真の魔法院
上層部の話し合いでスタウトさんは数年後の帰国が決定しました。ウルファネアからは金属の加工技術等が技術提供されるとのこと。その対価としてスタウトさんは行くわけです。数年は『今回の落し前』としてクリスティアにだいぶ有利な条件での決着となったようで…交渉役が萎びてました。うん、久々に性悪腹黒殿下が降臨したらしい。後で真っ白様が兄上カッケー!と自慢してきました。
「ロザリンド様のおかげです…!」
スタウトさんはえぐえぐ泣いていた。良かったね。数年後だけど帰れるってさ。
「…ところで、ロザリンド様」
「はい?」
今スタウトさんはカメレオンなので顔色で感情がまるわかりなのだが…今は水色。え?私怖がられてるとか?
「ロザリンド様は私の姿をどう思われますか?」
「え?」
舌が伸びるのかなとか?それは失礼な気がする…
「気色悪いとか、気味が悪いとかおぞましいとか「まてまて!思ってません!何その自虐!愛嬌あるなとか、ポーカーフェイス出来なそうとか、舌が伸びるなら見てみたいぐらいしか考えてない!」
ビックリしすぎて本音で語ってしまったが、彼は満足だったらしく、ピンクになった。
後に、全部実際人間の女性に言われたと知り、ガチで謝罪した。でも、ゴキ様の獣人がもし居たら…私も無理だと思ったのは内緒にしておいた。
呪いを解いた魔法院の人たちに、スタウトさんは謝罪したいと申し出た。まだ数年は魔法院にいなきゃいけないんだし、やめとけと言ったんだけど、彼は聞かなかった。呪いは食堂の温水・冷水作成魔具のタンクに設置され、その水を飲むと呪いにかかるという仕組みだった。スタウトさんは獣人であることも説明して謝罪した。
「室長!水に溶ける呪いとかすげぇ!他に応用できそうな奴ないですか!?」
「へ?ああ…そうだな」
「今、アイディアが溢れまくってて調子がいいんすよ!詰まったらまた呪いかけてくれます?」
「は?」
「室長、すげー色変わりますね!皮膚ちょっともらえませんか?」
「…す、少しなら」
スタウトさんは黄色い。私もビックリしすぎている。つーか、皮膚あげるんかい。魔法院の人、変。いや、多少はスタウトさんを睨んでる人もいるが、大半がスタウトさんに興味津々である。魔法院の人、変。
スタウトさんは謝罪後特に嫌がらせされたりといったこともなく、カメレオン姿で普通に仕事している。普通にしてると緑だと、最近知りました。
そう、問題はスタウトさんではなかった。
兄、エルンスト、ミルフィでランチタイム。私は意見を聞くことにした。わけです。
「呪いが解けても書類が改善されません」
「だろうね」
「だろうな」
「…そうなんですの?」
「…そうなんですよ、ミルフィ!騎士と違って力押しってわけにもいかないし!」
ミルフィに抱きつきました。ミルフィはよしよししてくれます。ツンデレから天使にクラスチェンジしたようです。
「…というか、騎士に力押しって何したの?」
「……マッチョなサボテンズと私で書類の修正をかけて勝負したり…」
「何してんの!?ロザリンドは僕の居ないとこで本当に何してんの!?」
肩をつかまれて、ガクガク揺さぶられました。
「安心して、兄様」
「ん?」
「完全勝利でした」
「どや顔すんなぁぁぁぁ!!」
兄にしばかれました。解せぬ。
「仕方ないな。ロザリンド、多分効果があると思われる呪文を教えてやる」
エルンストに耳打ちされました。
「なるほど!ありがとう、エルンスト!そうと決まれば…午後は抜けます!ハンスさんに伝言よろしく!」
「…院長か?」
エルンストの言葉に首をふった。
「いいえ。院長もきちんと期限を守らせたい馬鹿野郎なんで、許可しないと思います」
魔法院の書類は騎士に比べれば読めるし問題は少ない。しかし、提出期限を守らないまたは出しもしない輩が多いし、調査等の申請が紛れていたりと管理がものすごーくザルなのである。ちなみに、武はさほど酷くないのでミルフィがわからないのも当然である。
おまけに……
「うわあああ!?なんだあれ!」
「あれ、ライトンさんですかね」
「…多分な」
建物からシャカさんがつきだしている。呪いから解放された魔法院の研究員達は、枷が外れた結果暴走している。素晴らしい発明があれば、とんでもない失敗もある。そして、実験体を求めたりと、迷惑度が格段に上がってしまったのである。
どこまで改善できるかわからないが、こうなったら乗りかかった船!どうにかしてみせましょう!!
というわけで、魔法院編はもう少し続きます。
呪いがかかってたのは食堂の飲料水でした。大半がわざわざ飲みもの買わずに冷水か湯を飲んでいたので呪われてたわけです。




