本気と書いてマジと読む。
実は天ちゃんに『神とはなにか』と問いかけたときに、答えは出ていた。正直、あまり使いたくない手段だったが仕方ない。使えるもんはなんでも使いますよ!
指輪で作った清楚で神々しく見える衣装を纏う。化粧を施し、鏡に微笑む。うむ!悪役令嬢っぽくて意地悪顔だが、美人だね!イメージ大事!髪はまとめて清楚な印象に仕上げました。
コツン、と靴をならしてセインティアの地下遺跡に降りる。既に協力者たちがスタンバイしていた。
「システム・起動。メンテナンスチェック・オールグリーン。世界3Dプロジェクター・接続確認」
「メインシステム、出力問題なし!いやあ、わくわくするね!」
「うっさい。ちゃんと仕事しろ。サブシステム、異常なし。いつでもいいぜ、ロザリンド」
ちなみに昔はこの遺産を使って布教してたらしいけど、この遺産のガーディアンは壊れてしまっていたのでナビィ君が兼任してくれている。
更にはアシスタントに元魔法院長とエルンストが来てくれた。細かい修理なんかもしてくれて、大変ありがたい。まあ、オタク二人は楽しそうでしたよ。
「ありがとう。強制通信、一斉起動開始!」
「アイ・マム!強制通信・起動!」
全世界に私の姿が映し出された。立体映像になるらしい。モニターのいくつかを見てみると、私が空に映っているから無事成功したようだ。
「はじめまして、皆様。いきなり失礼いたします。私はクリスティアの侯爵夫人にして勇者…ロザリンド=バートンと申します」
私は姿勢よく、はっきりと語った。
「勇者は本来、世界の危機を救う存在です。しかし、現在もう一人、勇者が存在します。ここにいるリンカ=ワタセです。何故勇者が二人存在するのか。それは、この世界が未曾有の危機に晒されているからです」
凛花もあの呪いの魔女っ子ステッキにより清楚可憐な白いドレスを着ている。凛花は真顔なら美少女である。光が反射しないよう、眼鏡は今回使ってない。魔法で一時的に視力を回復している。
「しかし、それに立ち向かう神様がいました」
「「そう、シヴァ神です」」
「私の贈り人たる凛を召喚し」
「最後の希望として私を召喚したのです」
「「ゆえに、神は疲弊し、力尽きようとしているのです」」
いや、台本があったとはいえ私と凛花、息ピッタリだわ!モニターをチラ見すると、皆呆然と私達を見ている。エルンストと元魔法院長、ナビィ君が頷いた。
「神を神たらしめるモノ…」
「神の力の源…」
「「それは『信仰』です」」
瞳を潤ませ、涙をこぼす。女の…特に美女の涙は武器なんだぜ!
「皆様にお願いいたします。どうか…どうかシヴァ神をお救いください!」
「きっと一人一人の祈りは強くないけど、皆が祈ったなら神様だって救えるはずッス!」
凛花、地が出てるし(笑)
「「どうか、お願いいたします!」」
そして、最後に頭を下げて通信を切った。
「「はー」」
「お疲れ様」
ディルクが紅茶を持ってきてくれた。じんわりあたたかさがしみわたる。
しかし、ほのぼのしていられたのはちょっとだけでした。
通信魔具が…兄からの着信音である。なんとなくきっと来る系ホラーBGM風がマッチしすぎて顔がひきつった。叱られる予感しかしなかったが、でなかったら後で捕縛されてもっと叱られるのは目に見えている。
覚悟を決めて通信魔具を起動した。
「ロザリンド!何かするときは報告が先!」
「すいませんでした!」
「うわぁ、お辞儀が綺麗に90度ッス」
「ロザリンドはルーに頭が上がらないんだよ」
「マジスか!ルー様すげえッス」
「まぁいい!ロザリンドが泣いてるってパニック起こしたハクが畑のど真ん中にシヴァ神の聖堂作っちゃうわ、ユグドラシルさんもパニック起こしたのかツリーハウスが聖堂にリフォームされちゃうわ、ポッチが慌てて壁にシヴァ神の絵を描き出すわ、礼拝したことない領民達が何をしたらいいか問い合わせが殺到してて、とにかく帰ってこい!」
「喜んで!」
えらいこっちゃで対応が大変でしたが、どうにかさばきました。しかし、私は知らなかった。これは始まりにすぎず、世界ではさらなる混乱が起きていたということを。
3日後、彼方さんから通信がきました。
「ロザリンドちゃん?あんな……やっぱええわ」
「彼方さん?」
「いや、気のせいかもしれんから!また連絡するわ!」
彼方さんからの通信は気になったが、私は更なる騒動でそれどころではなくなるのでした。
久しぶりだから一応。
彼方さん➡凛のネトゲ仲間で贈り人。シュシュさん(嫁)と子供にも恵まれ、ウルファネアで暮らしている。夢が相変わらず神様のたまり場と化しており、苦労が絶えない。
ロザリンドの本気は、他人も巻き込むことでした。




