至福と自称平和の使者
さて、今ディルクさんは完全獣化でブラッシングされています。服は邪魔なんでパンツ以外全部脱いでいただきました。モフサラです。ブラッシングによりさらにツヤツヤ………たまらずお腹にダイブする私。
「うにゃっ!?こ、こら!」
「モフサラ…いい匂い…すーはー」
「い、いやあああ!?嗅がないで!そんなとこですーはーしないでええ!?」
「うはははは……幸せじゃー」
ディルクの悲鳴は聞かなかったことにして、モフサラに顔を埋めてスリスリする。ついでに顎をナデナデ…ここか?ここがいいのか?
「にゃふ…お腹くすぐった……ゴロゴロ…」
ディルクも最近モフられてなかったからか、すぐに機嫌をなおしてゴロゴロと喉を鳴らす。
「にゃあん」
スリスリと私にすり寄る美しい黒豹。し……幸せ!ディルクも甘えんぼうスイッチが入ったらしく、もっと撫でて、可愛がってと(多分)態度で示している。成人しても可愛いなんて反則ですよ!全力で可愛がってくれるわ!
「ふみゅう…ゴロゴロ…」
すっかり猫になったディルク。膝枕によるモフイチャタイムを堪能していたのですが、来客を知らせるインターホン的魔具が作動しました。
「……しつこいな」
無視しようと思ったのですが、しつこい。かれこれ30分は鳴らしています。名残惜しいけどマイダーリンは蕩けてパンツのみなんで、私が出ることにしました。もしかしたら、領地で何か問題があったのかもしれませんし。
皆さん、ドアを開けるときはインターホンか覗き穴を覗きましょう。そこをちゃんとしないと、後悔します。外には危険が一杯あります。そして今、むしろ私が後悔中なう!!
ドアを開けたら、変態が居ました。
反射的にドアを閉めたのですが、変態はドアの隙間に足をねじ込んできやがりました。どこの悪徳押し売り業者だよ!
「痛い!!」
「痛いなら足をどけろ!閉める!閉めてやる!足をちぎられたくなかったら、足をどけろ!」
ドアをガタガタさせて挟んだ足を蹴るが、変態…フルフェイス鳩に全身白タイツで微妙に汗で透けつつある変態はハァハァしている。怖い!精神的に怖い!キモい!気持ち悪い!!
「いたた…は、話をハァハァ………聞いてくださ…ハァハァ」
「イヤダァァ!うわあああん!ディルク!ディルクぅぅ!!助けて!変態がいるの!怖いよ、ディルクぅぅ!!」
「ちょっと!?勇者様、話を聞いてください!私は…ギャロップゥゥ!?」
私の悲鳴で駆けつけたディルク(指輪で服を出したようだ)は変態を殴り飛ばしてくれました。なんと頼りになる旦那様なんでしょう。ドアを閉めて鍵を2重にして、さらに結界をはりつつウットリしました。
「ディルク…流石は私の旦那様です。頼もしいしカッコいい!怖かった…!」
いや、ガチで怖かったよ!フルフェイス鳩に白タイツとか、真性の変態だよ!
「ロザリンドは俺が守るから大丈夫だよ」
惚れ直した!ディルク超カッコいい!
ドンドンドンドンドン!
「すいません!」
「ディルク…」
ウットリしてキスをねだる。
ドンドンドンドンドン!!
「すいません、開けてください!」
「ロザリンド…」
ディルクはそっと瞼に、頬に優しいキスをして…最後に唇にキスをしてくれました。
ドンドンドンドンドン!!
「すいません、シヴァ様の使いなんです!話だけでもきいてぇぇ!!」
「チェンジ」
「は?」
「チェンジ。他の連れてきて」
「うわあああん!ひどすぎるぅぅ!!」
地面に倒れ伏し、号泣する変態。この家は王都の外に建っている。良かった。普通の住宅街じゃなくて。こんな変態と関わりがあるとか思われたら嫌すぎる。
「……………………話だけでも聞いてあげたら?」
「えー?」
優しいディルクに説得されて、しぶしぶ話を聞くことになりました。
「私は平和の使者ポッポちゃんと申します。シヴァ様の使いで、勇者様にお仕えし「チェンジ」」
「「…………………」」
「勇者「チェンジ」」
「「…………………」」
笑顔で殺気を飛ばしあう私たち。ディルクはおずおずと話しかけた。
「勇者って……ロザリンドのことなの?」
「そうです」
「違います」
「「………………」」
「ロザリンド、とりあえず進まないからポッポ……さん?の話を聞こうよ」
「は~い」
しぶしぶ聞いてあげることにしました。
「私はシヴァ様より遣わされた平和の使者、ポッポちゃんです。夢以外でも神とのコンタクトが取れるようになりますし、勇者様をサポートするのが主な仕事になります」
「わかった。いらないから帰れ」
「……………何故勇者様はそんなに酷い対応なのでしょうか」
「まず、勇者だと認めてない。シヴァが勝手に言い出しただけ」
「………はい」
「久しぶりのイチャイチャタイムを邪魔されて腹立つ」
「………………それは…すいません」
「そして、変態はいらん!ここが最重要!!」
「そこなの!?」
「せめて、勇者のサポートを名乗るなら、もふ丸レベルの愛らしいサポートキャラ連れてこい!誰が好きでこんなフルフェイス鳩白全身タイツ細マッチョつれ歩くんだああああ!!」
私の魂の叫びに、うちひしがれる変態。
「そんな…勇者様は細マッチョがお好きでモフモフを好まれると聞いたのでサービスのつもりが、嫌われただと!?」
「その姿を私の趣味みたいに言うな!私の至高の好みは萌えもモフもディルクのみ!」
「ロザリンド…」
「見よ!この恥じらう初々しさを!このかっこよさに負けない愛らしさを!もう押し倒してもっかいにゃあにゃあ言わせたいほどの色「ストップ!そこは必要ないから!」」
真っ赤になったディルクに口を塞がれ強制終了になりました。
「くっ…私がロリコンに負けただと!?」
「ろり……」
ディルクがショックを受けた隙に、手を外した。そして、変態に見せつけた。
「こんなにバッチリ育った私を愛でる夫がロリコンだと?」
このプロポーションを見よ!お胸をゆさゆさしてみせた。
「…………申し訳ありませんでした!撤回いたします!確かに、ディルク様はロリコンではなくノーマルです!」
変態は素直に土下座した。わかればよろしい。
「ええと、勇者様は私の姿がお気に召さないのですよね」
「うん。あと、勇者じゃない」
「………なんか懐かしいなぁ、その台詞。では、ゆう…ロザリンド様の思うサポートのイメージを考えてください。近い形になれると思います」
フワフワの羽毛とややぽっちゃりして丸っとした白い文鳥をイメージした。
変態は可愛いとりさんになったが………
「でかい」
「…………小さくなるのは簡単ですよ。ニホンには大は小を兼ねるというコトワザがあるそうなので大きくしましたが、小さくて良かったのですね」
変態は手のひらサイズの愛らしい鳥さんになった。
「これでよろしいですか?」
首をかしげる鳥さん。大変可愛らしい。中身が先程の変態と解っていてももふりたいレベルのぷりちーである。
「大変よろしいです。その姿ならドアに挟んだりしなかったのに」
「………この姿で挟まれたら最悪死にますよ。先々代なんかはでかくて強いを好みましたが、女性は小さくて弱いものを好むのですかねぇ」
「へんた…ポッポちゃんはもしや、こと姉ちゃん…言葉のサポートだったの?」
「はい」
「…………最初にそれ言えば、変態姿でも普通に扱ったのに。シヴァはその姿に何も言わなかったの?」
「…なんてこった…そういや、シヴァ様達は爆笑しながら誉めてくださいました。スレングス様はオロオロしてましたね」
「…………よし、泣かすか」
相棒(彼方さん)にもお願いして、泣かすと心に決めました。そして、私にポッポちゃんというサポート役がいらないけどつくことになりました。ポッポちゃんは意外に空気を読み、ディルクとのハネムーンが終わってからまた来ます。大変申し訳ありませんでしたと丁寧に謝罪して消えました。呼べばまた来ますとも言ってました。
呼ばないけどな。
なんでこうなったのかなぁと作者が思う始末です。変態が増えました。




