にゃんにゃん言わせました
お墓参りから帰宅して、家事も大半片付いた。夕飯も温めるだけ。なので、提案した。
「ディルク、実験しようか」
「…………なんの?」
「最近、獣性発散してないじゃない?だから久しぶりに遊ぼうよ。本当は獣性発散とフェロモン衝動との関連を調べたかったけど、昨日体液補充しちゃったからわかんないねー」
「!?そういうこと言わない!遊ぶのはいいよ」
警戒していたディルクだが、アッサリと子猫姿になった。
天使だ。久しぶりの子猫ディルク様だ!
「ロザリンド?」
天使が首をかしげた。私は可愛いあんちくしょうを捕獲してキスしまくり、もふりたおした。
「ふにゃあああああああ!?」
私のいきなりのご乱行にビックリした可愛らしい天使の断末魔が聞こえたが、私はしばらく落ち着けなかった。
えーいどーりあぁぁぁん(意味不明)!!
スーパーハーイテンションまぁぁっくす!!
ぶっとびはっちゃけロザリンドですよ!!
いいいやっふぅー!!
私のスーパーハイテンションぶりに抵抗を諦めたディルクは、その後されるがままだった。ごめんね、ディルク。でも、ディルクが可愛すぎるのがいけないと思うんだ。
気を取り直して遊ぶことに。オモチャはスタンダードに猫じゃらし風オモチャです。さあ…ここから私とディルクの真剣勝負です。
「…俺、別にこんなの追いかけないよ」
人間としてのディルクは猫じゃらしに興味はないが、獣としてのディルクは猫じゃらしが大好きです。既にディルクは猫じゃらしを視界の端にとらえ、動向をうかがっています。さながらスナイパーのようです。
そっと近づいて…逃げる。隠れてパタパタさせる。
「…………………」
興味ないと言いつつ、目は完全に猫じゃらしにくぎ付け。
「とっとっと…」
猫じゃらしがディルクの射程ギリギリまで近づいた。
「にゃっ!」
「残念!惜しい!」
そこは読んでいたためディルクの前足をひらりとかわした。
「にゃっにゃにゃあ!!」
「わっはっは、まだまだあ!」
ディルクの連続攻撃をかわす私。ディルクは完全に猫じゃらしスナイパーと化しています。ディルクは見た目こそ子猫ですが、ディルクはディルク。油断すれば即猫じゃらしは奪われます。しかし、私も負けてはいません。ディルクの動きを読み、猫じゃらしで狩猟本能を刺激するようヒット&アウェイを繰り返します。
「にゃおーん!」
「あ、負けちゃった」
ついにディルクは猫じゃらしを私から奪い、がじがじしていました。尻尾もご機嫌でどや顔です。そしてしばらくがじがじして………正気に戻りました。
「…………………………死にたい」
「楽しかったです」
「俺の本能、死んだらいいのに!」
嘆くディルク。そんなに嫌か。全力で楽しんで申し訳ないな。
「…私は本能込みのディルクが好きだけどなぁ。獣人ハーフのディルクが好きだよ?」
「……………うん」
ディルクはぽてぽて歩いて私のお膝に乗ると丸まった。撫でるとスリスリしてくれる。
⬇タメ⬆キック!!
はっ!春麗なお姉さんがスピニングな鳥キックしてた!!
とりあえず、頭がぱーんとなりそうになったよ!ディルク…恐ろしい子…なんて言おうとしてたかすっかり忘れちゃったじゃないか。
「ゴロゴロ…」
まぁいっか。見たまま思ったまま言えばいいんだ。
「こうして撫でると喉を鳴らしてくれるから大好き」
「う…」
「気持ちいいんだよね?撫でてる私も幸せになるんだよね」
「…うん」
「尻尾が絡むの、好き」
「…………俺は恥ずかしいんだけど…」
「無意識でも好かれてる証拠だからすごく嬉しい。くすぐったいけど幸せ」
「…そっか」
「人間でも獣化してても変わらない優しい琥珀色の瞳が大好き。もちろんフカフカもふもふな毛並みは綺麗だし、冬毛最高!ダイブしたいぐらいです!」
「……そう?」
子猫ディルクは私の膝から降りた。あああ、私の癒しがあぁ…と残念に思っていたら、瞬時に普通の黒豹サイズになりました。髪を伸ばしたせいか、モフモフ度が上がった素敵なマイダーリンです。
「………おさわり可ですか?モフモフしていいんだよね?」
「…どうしようかなぁ」
黒豹だが苦笑しているのがわかる。くはぁ!まさかの小悪魔ディルク様!?しかし、それもイイ!
「なんでもします!だからモフモフしたい!というか、ディルクは私に他モフ禁を課したんだから、私にモフモフさせるべきだと思うの!というわけでモフらせてください!」
「…気持ち悪くないの?姿も変わるのに。普段は中途半端な姿だし」
「……え?ディルクのどこが気持ち悪いの?こんなに綺麗で可愛いのに。むしろ『獣人の』ディルクが好きなのに。普段のピコピコしたお耳と尻尾も触りたいけど我慢してるのに」
「…我慢してたんだ…確かに耳と尻尾はいきなり触られたらビックリするかな。………俺も人間のロザリンドが好きだよ。ロザリンドが獣人だったら…と思うこともあったけど、人間の君に認められて…君に会えて………救われた」
よくわからん。私はしたいようにしただけだ。
「そうなの?」
「そうだよ。ロザリンドに手を引かれて、明るい方に進めたと思うんだ。まだ卑屈な部分はあって、獣人だからと差別されることもあるよ。悲しいけど、ロザリンドが居れば大丈夫。君には誇れる自分でありたいから」
すり、と私の首に甘えるディルクにきゅんきゅんしたが、聞き捨てならん部分があった。
「差別って?」
ディルクの耳と尻尾がピンとした。しまった!と言わんばかりだ。まあ、私に言えば確実に血祭りだもんね。温厚なディルクはそんなの望まないだろう。
「みゅっ!?あ、えっと、ご年配はなかなか難しいんだよ」
「具体的に」
「大丈夫だから!歩み寄れるようにちゃんとするから!ロザリンドに報復されたら死にかねないレベルのお年寄りだから!」
「…仕方ないね。ディルクに免じて今回だけは許すわ」
後でリストアップしとこう。
「その、仕返しするより支えてほしい。どうやったらうまくいく考えたり…」
「私が大暴れしてディルクが庇うとかどう?」
「なんで率先して悪者になりにいくの!?」
「…なんとなく。でも共通敵を作ると仲良くなりやすいよ」
悪役令嬢の本能かな?手段として手っ取り早いからってのが1番の理由だけど。
「真面目に!」
「んー、奥様から落とす。あのじじい、愛妻家だから」
「…………え?」
「奥様とは母様が仲いいし、例の小説にハマれば簡単に味方になるよ」
「………………ロザリンドさん」
「はいな」
「明らかに誰だか把握してるよね!?」
「多分あれかなぁという該当者はいる。しかし念のためディルクに意地悪しそうな輩をリストアップしようと思いました」
「……ロザリンドは俺に甘いよね」
「ディルクはわりと自分に厳しいから丁度いいんじゃない?把握してないと傷ついてるときすぐ対応できないし、情報大事」
「…まあ、うん。俺はまだまだだなぁ」
「だから、一緒に成長しようよ。私も今回の結婚については反省点が多数あるし、自分がこんなに弱るなんて思ってなかった」
ディルクの背中に乗っかり、グリグリする。はわ、幸せ。
「…その、寂しがらせてごめん」
尻尾が慰めるみたいに絡んできた。
「んー、言葉が足りなかったし…ディルクを信じるべきだった。疑ってごめん。フェロモンはどうにかなりそうだし、これからはたくさんお話ししようね」
「うん」
「というわけで、もふりつつお話ししたい!」
「いいよ」
丁寧にブラッシングしていく。もふもふも好きだが、毛並みの手入れも大好きだ。
「毛繕いってね」
「うん?」
「獣人の愛情表現なんだよ」
「そうなの?意味は?」
ディルクがソワソワする。言いにくい系統らしい。
「される側は、貴方にならすべて許す。する側は貴方は私のものって意味」
「…意味深だね。でも毛繕いは無防備になるし、わかんなくはない」
「…うん」
幸せ気分になりつつ、ディルクを転がしてお腹にダイブした。
「にゃっ!?もう、仕方ないなぁ」
肉球でてしん、いただきました。ご褒美ですね。ついでに肉球をマッサージした。
そして、寝不足だったのかブラッシングした極上の毛並みを満喫しながら寝てしまった。魔性の毛皮なんですよ!いい匂いだし、暖かいし、ディルクの尻尾が寝かしつけるみたくポンポンしてくるし!幸せだけどもったいないような…複雑です。
イチャイチャは続行。今回はもふりメイン回でした。




