因果応報と絆
そして、まともな神官さん達に囲まれた私。皆さん、見事に罪を悔いております。ちらりとシヴァの像を見た。相変わらず素晴らしい電車の動きです。
「ゆうしゃさま、ごめんなさい!」
「あやまるから、おじさん達をゆるして!」
子供達が泣きながら私にすがってきた。セインティアは孤児院をどこより早く導入していた。恐らくそこの子供達なのだろう。
「お姉ちゃんは、ちゃんと謝ったおじさん達にはあまり怒ってません。あのお仕置きされてるおじさん達に怒ってます」
『ならいいや!』
子供は素直で残酷である。まあ、贈り人をモノ扱いしたり虐待する輩が子供を…孤児を大切にするはずもない。
「ラクガキしちゃえ~」
「石投げちゃえ~」
「ザリガニで鼻はさんじゃえ~」
「鼻にピーナッツ詰めちゃえ~」
うむ。がっつり嫌われているな。日頃の行いは大事です。やめなさい!と慌ててまともな神官達が止めようとする。
「そうですね。食べ物を粗末にしてはいけませんよ」
「そっちですか!?」
真面目な神官さん達に驚愕された。え?それ以外になんかあった?とばかりに首をかしげつつ、私は神官さんを無視して子供達に話しかけた。
「ねえ、あのおじちゃん達、君たちにどんな嫌なことしたのかな?」
「ぼくはあのおじちゃんになき声がうるさいってたたかれたよ」
「わたしはじゃまだってむこうのおじさんにけられた」
「ぼく…むだめしぐらいとか、かちくっていわれた」
次々と明かされる悪事に、私は静かに首を切るしぐさをした。
「判決・有罪!!さあ子供達、やーっておしまい!!」
『はーい!!』
子供は素直でえげつない。うむ、仕方ないな!そして、私が楽だ!見てるだけ!
「勇者様、やめさせてください!お願いします!」
すすり泣く神官も出る始末。いい人って面倒くさい。しかし、私は冷静に言い返した。
「貴殿方は助けてと言った子供達が無慈悲にあれらをいびり倒すのは、それだけのことをあれらがしているからです。私が拾った子供達だって、私に何かあれば庇うでしょう。因果応報です」
「お嬢様、ジェンド達はお嬢様を害するものはむしろ血祭りにあげますよ。庇うどころか、敵を殲滅します。もちろんこの私も完膚なきまでに相手を辱しめて徹底的後悔させて潰します」
「……否定できない」
「そうだね…そしてジェラルディンさん、ルー、お義父様、ミルフィリア嬢に、精霊に魔獣辺りも…もちろん俺も激怒するね」
「駄目だ!大惨事の予感しかしない!!なんというオーバーキル!!」
何故か頭を抱えるはめになった私。うん…今後色々気を付けよう!
「ロザリン、愛されキャラなの。クラリンも、ロザリン虐める子はメッてするの」
「クラリン…」
癒し系じい様に和んでいたら、可愛らしい声がした。
「お姉さん…」
おお、美少女!お人形さんみたいです。ためらいがちに話す美少女を安心させようと、私はにこやかに話しかけました。
「どうしたの?」
「私は……もう少し大きくなったらせいどれいにしてやるって……私、どれいになるの?」
美少女が涙目です。私は、3人の教皇達と真面目な神官達に冷ややかな視線を送りました。こんな事を子供に言う輩を許せと言うの?
「…………これでもまだ許せ、と?」
3人の教皇と真面目な神官達が沈痛な表情で全員練習でもしたのかというぐらい素晴らしい土下座をした。
『……………思いっきりお願いします』
これは確実に、オトコハツラ遺跡にお願いする案件です。他被害者に確認して、まとめて捨ててきました。ナビコさんに念入りにやっていただくようお願いいたしました。是非とも性にトラウマを植えつけていただきたい。
ナビコさんは(多分)にこやかに了解しました。ちょっと怖かった。ナビコさんはあの遺跡の責任者だからまあ…当然だね!
子供達の過激なお仕置きが終了した頃、呪縛が解けた贈り人達が集まってきていたので声をかけました。
「さて、贈り人の皆様は行きたいところがあれば送りますよ。あ、仕返ししたい方はお好きにどうぞ…あ、なんなら怪我も治しますから思う存分にどうぞ」
「いや…………あそこまでされてたら流石に……」
「なあ…」
「もう帰れればどうでもいいよ…」
皆様顔がひきつってました。なんでだろー?異世界生活が長くて、こちらの感覚に染まったせいかしら。
「あ、送迎は大半の人が不要ですよ」
ラビーシャちゃんが挙手した。
「どういうこと?」
「贈り人達のパートナーが手を組んで、ここに大規模な襲撃をかけるつもりですから。大半の人が近辺に潜んでます。もう潜入できなかったら私もそっちに参加してセインティアを落としてやろうかと思ってましたから、かなり仲良くしてますよ。そして潜伏先も把握してますから、案内できます。ちなみに予定は来月で、ウィザードリィの軍も参加予定でした」
『…………………………』
うちのメイドは、何になるつもりなのでしょう。潜入できなかったら落とすって……国滅ぼすなよ!どうしてこんな子になっちゃったんですか、ラビオリさん!!(ここに居ない人に責任を押し付けた)
「じ、じゃあ…ラビーシャちゃんに案内してもらおうかな。シヴァヴァ、瓦礫どけて」
「シヴァヴァヴァヴァー!」
丁寧に瓦礫を退けるシヴァヴァ。なかなか器用である。しかし、丁寧なしぐさに憤怒の表情があまりにもミスマッチでシュールだ。
「お嬢様、あの像って誰ですか?」
「ああ、シヴァだよ」
「へー、シヴァ様ってあんな顔なんですねぇ。なんでシヴァ様の像にしたんですか?」
「白いから」
「確かに白いな」
「…似てるな。白いし」
他の贈り人からも同意をいただきました。シヴァを見たことある人は、皆様シヴァ=白いと思うようです。
「シヴァ様は白いのか…」
「いや、納得しないでくださいよ!?他に感想ないんですか!?」
『ない』
ラビーシャちゃんが固まりました。そうこうしていたら、瓦礫が片付いて上空で待機していたエルンストが飛行魔具を着陸させた。
「エルンスト!あとよろしく。ラビーシャちゃんはナビしてね」
「かしこまりました」
「任せておけ」
贈り人を全員のせて、エルンストの飛行魔具が飛び立ちました。とりあえず…襲撃が実行されなくてよかった。戦争になりかねません。とりあえず問題がひとつ片付いたので、安堵のため息をついた。
ちなみに、実は全ての贈り人達のパートナーが集結していました。多分ユーロもあと1日ぐらい居たら、救い出されてパートナー軍団に参加していたと思います。




