似た者叔母姪、人たらし
ちなみに今回訪れた冒険者ギルドはいつものクリスティア王都のギルドではなく、地の精霊王の住み処から近いウルファネアとクリスティアの国境付近のギルドである。
転移を使えば王都まではすぐだが、最近シェリさん(王都冒険者ギルドの美人受付嬢)に私のせいでギルドのお金管理がめまぐるしいとぼやかれたため近場にしたのだ。うん、めんどいからって山盛り狩ったやつを一気に出したりしてごめんよ。たまにジェラルディンさんの分まで出すからなぁ…大金だしねぇ…
そして、私は冒険者ギルドの情報力を正直なめてました。
「もおお、ロザリンドちゃん!!」
「ぶふっ!?」
たわわなボインボインに包まれました。周囲の冒険者達が羨ましそうに見ています。
「シェリさん!?」
「どうせならウチでランクアップのお祝いしてよ!全力でお祝いしてあげるのに!ロザリンドちゃんはウチの大事なホープなんだからさぁ!」
「あはは、ありがとうございます」
「膨れても美人ッス…」
凛花に拝まれるシェリさん。あら?と首をかしげる様もチャーミングです。まさしく妖精。しかし、情報が早いな。プライバシー保護はないのか!?
「…まあまあ、ランクアップ祝いはアークも呼んで向こうでもやるから」
このボインボイン美人はアークに想いをよせている。アークもまんざらでもなさそうなのだ。アークとシェリさんは正直お似合いなんで、早くくっつかないかなぁと思っている。
「わ、私はそういう意味じゃ…で、でもまあ向こうでもやるならいいのよ!ごちそう用意するわ!」
「いやいや、私も作りますよー。皆さんには初仕事でとんでもない迷惑かけましたし」
そんなこともあったねと笑いあい、じゃあ詳しくは後で…というところで待ったがきました。
「お待ちください!別にロザリンド様は『王都ギルドの所属』ではありませんよね。別に必要ないのでは?ギルドの職員としての権限を逸脱しています!」
「…なんですって?いいこと、ロザリンドちゃんはかけ出し冒険者になる前からウチのギルドと繋がりがあったの!変な言いがかりつけないでくれる!?」
「言いがかりではありません。冒険者ギルドの職員として貴女の態度は目に余る」
めっちゃバチバチしています。美人の怒り顔は大迫力ですな。凛花がビビって私の影に隠れちゃいました。
「ああ、こっちって高ランクの冒険者が寄り付かないもんねぇ。田舎だし、受付嬢はこんな愛想ないし」
「なっ!?」
あ、これはまずいな。スッと女性達の間に滑りこんだ。
「シェリさん、言い過ぎ」
めっ、と膨れてシェリさんのおでこにツンとした。
「お姉さんは冒険者ギルドの職員として素晴らしいと思います。本日の対応も、正直受付嬢の鑑だと思いました。シェリさんは私の姉のように近しい方なのです。不快な思いをさせて申し訳ございません。また、お気遣いありがとうございます。お優しいのですね」
深々と頭を下げてニッコリ笑った。受付嬢はキョトンとして…赤面した。なんで?
「へ!?いえ…わ、わわわ私はそんな……」
「お詫びに弟子と高ランクの討伐依頼をすべてお受けします」
壁に張り出されたAランク以上の討伐依頼を全てはがす。全部で5体。ディルク達を呼べばあっという間に片付くだろうが…まあ私達だけでも問題ない。
そして、依頼の紙をヒラヒラさせながらシェリさんにウインクした。
「じゃあ、シェリさん。頑張って狩るからお祝いのセッティングよろしく。アーク達には私が連絡するわ。他の人達への連絡はお願いね。楽しみにしてるから」
「ええ、酒場で待ってるからね!」
うむ、シェリさんの魅力はこの笑顔。そして…
「…感情的になってごめんなさい。貴女の言うことが正しいわ」
「……………いえ、貴女のように冒険者達に親身になる受付嬢は魅力的でしょう」
きちんと自分の非を認めて謝罪できるところ。大人になると難しいけど、シェリさんのそういうとこがいいと思う。仲直りした受付嬢2人に微笑むと、凛花を連れてギルドを出た。
受付嬢二人は素敵な笑顔で送り出してくれた。やっぱり美人には笑顔が一番だよね!
「ロザリンドちゃんは人たらしッスね…相変わらずッスわ」
「……………はい?」
私がいつ、誰をたらしこんだというのだろうか。首をかしげつつ反論した。
「私がたらしこみたいのはディルクだけですが」
「あー、うん。ご夫婦仲良しみたいでいいッスね。幸せそうでなによりッス」
凛花に何回か人たらし呼ばわりしたのはなんでかと聞きましたが、頑なに話したがりませんでした。そしてとんでもない爆弾を投下されました。
「…まあ、無意識に日本でもたらしまくってたッスから、今さらッスねぇ」
「え?」
「天ちゃんパパやら、他の神様をはじめ…ミッキさんとかも凛姉ちゃんが好きだったッスから」
「ミッキ…美月?あいつはないわ~。友人ではあったけど。友人的な好き?ならありえるかなぁ」
「あー………まあ、いいかな?凛姉ちゃんも人妻だし…会うこともないッスから…恋愛的な意味ッスよ。あの人いちいち表現が子供じみてたッスけど、凛姉ちゃんを治したくて医者になったんスよ?」
「へ?」
「お葬式でミッキさんの嘆きっぷりは同レベルで嘆いてた自分が一瞬素になるぐらいだったッスよ」
「……マジで?」
「マジッス。つうか、自分が嘘ついても得しないッス。子供心に『ツンデレは報われないのにバカだなぁ』と思ってたッス」
「は…はははは……」
口を開けば辛辣で、学生時代やたら私をこき使っていた美月が?正直ひきつった笑いしか出ない。いや、ありえないでしょ。
「それからみっさんとコンちゃんも虎視眈々と凛姉ちゃんを嫁にしようとしてたッス」
「いやん、モテモテ?」
とかいいつつ、今の美少女ロザリンドならともかく、地味平凡な凛が何故モテる?全く意味がわからん。
「信じてないッスね?ちなみにみっさんは蛇にも優しい凛姉ちゃんに惚れて、コンちゃんは凛姉ちゃんのおいなりさんに惚れたッス」
「……湊さんはさておき、稲荷さんはなんか納得したわ」
おすそわけでうっかり餌付けしてしまったのか。しかしチョロいな、稲荷さん。
「おばちゃんとかにも無駄にモテてたッス。世話やき気質だから年下にもモテてたッス」
「そこは否定しない」
恐らく病気のせいで無駄に幼い容姿をしていたから、庇護欲を刺激するのか年上によくかまわれた。年下は世話やき気質だから慕われていたと思う。
「凛花も無駄にモテてたよね」
「は?」
凛花は女を腐らせるまではそれなりに美少女だった。それが何を間違えたのか、オープン腐女子へとある意味メガ進化してしまい、天ちゃんを含む何人の男子が嘆いたことか……
凛花に惚れていた男子を知る限りあげていく。天ちゃんは抜いてあげた。流石にばらしたらまずい。
「……自分、告白とかされたことないッスよ?」
「告白とかできない、大人しめの男子にモテてたからね。しかもオープン腐女子に告白とか勇者でしょ」
「ああ……まぁ…自分、オープンだったッスからねぇ…」
「あと、お前のコミュ力は異常だと思う」
あのカーティスとの距離を縮めた手腕は見事としか言いようがない。しかし思い返せば、凛花のコミュ力は凄かった。仲良く談笑していたから、知り合いかと問えば…
「いや?初対面ッス」
と何回言われたことか。しかも厄介な輩を簡単に陥落させ…曲者ホイホイとかあだ名をつけられて………あ、大丈夫だわ。魔でもジューダス様でも落とすわ、ウチの姪なら。過去を思い返し…なんか納得してしまった。
実は無自覚モテモテ(男女問わず)な凛と凛花。しかし基本的に鈍かったり周囲の牽制もあり、お付き合いはしたことがありません。
もう無理かも…毎日連載は休む!と告知するも、何故か更新してしまう…しないしない詐欺ですね。
無理ないペースで更新します。旅行は明日までです。




