凛花と魔
ロザリンド視点に戻ります。
朝になりました。凛花を拾いに行ったら、談笑しているジューダス様と凛花を発見……いや、あれは……
「げっ!」
「あっ!?」
魔だったみたいです。一瞬で気配が消えました。相変わらず私が苦手なのだね。
「……しかし、アレは本当にロザリンドが苦手なのだな。全く反応がないぞ」
ジューダス様は苦笑している。私も苦笑いした。
「うー、まっさんともう少しお話したかったッス…」
「なんかごめん…というか、まっさんって何?!?めちゃくちゃ仲良くなってない!?」
「めちゃくちゃかどうかは知らないッスけど、お友だちになってくださいって土下座してお願いしたッス」
「何故土下座!?」
「目的のためなら自分のプライドなんてポイッスよ」
「潔いな!」
「ぶふっ…す、すまない。本当に面白いな、リンカもロザリンドも。方向性は違えど、どちらも魔にとって特別な存在なのだろう。私にはあれだ。ふるしかとだったからな…」
ジューダス様が涙目でした。ジューダス様かわいそうだな。
「まっさぁぁん!?無視はダメ!明らかにジューダス様が傷ついてるッスよ!!」
「馬鹿!揺らすな!仕方ないだろ!僕のせいでジューダスはいらない不幸を背負ってるんだぞ!話せるわけがないだろう!」
「「「………」」」
魔って案外思考がマトモなんだなぁ…知らなかった。出たらカバディで引っこめてたからなぁ。
「まっさん…!」
「!?ばっ…!?抱きつくな!」
といいつつ勢いよく抱きついた凛花をちゃんと抱き止める魔。いや、本当に仲いいな。
「結婚してくださいッス!!」
「…は?」
「…へ?」
けっこん………ケッコン………
結婚!??
「ね、姉ちゃんは許しませんよ!」
「なっ…ばっ……あ、会ったばかりだろ!?な、なんでそうなる!?」
混乱する私とは逆に、魔は至極マトモな返答をした。
「いや、その…自分、でも……まっさんが好きだなぁと思ったら…つい」
「ついで求婚したらだめだろ!しかもこんな実体もない幽霊みたいな上に、人間を憎み、怨み、害することしかできない『悪』の塊だ!こんな汚いものを好きだなんて、おかしい!」
「汚くないッス。否定しないで。自分が変な奴なのは今さらッスけど…自分はまっさんを汚いとは思ってないッスよ。むしろまっさんは綺麗で優しいッス」
「………っば…ばーか」
泣き出しそうな表情で魔は消えた。しかし、照れていたらしく首まで赤かった。
「凛花すげー」
「リンカはすごいな」
たった一晩でここまでたらしこむなんて…恐ろしい子!
「まっさん隠れちゃったッス…お返事くれなかったッス…」
凛花は珍しくかなり本気でへこんでいた。そんなに好きか。
「魔は照れているだけだ。凛花への想いにとまどっ「余計なことは言うな!!あ、会ったばかりだから返事ができない!仕方ないだろ!」」
「なら、知り合ってどのぐらいならオッケーッスか?」
「僕だってわかんないよ!でも、そんな悲しそうな顔すんな!」
「はいッス!じゃあ、まっさんの返事をゆっくり待つッス!」
「…いい返事なんか、できない」
いや、うん。魔よ…あんたそれ、いい返事を本当はしたいともとれるよ?
「状況も境遇も関係ないッス。まっさんがどう思ったかがほしいッスよ。結婚出来るかどうかじゃなく、まっさんの気持ちがほしいッス」
「返事は、できない…けど…………………うれしかった…」
最後は囁くようで聞き取りにくかった。泣き笑いの表情をして、魔は今度こそ気配を消した。うん…ベタぼれじゃないかい?うちの姪っこスゴいな!流石は勇者兼ヒロインボジションだなぁ……
「すげーときめいたッス。何あの笑顔…動悸がえらいこっちゃッス」
凛花も真っ赤ですな。ジューダス様は…何故まるまじろ?
「甘酸っぱいな…こちらが恥ずかしくなるぐらいだ。しかも魔の感情がダイレクトで来るから…わかった。余計なことは言わぬ。しかし、たまには私とも話してくれ………リンカのおかげでもう、ふるしかとはしないと約束してもらったぞ」
「よかったッスねぇ」
魔は内部で苦情を申し立てたみたいです。ジューダス様も嬉しそうだし、結果オーライ!というか…予想外に計画は上手くいってるみたいです。
凛花さんが暴走しました。作者も予想外の展開でした……どうしてこうなったと頭を抱えています。




