肉じゃがとこれまでの適当ダイジェスト
とりあえず、凛花が泣き疲れて寝てしまったので今後については明日話し合うことになった。
「つもる話もあるだろうから、ロザリンドはリンカさんと寝てあげなよ」
「ありがとう、ディルク。おやすみなさい」
「うん。おやすみなさい、ロザリンド」
お互い頬にキスをして、それぞれウルファネア城の客室に入った。凛花はしばらくして目を覚ますと、お腹を鳴らした。
「凛姉ちゃん、肉じゃが食いたいッス」
「…わかった。ちょっと待ってなさい」
「いや、お手伝いするッス」
上機嫌でついてくる凛花。厨房で一緒に肉じゃがと野菜炒めを作っていたら、カーティスが現れた。
「うまそー」
「ダメッスよ!これは自分のッスから!4年ぶりの激ウマ肉じゃがなんスから!」
「…4年ぶり?」
「凛姉ちゃんが死んでから、自分なりに試行錯誤して似た味まではたどり着いたッスけど、まだ凛姉ちゃんの激ウマ肉じゃがには到達できてないんスよ!夢にまで見た4年ぶりの肉じゃがを奪わないでほしいッス!」
カーティスは考えた様子だ。辛そうな表情になる。
「…………………わかった。じゃあ、お前が食いきれなかったら、分けて」
なんとカーティスがひいた。
凛花の肉じゃがへの情熱を感じたのか、思いやりを習得したかは知らないが、肉じゃがトークであっという間に仲良くなってしまったらしい。気がつけば、仲良く肉じゃがを食べている。
「うんまいッス!!最高ッス!この味なんスよ、食べたかったのは!」
「うまいよなぁ…」
カーティスとまったりしている。仲良く食べてる姿は兄妹かなんかみたいだ。
「カーたん、肉うまいッスよ。たんと食べるッス」
「リンカにはじゃがいもやる」
「「うまー」」
どうやら好物が違うらしく、共存しているようだ。しかし、カーティスが肉じゃがを他人に与えるなんて、明日は雨か?しかもカーたんってなんだ。お前のコミュ力はどうなってんだ?仲良くなるのが早すぎる。いや、だからこそ凛花が適任だと選ばれたのだろうか。
念のため、ジューダス様の位置を確認する。寝ているのかな?ジェスの隣室にいるようだ。
「…凛花、指令を出します」
「はいッス!」
「ジューダス様を…いや、魔…ジューダス様の中の人格を口説き落とせ」
「はいッス!………のええええええ!?」
だよね、そういう反応になるよねぇ…。
「いやいや、無理無理無理!!どう考えても無理ゲーッスよ!!そういうのは今の凛姉ちゃんみたいなこう…おっぱいドーン、腰キュッ、お尻バーンな美女の役割じゃないッスか!?こんな貧相ボディでどうしろと!?自慢じゃないけど中身も腐ってるっスよ!」
「ぎゃははははははは!」
カーティスが爆笑しだした。何がツボだったのだろうか。
「旦那いるから無理。泣くから…いや、心中しかねない。しかも、私は魔に超絶嫌われてるから」
「何をやらかしたんスか?」
「…トラウマになるレベルでのカバディ。もう私が近くにいるだけで出てこないぐらい、やらかした」
「カバディはスポーツッスよね!?何をどうしたらそんながっつりトラウマになるんスか!?いや待て!そもそも凛姉ちゃん、結婚してるんスか!?おめでとう、リア充爆発しろ!?えええええええ!?」
「がふっげふっ!!」
笑いすぎて痙攣してるカーティス。落ち着け。きちんと息はしろ。
「ディルクって……ディルク様ッスか!あれ?騎士服着てなかったし…凛姉ちゃんはロザリアとして生まれ変わったのに?え?」
「…正確にはロザリアと混ざってロザリンドとして暮らしてる」
「うん」
「3歳で融合した」
「うん」
「乙女ゲームの悪役令嬢ロザリアだと気がついて、未来を変えようとした」
「確かにロザリアってやたら死ぬッスからね。当然ッス」
「なので手始めに兄と仲良くなり、母の生活を改善し、父の労働状況を改善し…ディルクと婚約しました」
「それ何歳」
「3歳」
「マジッスか…今何歳」
「14歳」
「…見えねえッス!!このパーフェクト・ナイスバディが年下!?あああありえねえっスぅぅぅ!!」
「…1番驚くの、そこ?」
「ひっひっ………」
カーティス、とりあえず息をしろ。顔色が大変なことになってるよ?
「あとは…なんかアルディン様が驚きの白様になって、アルフィージ様が腹黒から真っ黒になってツンデレになって…暗殺者が3人全員寝返って近衛騎士になって…ジェンドは娼館と虐待を回避して…兄とエルンストがアウトドア派になって…ジャスパーは死んだことにしてジャッシュって改名して黒染めした!」
「攻略対象が全員原型をとどめてないじゃないッスか!!」
「あと、ジューダス様はまだ王太子で王様じゃないよ」
「そこ、わりとどーでもいいッス!」
「…んー?なんか難しい話なら、俺肉じゃが食ったし、出る?」
ギャアギャア言い合う私たちに、笑いがおさまったカーティスが首をかしげる。
「別に聞かれてまずい話じゃないけど?」
「そっスよ。大丈夫ッス」
「ならいいけど。そろそろ寝ないとまずくね?」
確かに、かなり遅い時間だ。厨房を片付けながら話しかけた。
「とりあえず今日はここまでにして、明日はクリスティアで凛花に話してもらおうかな?」
「何をッスか?」
「真相ルートについて」
「…?凛姉ちゃん、クリアしてないんスか?」
「……………うん」
「自分、真相ルート面白いって言ったッスよね?」
「………………うん」
「なんでクリアしてないんスか!?」
「だって、だってディルク様に会いたくなるんだもん!」
「えー」
凛花に呆れられました。しかし、真相ルートについて語るのに不満はないらしく、なるべく要点をまとめると言ってくれた。
「ロザリンド」
「何?」
「ディルク様ってディルクとは違うよな。浮気?」
「違うから!」
しかし、ゲームについての説明がややこしく…とりあえず浮気ではないことだけしっかりカーティスに説明し、なんかどっと疲れて眠りについたのでした。




