正攻法が無理なら裏技だよね
私たちが院長さんで遊んでいた間に、うちの優秀な人材達はきっちりかっちり情報を集めてくれてました。正直すいません……楽しかったです。
私も情報収集するかとクラリンに聞いてみた。クラリンは今は引退してるけど、身寄りがないから魔法院で寝泊まりしているらしい。食事は3食食堂。もはやマスコット的存在だから、誰も気にしてない。魔法院内は完全フリーパス。ならば、有用な情報があるかも…と思ったわけだ。
「クラリン、難しいお話はわかんないの」
「そっかー」
まあ、クラリンはボケてるし期待はしてなかった。
「あ、クラリンもお昼食べようよ。ご飯と味噌汁あるよ」
「おみそしる…………」
ふうふうしてお味噌汁をすするクラリン。ああ平和…と思っていたら…事件が起きた。
「かたじけない」
「どちらさまですか!?」
クラリンが、クラリンが武士になった!?え!?癒し系じい様が、凛々しい武士系じい様にクラスチェンジ!?
「…ロザリンド殿が慌てるのも無理からぬこと。だが、それがしがまともでいられる時間はあまりに短い。知る限りをお伝えしよう」
クラリン…蔵之助さんは誰が怪しいかや、知りたい情報をくれました。
「あ、ありがとうございます」
「いや、味噌汁の礼だ。懐かしき、故郷の味だ…うまい」
「また作りますよ」
「ああ、よろしく頼む。くらりんが迷惑をかけて申し訳ない。あれに悪気はないんだ」
「気にしてませんよ」
蔵之助さんはしばらくしてクラリンに戻ってしまいました。兄に聞いたところ、たまに蔵之助さんになってお手伝いしてくれたりするらしい。ボケ…なの、かな?呪いではない、と思います。不思議。
さて、呪いの原因なんですが、やっぱり食堂にあるようです。オルドが第1の研究員の後を尾行していたのですが、昼食後におかしくなったとのこと。さらに裏付け。武で呪われた人間達は、たまたま混んでたから知で食事をしたと証言した。
試しにご飯を注文してみたが…普通のスパゲティである。ミートソースうまうま。あ、そういやあれ、持ってこなきゃ…………………
こ れ だ!!
呪いの原因さえ解ればこっちのもの。それをもとに犯人を割り出せ………なかった。候補はいるの!実行犯はわかってるの!だけど、実行犯は奴隷だから指示してる誰かが確実にいる。しかし、身辺も完璧に偽装している。こうなったら裏技である。
「色々調べたんだけど、わかんないから犯人を教えて」
「む…むう」
「私とジューダス様の仲じゃないですか!」
私は転移でウルファネアのお城なう。ジューダス様に無茶ぶり中です。どんな仲だよというツッコミは却下。ジューダス様は黒幕わかってるんだもんね!
「…教える、かわりに…あれを救ってくれるか?いや、私が渡せるものならなんでも差し出す!あれを助けてくれ!」
土下座をされました。なんか、最近やたら土下座されたり土下座されたり、土下座してる気がする。
「…とりあえず、話を聞いてから判断します」
犯人はジューダス様の乳兄弟で、ジューダス様に忠誠を誓っている。生真面目な男で、本当に信頼できる相手なんだそうな。でも魔法院にいるため、全く連絡もとれず…下手に連絡をしてバレれば処刑される可能性が高い。おまけにジューダス様でもわかんないレベルの変装の達人なんだそうな。
「それ、見破る方法は?」
「…びっくりさせる…だろうか。または命の危機を感じると、とける」
「ふむ」
しかし、今回の件は私の一存で決めない方がいいだろう。白黒王子様達をゆうか…召喚しました。
「久しいな、ジューダス殿!」
「…少ししか経ってないよ」
アルフィージ様のツッコミに涙目なアルディン様。まあ…2ヶ月経ってないからなぁ。アルフィージ様、正論。
「すまない。頼みがある」
ジューダス様は深々と頭を下げて白黒王子様達に状況を説明した。
アルディン様が某CMのチワワ並みにうるうるしてアルフィージ様を見つめている。アルフィージ様はため息をついた。
「自分のとこの尻拭いぐらい自分でしろと言いたいですが…魔の事を差し引いても貴方を魔法院に行かせるわけにはいかない。仕方ないですね」
「兄上!大好き!」
「流石は親友!英断です!」
左右の腕にしがみつかれて、アワアワするアルフィージ様。
「ちょっ…待て!アルディンはともかく、私はいつロザリンド嬢の親友になったんだ!?」
アルディン様は左腕。私は右腕に抱きついていたのだが、視線を合わせてお互い首をかしげた。
「前からだよな」
「はい」
アルディン様に素直に同意する私。
「アルディンとロザリンド嬢の方が仲がいいだろうが!」
それはそうだろう。同級生だし、一緒に遊んだりもする。
「「確かに仲良しです」」
でも、別に親友は一人だけって決まりはない。アルディン様が補足した。
「でも、兄上にはロザリンドがこうして素直に頼れるんだから特別な友人…すなわち親友だよな?」
「はい、そうです」
アルディン様に同意してへらりと笑った。否定する要素はない。アルフィージ様は、素直に頼れる大切で特別な友人…すなわち親友なのだ。
「と、に、か、く!い、今は魔法院だろう!」
「「はーい」」
「…そなたらは睦まじいな。微笑ましい」
「話を蒸し返さないでください!!」
腹黒からツンデレにシフトチェンジしたアルフィージ様が真っ赤になって叫びました。照れ屋さんだなぁ(笑)
とりあえず、まぁ…これで役者は揃いました。どう料理しようかな?




