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悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!  作者: 明。
ロザリンド14歳・おいでませヒロインさん編

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召還の儀式

 季節は春、今宵は満月。この世界で言うところの4月1日にあたる今日、この日にヒロインは召喚された。

 この日は数百年に1回の、世界の壁が限りなく薄くなり、世界に魔力に満ちる日である。


 ウルファネアの王は、この日に願った。そして、その願いに、悲痛な魂の叫びに応えたものこそが『ヒロイン』である。


『ヒロイン』はあらゆる意味で異端(イレギュラー)だった。神の許しなく召喚された、加護を持たぬ『勇者』


 それこそがあのゲームの『ヒロイン』天羽(あもう) (ゆえ)だった。



 そして、恐らくあの優しい王様の願いは…とても悲しいものだったのだろう。彼女(ヒロイン)の名前も、どこかその願いを連想させる。



 ウルファネア王宮の地下には、こと姉ちゃんの遺産『勇者召喚陣』があった。欠けていて使用不可にされていたが、これこそがこと姉ちゃんをこの世界に喚びだしたいわくつきの魔法陣。大元はクリスティアにあり、そちらは破壊した。ウルファネアにあるのは万が一に備えたスペアだと手記に書かれていた。


 こと姉ちゃん自身はこちらの陣も破壊したかったようだが、何か問題があったときの切札(エース)として最終的に遺した。

 そして、それは魔法オタク達の手により更に改造されて完全な形となった。


 陣には、攻略対象全員が立っている。


 補佐役としてミルフィ、シーダ君、贈り人連合から特に魔力が高い贈り人数人と優姫。


 不測の事態が起きたときの対処要員としてディルク、ジェラルディンさん、シュシュさん、彼方さん。


 総括として私とアシスタントの元魔法院長。ちなみにジェスはお仕事してます。


「では、勇者召喚を始めます。ジューダス様は陣の中央に立ってください」


「ああ」


 ジューダス様を中心に、魔力が黒く染まろうとしたが、私の脅しでおさまった。



 ようやくあの乙女ゲームがスタートするのだ。ここまで長かった。私にとってもこの1手は切札…最高の日にち、最高のメンバー、万全の状態で挑むこの召喚が、うまくいかないはずはない!



「カーティス」


 私の合図でカーティスが頷き、魔力を放出する。


「全てをめぐる、自由な風よ…全てを動かせ」


 カーティスの陣が魔力で色鮮やかに染まる。そして、魔法陣が起動した。陣全体が回転を始める。カーティスの左隣まで魔力が満ちた。私の合図でカーティスの左隣に居たアルディン様が頷き、自分の陣に魔力を放出する。


「全てを照らし、育む光よ」


 アルディン様、今日も物理的に眩いです。魔力も眩いです。キラッキラです。キラッキラな魔力がまた左隣に満ちる。アデイルはやや緊張しているみたいだ。


「全ての始まり、地よ」


 アデイルの魔力が満ち、また左隣に届く。エルンストはわくわくしているようだ。魔法オタクの血が騒ぐんだね…


「全てに安らぎを与えし闇よ」


 エルンストはさすがに危なげなく魔力を満たす。魔力はすぐに左隣に達した。ヒューはアデイルとは逆で、普段通りだ。ウインクする余裕まである。


「全ての力の源、火よ」


 ヒューは魔法もこなせるらしく、すぐに左隣まで魔力を満たす。兄は大丈夫と言いたげに穏やかに微笑んだ。


「全ての命の恵み、緑よ」


 兄の魔力がすぐ左隣まで満ちる。アルフィージ様も問題ないと頷いた。


「全ての癒し、優しき水よ」


 アルフィージ様が魔力を満たすと、次は緊張した様子のジェンド。口パクで頑張れと応援したら、ふわりと微笑んだ。ジャッシュは落ち着いているらしく、柔らかく微笑む。


「「全てを見守りし、母なる月よ」」


 ジェンドとジャッシュは基本属性ではないが『月』という特殊な属性を持っている。満月の魔力を取り込みやすくする、今回の秘密兵器と言えよう。


 陣が完全に起動した。ジューダス様は、祈るような姿勢で陣の中心でひざまづいている。


 攻略対象は魔力差やコントロール能力に差があるので補佐役が必死で均等になるようフォローしている。





 わかる。懐かしい、日本の空気だ。そしてごめんなさい。知らない誰かに謝罪した。私の…私達の願いのために貴女を犠牲にする。







 そして、彼女はジューダス様の元に舞い降りた。美しい黒髪の乙女………ではなく、どうみてもボサボサな三つ編み眼鏡の普通女子。ジューダス様がキャッチした。



「成功か?」


 攻略対象達は戸惑いつつ現れた平凡女子を眺める。


「いやあ、皆様お疲れちゃん!我々は今や歴史的瞬間に………おや?悪魔っ子?何故白目をむいているんだい?」


 そして、平凡女子は目を開けた。


「大丈夫か?」


 ジューダス様が優しく声をかけた。


「はいッス…まさか、夢に王様出てくるとかなんてご褒美…いや待て!なんか痛い!夢じゃない!夢にまで見た異世界転移、ヒャッフー!!やったッス!」





「こんの、バカ娘ぇぇぇ!!」





 アホなことをのたまう平凡女子に、私の真空飛び膝蹴りが炸裂した。


「ギャメラ!」


 そして、謎の叫びと共に、平凡女子は気絶した。





「ポッポちゃん…チェンジ!チェンジしてってシヴァに言って!何かの間違いだといってぇぇ!!」


「…あー、ゴメンねぇ。該当者が彼女しか居なかったんだよ。彼女なら必ず役目を果たしてくれるよ。あのゲームシリーズをフルコンプした挙げ句、王様を救う手だてがないか僕がドン引くレベルでやりこみまくった猛者だ」


「いやあああああ!!」


 泣き叫ぶ私に、結局成功なのか失敗なのか…全員が微妙そうな顔をしていました。


 本当に、どうしてこうなった!?

 ついにヒロインが…ここまで長かったです。

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