事件のウサメガネ側
ラビーシャ視点になります。
もうすぐアルフィージ様と婚約するというある日。ヒルダとお茶をする約束をしていた。スケジュールの関係で、城のテラスを借りている。
ヒルダ=シュレクは男爵令嬢だが、幼い頃ワルーゼに預けられていた。
シュレク男爵はヒルダの祖父にヒルダの母との結婚を反対され、さらに獣人蔑視が強い貴族社会ではヒルダが生きにくいだろうと両親が話し合って、結局ヒルダの母は女手1つでヒルダを育てていた。援助はあったようだが、ヒルダの母は働いており我が家に預けられることになったわけだ。
しかしあの事件でシュレク男爵は腹をくくったらしく、反対をおしきりヒルダの母と正式に結婚。ヒルダは男爵令嬢になったらしい。
そして、男爵令嬢になったヒルダは努力した。その結果、女性ながら医学の道に進み…兄であるゲータと再会したのである。
その頃には色々面倒だから親しい知り合い以外にはハーフ獣人であることは隠していたこともあり、鈍い兄さんは再会したことに気がついていないが、ヒルダはすぐにゲータがわかり、私に接触してきた。そして、アプローチの相談………というか………
「今日もだめだったぁぁ!」
愚痴&反省会となっていた。
「はいはい、今回は何だったっけ?」
前回は…兄さんの好きなお菓子を作って女子力アピール作戦。兄さんが周囲に甘味好きを隠していたため、失敗。
その前は…お買い物デートに誘おう大作戦。小さいからはぐれたら困るし、誘ったのが薬草なんかのセールだから、ヒルダが怪我をしたら大変だしと断られる。
それから弁当作ったらたまたまお嬢様の差し入れとかち合ってしまい…出せない上に敗北感にうちひしがれていた。お嬢様弁当は最高ですから仕方ない。
「結婚してって言ったら不思議な顔された!」
「いや、待て。シチュエーション詳しく」
「朝おはようございますからの結婚してください」
「馬鹿か。そりゃ不思議な顔するわ!」
ヒルダは頭はいいタイプの天然である。さて、兄のつがいが彼女だと発覚している。どうせなら兄も幸せになってほしい。真面目に考えようとしたら、耳を食まれた。
「ぴゅい!?」
ぴこりと逃げようとする耳。しかし、捕まってはむはむされる。しかもフェロモン攻撃まで!
「ひぁ……ん」
不可抗力!エロチックな声も仕方ないの!とりあえず、腰が抜けたがなんとか椅子から転がり落ちて悪戯した私のつがいを睨み付けた。
「アルフィージ様のばか!」
魔法で気配と匂いを隠してまで悪戯するとか、技術を駆使した悪戯しないでよ!
「その馬鹿が好きなんでしょ?」
「き…きら…」
腹立つわ、この美形!王子様だからって、何でも許されると思ったら大間違いなんだから!
「好きだよ、ラビーシャ」
許した。
チョロいな、私!でも仕方ない。嘘でも私に『嫌い』と言われたくなくて、好きだと言って…悲しげな表情をするアルフィージ様を見るとつい許してしまうのだ。
「…私も好きですけど、あまり悪戯がすぎると嫌いになるかもしれませんよ」
アルフィージ様はわかりやすく上機嫌で私を抱きしめて耳にキスをする。だから耳はやめて。ゾクゾクするから!
「ん…こら…耳はだめ…」
「すまないね。ラビーシャが可愛すぎるのがいけないんだよ。ダメと言いながら…気持ちいいんだろ?昨夜だって…「ぴゅいい!?それ以上言ったらしばらく留学先に逃げますからね!」
「ふふ…残念」
エロい。エロ王子ですよ、アルフィージ様!フェロモンが増して、彼が興奮しているのがわかる。しかも舌で唇をぺろりとなめたのがまたセクシーである。
「うわわ…」
え?赤面しながらこちらを見るヒルダと目があった。そこで一気に意識がお花畑から現実に帰還した。ヒルダの前でなんてことしてくれるんだ、このエロ王子!!
「羨ましいなぁ…私もいつかゲータお兄ちゃんと…」
幸いヒルダもお花畑に精神がお出かけしているが…恥ずかしい!!
「アルフィージ様はしばらく触るの禁止です」
「…ラビーシャ、本気で謝る。人前で悪戯は今後一切しないから…許してくれないか?」
このエロイケメン!!私がそういつも許すと思ったら大間違いなんだから!
「…ラビーシャに触れると幸せなんだ。公務がどれほど忙しくても癒される…」
ぐっ!悲しそうな顔をしてもダメなんだから!いつも意地悪ばっかりして…そ、そりゃあ嫌ではないけども。じゃれてる時は私だって…いやいや、ダメ!許さない!
「ラビーシャ…愛している。どうしても駄目か?」
「今回だけですからね!」
負けた。めったに言われない愛しているに負けた。くそう、嬉しい。しかし気取られたくない私はそっぽを向いた。アルフィージ様は苦笑していたが嬉しそうだ。
「わかった。気をつける。ところでシュレク男爵令嬢とは何を話していたんだい?」
「実は…」
かくかくしかじか。
「ふむ。密室に閉じこめて襲わせればいいのでは?義兄上は真面目な男だ。手を出すか出したと思われる状況になれば、腹をくくって結婚するだろう」
「いや、失うものもでかすぎません?兄さんの性格からしたら確かに有効だとは思いますが…」
「…そうですね…考えてみます」
ヒルダはフラフラと退室した。
「どうせなら、ついでもあるから私達の婚約披露宴で…というのはどうだい?」
面白そうな玩具を見つけてしまった腹黒い我が婚約者様は、当人そっちのけであっという間に作戦をたててしまいました。
私の婚約者様は敵にまわしたらいけません。後悔します。
アルフィージ様が暴走したので進みませんでした(笑)
酔勢 倒録様からタイムリーにウサメガネ先生のファンアートをいただきました。活動報告に上げておきます。




