限度があるよ、何事も
教会から出たら、うちの魔獣さん達が腹を出していた。もふ丸は…腹というか、多分ひっくり返っている。
「…………なにしてんの?」
「アルジノツガイ、アルジノハンリョニナッタ。ワレワレハアルジノハンリョニモ、フクジュウスル」
服従のポーズなんだ?ディルクはしゃがみこんでもふ丸の顔を覗きこんだ。
「ロザリンドは君達を友達だと思ってるよ。だから俺とも友達として仲良くしてほしいな。ロザリンドがうちに住むことになったら君達もおいで。離ればなれにしたりしないよ」
「アルジ……!」
他の魔獣さん達も感動したらしく、ウルウルキラキラしている。
「ディルク!惚れ直しました!」
「え!?どの辺が?ロザリンドをお嫁に貰うなら当たり前の配慮じゃないの?」
首をかしげるあんちくしょうめ!キュンキュンします。我慢できず抱きつくと、魔獣さん達も乗っかりました。びくともしないマイダーリンすげえ。平然としてます。
「ロザリンド、ところで、そろそろ現実を見ようか」
「やだ」
「いや、どうしようか。本当に……」
教会を中心に、人、人、獣人、人、人、獣人、獣人、エルフ、人、獣人、人、人、エルフ…………………いっぱい。
さっきまで居なかったよね!?さっきディルクと教会に行くまでは普通だったよ!?
「お嬢様、おめでとう!おらだづの祝いだぁ!!いんやぁ、めでてぇから、村人皆来ちまったよぉ!!」
「あ、ありがとうございます」
町で私の結婚を知った人達の中にたまたまうちの領地の農民さんがいて、我が領地では通信魔具が普及しているためにすぐ連絡網が回され………うちの領地の農民総出で祝いに来たらしいです。連絡が早すぎる!そして祝いに野菜を山ほどいただきました。
「おらだづ、こんなもんしか用意でぎながっだけんど、一生懸命作った野菜だぁ。食べてくんろ」
「はい。大事にいただきますね」
うむ、ありがたし。とれたてお野菜とか、嬉しいです。急だったのに、皆さん気を使ってくれたんですね。
「ロザリンドちゃあああん!!おめでとおお!!」
「長様!興奮しすぎです!」
「ロザリンドちゃあああん!!」
「ああああもう、少しは落ち着けよ!!絞められたいの!?むしろ、物理的に締めるよ!」
ああ、苦労性のシュガーさんとうちのスイがエルフの村人さん達を抑え………られてないな。し、仕方ないよね。
エルフ村からは代表でスイのお祖父様が結婚式に参加してくれていたのですが、お祭り気質なエルフ村の住人達もお祝いに来てくれたそうです。
「皆、ありがとう!」
「うおおおおおおお!!」
手を振ったら反応がスゴい!
「煽らないで、ロザリンド!ええい、面倒だから言うこと聞かないやつは吊るすからね!祝うのはいいけど、迷惑行為禁止!!」
何名かすでに吊るされているが……何したんだろう。後でスイに聞こう。しかし、悪戯する側から止める側になるなんて…スイも成長したよね。
「肉肉肉肉!!」
「ロッザリンドォォ!!」
「肉肉筋肉」
「ロッザリンドォォ!!」
「誰かあれ、やめさせて!!行進すんなあぁ!!さりげなく筋肉を混入するなぁぁ!!」
そして、同じくウルファネアにも………商魂逞しい商人がこの一大儲けイベントを見逃すはずがなかったのです。
つうか、あの怪しげな白マントは何がしたいんだよ!?嫌がらせか!?
「おめでとう、女神様ぁぁ!!」
「いや、神子様だ!おめでとおお!!」
「いやいや、救世主様だぁぁ!おっめでとおおお!!」
「全部違ああああう!!」
好き放題呼びすぎだよ、ウルファネア!!私は聖女でも女神でも神子でも救世主でもないっつーの!!今はディルクのお嫁さんですから!!
後で知ったのですが、ウルファネアの商人が手配して彼ら…ウルファネアの農民達は来たらしいです。ウルファネアの商人としては聖女への礼だったらしく、私への祝いに来た人からは輸送費を取らなかったらしい。まぁ、そのぶん聖女グッズをクリスティアで売りさばきまくったり、もはや祭りとなったので屋台を出したりして儲けたらしいけど。
「ディルク様ぁぁぁ!!おめでとおお!!」
「筋肉ムキムキ、ディルク様!!」
「ハッスル、マッスル、ディルク様!!」
「ちょ!?なんですか、それ!やめてください!!」
ディルクが慌てて止めようとするが、ハッスルしているマッスル達は止まらない。どうやら、あの筋肉祭りでディルクも信者をゲットしてしまったようです。
「ぶふっ」
「ロザリンド!?」
「たまにはディルクも注目されたらいいと思います」
「ロザリンドォォ!?」
ディルクは涙目だが、これは私にもどうにもできない。する気もない。むしろ、どうにかできたら白マントを止めに行く。
「ぼっちゃあああん!!おめでとおお!!」
「ディルク坊ちゃぁん!!」
バートン領の農民さん達も来てくれたようです。
「いやいや、あの泣き虫だった坊ちゃんがなぁ…」
「いじめられてた、あの坊ちゃんがなぁ……」
「黒歴史を掘り返さないで!!」
ま、まぁなんだかんだ皆さんお祝いに来てくださいました。多分。またお野菜をいただきました。当分野菜に困らないね。
「ディルク、羨ま妬ましい!!」
「リア充爆発しろおお!!」
「巨乳でベタボレ年下美少女…しかも料理上手とか……どんだけ豪華なんだよ!!オレにも分けてくれ!」
「彼女、欲しいぃぃ!!」
「………騎士さん達は祝福しているの?」
「……………………………多分」
いや、ちゃんと祝福をしてくれた騎士さん達も居ました。主に既婚者。
「……騎士に合コンでもさせたげようか…」
「うん…なんか皆に睨まれてる気が……ロザリンドさん、何してるの?」
「当ててる…いや、挟んでる」
ディルクの腕におっぱいサンドをしている。
「こ、こら!胸が育って嬉しいのはわかるけど、外ではしない!」
「…じゃあ、二人きりでね?ダーリン」
意識して甘ぁい口調で言ったら真っ赤になりました。可愛いなぁ、ディルク。いや、見た目はカッコいいんですよ、クール系の美形ですからね。でも内面は相変わらず可愛いのです。
「ディルク、かわれぇぇ!むしろ、代わってくださいお願いします!!」
「美少女のおっぱいサンドぉぉ!!」
「……………ロザリンドをやらしい目で見たら…潰すよ?」
ディルクは照れた表情を一変させ、騎士さん達を一瞬で鎮静させました。殺気で体感温度が大幅に下がりましたよ。ディルクは怒らせてはいけません。
「あや?花びら?」
空から何か降ってきました。
「ロザリンド、おめでとう!!」
エルンスト達魔法院による飛行魔具による隊列飛行と花を撒いてるらしい。
それにしても、クリスティア、ウルファネア、エルフ達……………すごい沢山の人に祝われて…………うん。
多すぎるよ!!
とりあえず、もはやお祭りになってしまった結婚式に…笑うしかない私たちでした。
うん、きりがいいのでここまで。結婚式からお祭りになっちゃいました。
なぜこうなった…作者にもわかりません。




