幸せなおうち
朝から何も食べずイチャイチャしてたので、ディルクのお腹が鳴るを通り越して叫びました。相変わらずなんと言いますか、雄々しいお腹の音です。いつまでも腹ペコイメージなのは、きっとこのお腹の音のせいもあると思います。
「………なんか作るね」
「ううう、すいません。あ、手伝う!手伝うよ!」
キッチンには新妻風フリフリエプロンがありました。チェストのワンピースは私好みのやや大人びたものと少女趣味な可愛いフリフリでした。どっちにしたかって?ディルクの好みに合わせました。というか、選んでいただきました。どうせならディルクに可愛いと言われたいじゃないですか。
「可愛い…」
ディルクは目がおかしいと思います。こんな意地悪顔…悪人顔な私に正統派美少女(例・ミルフィ)に似合うだろう淡色系フリフリは似合わない。まあ、ディルクが喜ぶなら喜んで道化になりますけどね。
ディルクは猫の刺繍がお揃いなシンプルエプロンを持ってきました。まさかオーダーメイド?私は白のフリフリエプロンだから黒猫と黒い足跡の刺繍。ディルクはシンプルな黒エプロンに白猫と白い足跡の刺繍です。
「お揃いかあ。嬉しいな」
「う、うん。お義母様からのお祝いの品なんだ。チェストのワンピースも半分はお義母様からだよ」
「そっか」
母よ……フリフリが似合わぬ娘でごめんなさい。
「簡単にチャーハンとスープにしよっかな」
「わかった」
ディルクもなんだかんだで夜営してたりするから切ったりは安心してお任せできます。
「ディルク、これ刻んで」
「うん」
「ディルク、これよく混ぜて」
「うん」
「ディルク、味どう?」
「おいしい」
「ディルク…新婚さんみたいで幸せです」
「………新婚さんでしょ。俺もなんか幸せ……」
「そうですね。休日は一緒にご飯作って、一緒に食べたり食べさせあったりしてイチャイチャするんです」
「……うん」
うっとりしたご様子のディルク。
「平日は、私がご飯を作ってディルクの帰りを待つんです」
「…うん」
「それで、帰ってきたディルクをお出迎えして…おかえりなさい、あなた。ご飯にする?お風呂にする?…………それとも…わ・た・し?」
「……………………うん?」
「そして美味しくいただかれ…ディルク?」
床に倒れたディルク。どうした(笑)
「それ、食べるの意味が違う!明らかに違う!」
「やだぁ、ディルクのえっち…別にご飯を選べば普通の意味だよ」
「「……………………」」
ただし、ご飯を選べば私が盛大に拗ねて夫婦の危機になるけどね。真っ赤になって固まったが、ディルクは即座に反論した。
「し、仕方ないでしょ!ご飯とお風呂とロザリンドなら、ロザリンド以外の選択肢は存在しない!!可愛くて可愛くて仕方ない最愛のつがいから可愛く私を食べてアピールされて、食べない獣人なんて存在しない!!」
「ふむ…………私をたべて?」
上目づかいを意識して、首をかしげてディルクにアピールしてみた。珍しくぶりっ子である。
「………!!!???」
「…おいしいよ?」
ふに、とディルクの手を胸に当てた。
「ん!?ふ…」
ディルクが一瞬で私を抱き寄せて噛みつくような激しいキスをしてきた。そして、次の瞬間にはべりっと私をはがして距離をとる。キスで腰くだけにされたので、私はその場にへたりこみました。
「……………………理性が崩壊するから、試すのやめて…今本当に本気で危なかったから!」
「ちっ………壊れちゃえばいいのに。あと1押し?」
「押さない!」
「えー」
押す気満々なのでうんとは言いませんでした。そして、ギャオオス!というディルクの腹からの雄叫びにより、ご飯になったのでした。
「ディルク、あーん」
「…おいしい」
「よかった」
「ロザリンドさん、その…」
「なあに?」
「…………膝から下りません?」
「やだ」
現在、ディルクのお膝に座ってご飯をあーんで食べさせています。完全にディルク不足により駄々っ子だめっ子ロザリンドと化している、なんとも迷惑な私。ディルクも少し困ってます。
「…ちょっとでも側にいたい…だめ?」
ひっつきたいんだよ…でもディルクが嫌なら仕方ないよね…お腹すいてるし。しゅんとしつつ、控えめにおねだりした。
「…………………………好きなだけしていいよ」
「ありがとう、ディルク!ディルク大好き!」
ギュウッと抱きつく私に、ディルクが何やらボソボソ言ってましたが、よく聞き取れませんでした。ディルクは優しいです。
「…なんて言ったの?」
「………うん。ロザリンドは可愛いなぁって…ありえないぐらい可愛すぎてどうしたら…これ俺耐えられるかな…あと6日もあるけど………幸せだけど……俺のつがい可愛すぎてあまりにも辛い……」
「我慢は体に毒だよ?」
「誘惑しない!」
「だって無理強いしたくないから、ディルクに襲ってもらうしかないかなーと。ディルクの意思を考えないなら、昨日とっくに無理矢理いただいちゃってますよ?」
「…………う…」
「それにやっぱり初めてはフェロモン酔いしてないディルクにリードされたいし…」
「………………うう」
「………………食べない?」
「すっごく食べたいけど、痛いし辛いし若すぎる時に無茶したら「チャーハン」
「「………………」」
そして、タイミングよくギャオオス!と鳴るお腹。
「…イタダキマス」
「はい、あーん」
しかし、やっぱりディルクは私の体を気遣うんだなぁと思いました。その後は普通にご飯をたべていちゃいちゃしました。まだ日数あるし、また仕掛けようと思います。
ちなみにロザリンドにフリフリはとてもよく似合ってます。本人が違和感を感じてるだけです。母も似合うからフリフリをチェストに忍ばせているのです。
ディルクがボソボソ言ってたのは、ロザリンド可愛いをノンブレス・エンドレス。基本強気なロザリンドさんの弱気なおねだりがクリティカルだったようです。
追伸。お月さま番外編書きました。




