ~に!」
「女神様が笑ってくれますよ~に!」
「これ毎朝毎晩やれば、きっと女神様も元気になるっぺ」
「んだな!」
村で一番絵がうまいやつが女神様の絵を描いて、それを毎朝毎晩、皆で拝んだ。
女神様、元気になるといいっぺな!今度は笑ってありがとうって言ってくれたらいいなぁ!そしておら達は今日もまた女神様を拝んでいる。
ロザリンドは明らかに失敗をしました。あの立体映像通信機はかなり使われてなかったので、なにも知らない田舎の人から見たらロザリンド=神様になってしまう。
さらには貴族風の口調だったから、学のない人には通じなかった結果があれです。
作者的には楽しかったです。まだまだ続きます。




