メガ○テ…いや目が点
翌朝。聖獣様には申し訳ないが、がっつり泣いたらスッキリした。回復魔法で目の腫れもひき、いつもの自分だ。ウジウジ泣くとかキャラじゃない。後悔しないよう、精一杯生きると決めている。
朝食を摂ったら、ディルクに会おう。私はディルクを信じたいし、諦めるなんて無理だから。
だがしかし。
「お任せください、お嬢様!」
あの、ラビーシャちゃんはいつ帰国したんだい?君のセンスは信頼しているよ。
「お嬢様、世界一美しく仕上げますわ!」
マーサ、嬉しいけど…けどさ?
「ママもはりきっちゃうわよ~」
「…ママ」
「なぁにぃ?」
「何故私は目隠しをされているのですか?」
朝食を食べたら、流れるようにマーサに誘導され、自室のドレッサー前に立たされ目隠しをされています。自室には既に母とラビーシャちゃんがスタンバイしていて、私はラビーシャちゃんたらいつ帰国したんだいと聞く暇もなく強制的に着替えさせられ多分ドレッサーの椅子に座らされた。
「目隠しの理由?楽しいから!」
「いや、めちゃめちゃ不安なんですが!」
「大丈夫ですよう、ちゃんと可愛くしますって」
「お嬢様、私達を信じてください」
「信じてるよ!信じてるけど見えないのは不安!」
「だぁめ。我慢して」
「せめて説明!説明プリーズ!」
ぎゃあぎゃあ喚いたが、結局多分母の天啓によりしゃべれない上に目があかなくなりました……余計状況が悪化しましたよ!!平常時なら全異常無効イヤリングが作動しますが、すでに普通のイヤリングに替えられたらしい。手際がよすぎて怖いよ!!私なにされるの!?
待つことしばし。
もはや諦めた私は大人しくしていた。
「うわあ」
「お綺麗ですわ、お嬢様」
「素敵よ、ロザリンドちゃん」
いや、母よ。終わったなら天啓解除してくださいよ。どうなったか見えないよ。
「…準備はどうだ?」
「大丈夫よ」
この渋い声は父か。足元に双子が来たようだ。
「「姉様、きれい」」
兄も優しく撫でてくれた。
「…ロザリンド?」
「あ、ロザリンドちゃんは私の天啓でしゃべれないし目もあかないわよ~」
しん、と室内が静かになった。
「「どうしてそんなことに」」
ですよね!兄はともかく、たぶん父まで引いてます。もっと言って!
「お姉ちゃん、なおす?」
「お姉ちゃん、かわいそう」
「「嫌なのよくな~れ」」
「や、やっとしゃべれる…」
母と同じ天啓もちらしい双子達にお礼を言おうとしたら、父に手を取られた。
「では、行こうか」
よく見たら、全員正装してるわ。転移魔法の気配を感じる。
待て、父よ。
だからどこ行くの!?
「せ、説明…!誰か説明してぇぇ!!」
しかし私の叫びは誰にも聞いてもらえず、転移したのだった。
そして私は父にエスコートされ、広間みたいに大きな扉を開けた。建物は美しいステンドグラスに飾られ、幻想的な光がさしこんでいる。左右通路には見知った顔の人達から祝福の声。
そして、父が進む先には正装したマイダーリンディルク様、
夢オチ?これ、夢か?ほっぺをつねったが、痛いので夢ではない。
「幸せになりなさい」
父が穏やかに、どこか寂しそうに微笑してディルクに私を引き渡そうとする。
しかし、私はディルクの手を取らなかった。え?何?どゆこと??
たぶんここは教会です。
そして、私の衣装はウェディングドレスです。
今はきっと、バージンロードを父と歩いて花婿に引き渡しの場面です。
よし!状況は把握したが、意味わからん!!
私が混乱していたら、私と父が入った扉からジェンドが現れた。ジェンドも花婿みたいな衣装だねぇ。あれか。花嫁強奪?
「ちょっと待ったぁ!!ロザリンド、僕と結婚して!!」
「ごめんなさい」
「まさかの即答!?」
ジェンドは涙目だ。いや、すまん。しかし、曖昧にするほうがいけないと思うの。ジェンドがしんなりして隅に寄った。後ろに誰かいる…オルドか。
「ロザリンド、嫁になってくれ!」
「ごめんなさい」
「くっ…」
オルドが本気なのか、よくわからん。しかし落ち込んではいるようだ。彼も悲しげに隅に寄った。まだ誰かいるよ。行列ができるロザリンド?違うか。
「あ、姐御!好きだぁぁ!!」
「ごめんなさい」
「ぐふっ!ありがとう姐御…ようやく諦めがついたぜ…」
ガーヴが泣いている。好かれてたとか知らなかったよ。申し訳ないし、いたたまれない。というか、ナニコレ。壮大なドッキリなの?彼方さん辺りがいつかの仕返しに『ドッキリ大成功☆』とかって看板持ってきたりしない?彼方さんは…いた。爆笑してるわ。
とりあえずディルクが固まっている隙に、私は行動に出た。
「ジェラルディン!私を連れて逃げなさい!!」
「おう!」
流石は脳ミソまで筋肉製の男。私の命令を脊髄反射で実行。私を担ぐとすぐさま逃げ出した。
「えええ!?ま、待って!ロザリンド、どこ行くの!?」
「…ロザリンド、婿殿の足止めは任せておけ」
「ロザリンドちゃんは合意でないようだな。友人として、従僕として…私も足止めさせてもらうとしよう」
「可愛いロザリンドちゃんのためだな。私とも手合わせ願おうか」
いや、その…父だけでも強いのに、シュシュさんと奥方様…あ、フラれ組も参戦ですか?ディルク大丈夫!?
しかし、あっという間にジェラルディンさんに運ばれた。以前のよりも彼が気遣ってくれているのがわかる。
「とりあえず、主に確認したいのだが」
現在は冒険者御用達の宿屋の一室。ジェラルディンさんにしては緊張した様子だ。私も姿勢を正した。
「はい」
「この結婚が嫌だと言うなら他国でもどこにでも逃がすが、どうする?」
「あ、考えをまとめるための戦略的撤退ですから、他国には行かなくて大丈夫です」
「そうか。主は恩人で…家族だ。主は誰より幸せになるべきだ。そのためならば、いくらでも頼れ」
彼のこういう所が『英雄』と慕われる部分なのだろう。日頃結構迷惑なんだけど、彼自身はとても情が深い。
「ありがとう。私の従僕も幸せにならなきゃダメなんだよ」
「知っている。主に会ってから、俺はずっと幸せだ」
ジェラルディンさんを撫でたら、尻尾をパタパタしてました。うん。おっさんなのに可愛いしいいモフモフだわ…と若干現実逃避する私でした。
複数予想された方が居ましたが、結婚式でした。結婚式からのロザリンド逃亡は作者がずっと書きたかったネタです。
またしても予想されたのが悔しいので変えようかと思いましたが…特に展開は変えていません。実はジェンドと逃げるパターンもありましたが、ディルクが怖いことになりそうなんでやめました。




