働き者な精霊さん達と初めてのラブレター
今日はディルクの手伝いをしようとバートン邸の執務室に入りました。
現在の私が抱えている仕事はバートン領の経理、兄と共同経営している新種植物や品種改良事業の経理、孤児院の管理、半分趣味の服飾事業です。
更に手があけばディルクの秘書官もどきとしてサポートに入ります。
「ロザリンド、自分の仕事は大丈夫なの?」
「………仕事はあるけど、ないんです」
「…何それ」
ディルクが微妙そうにしている。しかし、事実なのだから仕方ない。書類仕分けが終わった頃、聞き慣れた声がした。
「ロザリンド!書類に判をくれ!」
「ロザリンド、終わったよ」
『ロザリンド、確認してくれ』
「ママ、上手にできたの!」
「お姉ちゃん、確認して」
闇様、スイ、聖獣様、アリサ、クーリンがそれぞれ書類を持ってきた。
「うん、そこに置いてくれる?闇様、いつも通り完璧です。流石は偉大なる精霊様です。ありがとうございます。スイ、ここだけ直してくれる?いつもありがとう。スイの仕事は丁寧だから本当に助かってるよ。聖獣様…最近やたら仕事に来てくれてますよね…いや、助かってますよ。お昼をご馳走させてください。アリサ…流石はママの子ね!えらいわ!クーリンもありがとう。丁寧に書いてくれたね。こことここは直してね」
そして、働き者な精霊さん達は去っていった。ちなみにコウはジェンド達と冒険者として飛び回っている。ハクは農園で働いている。ゴラちゃんとチタは兄の研究をお手伝いしている。ハルは書類などの運搬で各地を飛び回っている。
そして、最近闇様が私の仕事を手伝いたいと言い出し、私は素直に感謝した。すると、スイがそれに張り合い…聖獣様も面白そうだからと仕事しつつ二人のバトルを傍観し、私に誉められたいかわいこちゃんズも参戦した結果が、今である。
「えーと…つまり精霊さん達が手伝ってるから仕事はあるけど、ないというか…少ない?」
「皆、有能すぎて…でも報酬あげても私にリターンするんですよ!特に闇様!報酬で私に貢いでどうすんだ!」
アリサやクーリンなんかは玩具やお菓子を買ったりしている。お菓子を少し分けてくれるぐらいなら、いい。だが、闇様は高額な宝飾品なんかを持ってくる。闇様に悪気はない。私を喜ばせたいだけだ。
「…本人は楽しんでるし、ロザリンドに誉められれば満足みたいだよ?」
「ダメです!与えられるだけではダメ人間になります!」
「…なら、手紙とか…また服を作ってあげるとか」
「流石はマイダーリン!いい案です!あ、そろそろ休憩にしましょうか。お茶を用意しますね。パウンドケーキを焼きましたから、食べてください」
お茶の準備をするべく廊下に出た。
「…今の俺がロザリンドと同じ立場だと思うんだけどな…。ダメ人間かぁ…俺もちゃんとロザリンドに感謝しないとね」
そんなディルクの苦笑混じりな呟きは私には聞こえなかった。廊下に行くと、既に出来る執事さんがお茶を用意してくれていた。お礼に茶菓子をお裾分けする。
「…ありがとうございます。坊ちゃん…いえ、若旦那様は本当にいい奥様を迎えられましたね」
「い、いえいえ!まだ未熟者ですから!いたらぬところがありましたら、ご指導お願いいたします」
執事さんの微笑ましい的な視線から逃げるようにディルクの執務室に戻った。
ディルクがお茶をできるように別テーブルを用意する。ディルクは何やら手紙を書いているようだ。
「…うん。いいかな」
どうやら書き終わったらしく、便箋を確認して可愛らしいデザインの封筒にしまった。やたらパンパンですね。
「ロザリンド、はい」
「はい?」
手紙を受け取った。え?私に??
「その…普段の感謝とか…ロザリンドのおかげで幸せだとか助かってるとか…色々書いたらこうなっちゃった」
苦笑しているディルクが愛しすぎる。超嬉しい!
「つまり、私へのラブレター?」
「………まあ、そう…かな。ラブレターなんて初めてだから変かもしれないけど…」
「今読んじゃ「ダメ」
チッ!ダメか。なら一人でニヤニヤしながら読むか?いや…どうせなら…
「ディルク…」
ディルクの膝に座り、見上げる。声も甘ったるく、甘えるような媚びるような声だ。
「なぁに?ロザリンド」
「どうせなら、ディルクに読んでほしいなぁ」
「………………マジで?」
ディルクは赤くなって青くなった。
「この手紙がディルクからの気持ちなら、ディルクの口から聞きたい…だめ?」
「くっ…あざと可愛い…!」
「ディルクぅ…お願い」
結局、ディルクは真っ赤になりながら手紙を読んでくれました。中身は秘密です。そうだな…日頃の感謝や私のどんなとこが好きかとか、照れ臭くて素面では絶対言えないようなことが書いてありました。
私も書きたいけど、朗読は恥ずか死ぬかしら。でもあまりにも嬉しくて…うっかり執務室でディルクを押し倒しそうになりました。感激しすぎて泣いちゃったし。ディルクは本当に最高の旦那様です。
「ロザリンド!?なんで泣いてるの!?」
「………うー、嬉しすぎて…ディルクすき…愛してる!」
抱きつくと、優しく背中を撫でてくれた。ぺろりと唇を舐めてニマリと…それこそ悪役令嬢らしく笑った。
「今夜は寝かせないからね…期待してて?ダーリン」
ディルクが首まで真っ赤になり、その後やたら挙動不審だったのは言うまでもない。
というわけで、祝400話。ネタが思いつかないなぁと思ったら、精霊さん達の出番がなくて寂しいという方がいたので精霊さんを出してみました。
酔勢 倒録様からお祝いにファンアートを3つもいただいたので載っけておきます。
記念企画は本日24時までです。




