久しぶりの日本は、ド修羅場でした
一応サクッと人物説明。
天ちゃん→凛花の幼馴染で天狗の息子さん。凛とも知り合い。
あっちゃん→凛花の友達。
天ちゃんに連れ去られ、やって来たのは懐かしい我が家…凛の家です。凛花が大事に使ってくれていたらしく、部屋はきれいに掃除されていました。
しかし、室内には包丁を持ったやつれた男性と、怯える女性。
なんというバイオレンス!何コレ、昼ドラ!?火サス!?凛の家が、惨劇の舞台に!?
とりあえず、男性を脊髄反射で取り押さえました。
「くそ!離せよ!」
「いやいや、離さんわ!そっちこそ包丁を手放しなさいよ!」
「凛姉ちゃんナイス!」
天ちゃんが男性から包丁を奪い取りました。男性は目が血走ってますが、とりあえずは落ち着いたらしい。しかし女性の首絞めたりとかされると嫌なんで、とりあえずまだおさえてます。
「あっちゃん!なんでお義母さんを刺そうとするッスか!?」
え?あ、襲われかけた女性はよく見たら凛花の継母だわ。男性は…誰?知らんわ。あっちゃん…あっちゃんて、凛花の友達?あっちゃん、男だったの??
「離せよ!この女が凛花を殺したんだよ!お前、突き落とされたんだろ!?」
「いや?知らない人にぶつかって押されて落ちたッス。お義母さんは助けようと手を伸ばしたけど、間に合わなかったッスよ」
「凛花ちゃん…ごめんなさい…ごめんなさい…」
すすり泣く凛花の継母こと二葉さん。
「いや、胎教に悪いし気にしないでほしいッス。仕方ないッスよ」
二葉さんを撫でる凛花。うん!状況がイマイチよくわからんわ!
「凛花、説明!」
「ういッス!あっちゃんは中学からの同級生で、天ちゃんの彼氏ッス」
「え?」
あの、あっちゃんと天ちゃんの目が死んだ魚になったよ?天ちゃんの好きな子はお前だよ。多分あっちゃんもお前の仇を討とうとしたみたいだし、お前が好きなんじゃないの?それなんでそんな誤解しちゃってんの??
「そんで、自分が死んだ日はあっちゃんと遊んで帰宅する途中だったんス。あっちゃんと別れて、たまたまお義母さんに会って歩きながら話してたら、誰かに押されて落ちて死んだッス。押したのはお義母さんじゃなくて知らないひとで、その人も混んでて押されただけ。誰も悪くないッス」
「そんな………」
あっちゃんとやらが脱力した。もう殺気はないし離してやる。
「凛花ちゃん、ごめんなさい。本当に助けてあげられなくてごめんなさぁぁい!!」
泣き崩れる二葉さんに、放心してブツブツ言ってるあっちゃん。すげーカオスだな!地味にホラーですね!どーすんだよ、これ!!
「天ちゃん、これはどーしろと言うのかね」
「り、凛姉ちゃんと凛花ならなんとかできると思って…特に篤は凛花が死んでから思いつめちまってたんだ。凛花が落ちた現場を見てたらしくて、家まで送ってやればよかったってずっと後悔して、やつれて…二葉さんが凛花を殺したって恨んでたんだ」
「なるほど。凛花、篤君とやらは任せた」
凛の姿に変わり、二葉さんに話しかけた。
「お久しぶりです、二葉さん」
「凛……さん!?これは夢なの!?どうなってるの!?」
「夢です。会いに来ました」
「……………そう。そう、よね。夢よね」
二葉さんは納得したらしい。そりゃ、死んだ人間が出てきたら夢と思うしかないわな。
「凛花から聞きました。凛花の思いを尊重してくれて、ありがとうございます」
「でも、わたし…助けてあげられなくて…!ずっと、どこかであの子を邪魔だって…確かに思ってたのよ!だからバチが当たったのよ!私は最低だわ!」
「……それこそ魔がさしたんですよ。貴女の努力を知っています。凛花、お前は二葉さんを恨んでいるの?」
「いや、恨んでないッスよ。お父さんをよろしくッス。どうかお腹の子共々幸せになってください…お母さん」
「うあ…………うあああああああああ!」
また泣き出した二葉さんを、そっと魔法で眠らせてあげた。これが多少なりと救いになればいいと思う。
「つーか凛花…こんな厄介なことになってんなら言えや!」
凛花にチョップをかました。
「あいた!自分もまさかこんな火サス的展開は予想してないッスよ!せいぜい考えたのは、あっちゃん泣いてくれたかなぁぐらいのもんッスよ!色々ありすぎて考える暇なんてなかったし!」
「確かに」
いきなり異世界に召喚され、精霊王とバトルしたり修業したり……そういや、考える暇を全く与えなかったかもしれない。
「………いたい?凛花…お前…生きてんの?」
呆然としながら篤君は凛花に触れた。
「あったかい…凛花…凛花……!!」
そのまま凛花を抱きしめる。すがるような抱擁に、やはり彼は凛花が好きだったのだと確信した。
「あっちゃん…抱きつくなら彼氏(天ちゃん)にすべきじゃないッスか?まぁいいッスけど。また会えて嬉しいッス」
「………自業自得だけど、キツいな…生きてんなら…なんで会いに来なかった」
「いや、異世界で勇者してて忙しかったッス」
篤君は固まりました。そりゃそうだ。凛花……オブラート!夢だと思わせるとか!お前本当に頭いいけどアホだよね!!
「………凛花」
「はいッス」
「頭は」
「馬鹿ッスけどおかしくなってはないッス。こっちで死ぬ運命のとこ、神様に拾われたッスよ。だから…正確には生きてない…かな?」
凛花は篤君から離れていく。
「天ちゃんと仲良くね」
「…嫌だ!行くな!行くな、凛花!!」
凛花にしがみつく篤君。
「いや、行くなって……」
1時間経過。
「あのね、だから自分やることがあるッスよ」
「嫌だ!行くなったら行くな!」
だだっ子と化した篤君と凛花は、平行線で話が進みません。
「そろそろ帰らないと旦那が心配してるかもしんないから、強行突破するわ」
「え?手荒な真似は「クラリン!緊急出動!!」
「オッケー、ロザリン!魔法少女蔵之助!オーバーザレインボウ!」
「え?」
「は?」
「おじいさん、かわいいッス!」
「サンキュー☆リンカー!さあ、貴女も緊急出動よ!変身するのよ!」
「あ、はいッス!シャイニング☆イリュージョン!!世界を繋ぎ、世界を救う!魔法勇者☆リリカルリンカー!!」
「………は?」
いきなり現れたクラリン(幻)と杖で変身を遂げた凛花に、呆然とする篤君。ですよねー。つーか、凛花の許容範囲が広すぎる。クラリンに全く動じないってどうなってんだ。
「さあ、リンカー!悩める子羊を助けに行くわよ!」
「ラジャーッス!クラリン!」
「じゃ、そゆことで。天ちゃん、帰るから転移させて」
「あ、ああ。わかった」
慌てて空間を切り裂く天ちゃん。私達は、サクッと帰還したのでした。
篤君は元気になったけど、天ちゃんが色々大変だったらしいです。
なぜクラリンが出てきたか…なんとなくとしか言いようがありません。ロザリンドさんは相手にとんでもないインパクトを与えて硬直させようと考え、成功したみたいです。




