ランチタイムと役割
まっさんとヴァルキリーでひとしきり遊んだあと、お腹がすいたのでお昼ご飯にすることにしたッス。
鞄から敷物を出して、お弁当を取り出す。景色もいいし、きっと気持ちよく食べれるはずッス。
「まっさん、ナッツなんかもあるッスけど普通のご飯も大丈夫ッスか?」
「ああ、このリスは精霊だから必要はないが食事も摂れる」
「…精霊さんだったんスか!?賢いリスさんだとは思ってたッスがビックリしたッス!」
「凛花は変なところが抜けてるな。普通のリスなわけないだろうが」
うう…ファンタジーっぽい世界だから、話のわかるリスさんがいても…いや、それ獣人か。なんだか変に納得してしまったッス
ちなみにランチはお手製サンドイッチ。なかなかの自信作ッスよ。具はタマゴ&キュウリ、ハム&チーズ、照焼きチキン、ゴボウサラダ等。我ながらなかなかの出来ッス。うまし。飲み物はシンプルなほうじ茶。ロザリンドちゃんが発見してたッス。ホットはホッと…だじゃれじゃないッス!ホッとする味なんスよ!
「…うまいな」
「マジッスか!?」
「ああ。なんというか、ホッとする」
「………お茶ッスか」
いや、まさかのお茶でしたか。確かにウルファネアじゃ珍しいしね、ほうじ茶。
「なぜ落ち込む?ホッとするのはこの食事だ。優しい気持ちがこもっているな」
まっさんは穏やかに笑った。いやまあ…ねえ。伝えるべきか迷ったけど、素直に言うことにしたッス。
「そりゃ、自分がまっさんを想ってまっさんのために作ったッスからねぇ」
「………………………は?」
照れ臭くて視線をそらした。まっさんは固まっている。
「ぼくの、ために?」
まっさんは何度もサンドイッチと自分を見ていた。
「そっスよ。まっさんは何が好きかな、喜んでくれたら嬉しいなって…シェフさんやメイドさんに無理言ってお願いして…早起きして頑張ったッスよ」
「うん…ありがとう、リンカ。すごくおいしい…」
まっさんから涙が零れた。
「こんな…心がこもったものは久しぶりだ…すごくおいしい」
「喜んでくれたら、それだけで嬉しいッス。頑張ったかいがあったッスよ」
「うん……」
暫く黙々とご飯を食べていて気がついた。
「ところで、ここやたら静かッスね」
「…ああ。僕の場所だからな」
地面に草が生えてて、木もある。太陽もあるけど…生き物の気配がしない不思議な場所。そうだ、鳥の鳴き声も魔物の気配もないッスよ。
「ここには誰も入れないんスか?」
「僕が許可した贈り人か…神は入れる。許可しないと神でも侵入は難しいね」
なら、好都合かもしれないッスね。内緒話には最適ッス。
「通信系魔具はどうなるッスか?」
「多分結界に入ったときと同じで遮断されると思うけど…なんで?」
「内緒話をしようかと思ったッス」
「内緒話?」
「自分はまっさんの『昔の名前と役割』を知ってるッス。フェアじゃないから伝えとこうと思って」
まっさんはため息をついた。その表情は悲しげだ。
「…なら、何故優しくする?それを知っているのなら、僕の罪も知っているのだろう?」
「知ってるッス。でも、ものすごーく昔のことだし…まっさんはもう人間を恨んでないみたいだし…自分はゲームを通してまっさんを知って、まっさんを好きになったッス」
「どうして…」
まっさんは困惑しているが、こればかりは説明が難しい。
「好きになるのに理由はないッス。好きだと思ったからとしか、言いようがないッスよ。逆に嫌いは理由がかならずあるッスけど」
「…うん。そう、かも」
まっさんは頷いた。なんとなくだが納得してくれたようだ。
「まっさんは、自分が神に選ばれた勇者だと知ってるッスよね?ロザリンドちゃんはイレギュラー。本来の勇者は自分ッス」
「……うん。君は俺を殺すものだ。君になら…僕は殺されたい」
自分は首を振った。違うのだ。本来の…『シナリオ通りの勇者』ならば『そう』だった。だが、違うのだ。
「自分は…私は貴方を殺さない。貴方を救うための勇者だから。勇者召喚は『条件に合う者』を召喚するものなんだよ。確かに昔の勇者召喚は『魔を倒せる人間』を召喚していたから、勘違いしても仕方ないけど。ただ貴方を殺すだけなら、救世の聖女にもロザリンドちゃんにも可能だったんだよ。それは覚えておいて」
「…は?」
「渡瀬凛花は、貴方を救う勇者なんだよ。いつか必ずまっさんに『凛花と一緒に生きたい』と言わせてみせるッス!」
隙をみて、まっさんのほっぺにちゅーをしてやったッス。
「な、なななななな何を!?」
「リスさんの体だから遠慮してほっぺちゅーにしたッス」
「なっ!?ば………ばか!そんな簡単にキスすんな!」
「簡単にはしてないッスよ~。あ、それから…まっさんが本当は悪いことしたくないのも知ってる。ロザリンドちゃんが怖いからって言い訳してしてないのも知ってるッス」
「……………なんで嫌わない」
「苦しんで、罪を償っていたのも知ってるッス」
「………う……」
まっさんの瞳から涙が溢れる。その涙が綺麗だと思った。
「嫌わないッス。まっさんが大好きだから」
たとえ、貴方の心に別の人がいても…自分はまっさんが大好きだ。涙を流すまっさんをそっと抱きしめた。
「…名前を呼んで」
「…ラヴィアス」
ゲームで知っていた、かつての彼の名前を囁いた。
「名前を…つけてくれないか」
「うん?名前ッスか?」
「僕は昔の僕とは違うモノだ。リンカに呼ばれる名前が欲しい」
「…いや、自分ネーミングセンス悪いッスよ?」
「かまわない」
「…うあ、即答。なら、ラヴィ君」
「まんまだね」
「ずっとそう呼んでたから、実はまっさん呼びにも違和感があったんスよ」
「そう」
「昔のラヴィアス君があって、今のラヴィ君が居るんだから、今さら全く別よりいいんじゃないッスか?」
「……そうだね。ところで、ゲームって何?」
そういや説明してなかったッス。ラヴィ君にゲームについて説明して、そんなに面白いんだねと興味津々だったッスよ。もうデートの浮かれ気分はお互いなかったし、色々とお話したッス。
珍しくシリアス先輩が大活躍回でした。どのぐらいぶりの出番かな、シリアス先輩。
400回記念活動報告にこっそり背中で怒るディルクさんを載っけました。興味あるかたは見てみてくださいませ。




