協力要請
自宅に帰って、脳内で情報をまとめる。夕食で私なりの考えを話した。
「魔法院は思ったより深刻な状況でした。異様に調査が滞るのも当然です。調査に当たるべき研究員の9割が使い物にならない状況でした」
父がため息をつく。
「…いつからだ?」
「4年前から、らしいです。ただ、呪いを免れていた研究員の話によればなので信憑性としては微妙ですね。信じるなら少しずつ症状が悪化していたようです。ただしコウ達の呪い解析が進まなかったことや、あの転移陣の事を考えると…可能性は高い、と思います」
コウ達の呪いは賢者がアッサリ解析した。賢者はこのぐらいで魔法院がてこずるなんて、質が落ちたかと首をかしげていた。研究以外に関心がいかず、結局まともな人員がそこをフォローしてしまったために起きてしまったのだろう。しかも、もとから研究バカ集団だったので、多少の仕事抜けは見過ごされてしまった。どこをシメたらいいやらである。正常化したら、シメてやる!仕事はキッチリかっちりこなさなきゃね!
「ロザリンドは、どうする気だ?」
「当面は証拠集めと身辺調査ですかね」
『お嬢様の御心のままに』
マーサ、ジャッシュ、ラビーシャちゃんが綺麗な礼をとる。言われずとも彼らは役割を理解してくれている。
「マーサは新婚なのにいいの?」
「えふ!?」
「そうですよ、情報収集なら私達だけでも大丈夫ですよ?」
「はい。折角ですので早く帰宅できる任務にした方が…」
「お嬢様優先です!」
顔を真っ赤にしたマーサ、可愛い。
「マーサは居残りで。新婚なのはもちろん、敵がどう動くかわかんないから家を守ってほしい」
「…かしこまりました」
「ジャッシュは別方面で動いてほしい。犯人に接触して正体がばれたら困る。内部調査はラビーシャちゃんにお願いして、怪しい人物の身辺調査をしてください」
「…かしこまりました」
「ロザリンド、なら俺は?」
「オルド?」
彼が手伝いを申し出るのは珍しい。初めてじゃないかな?
「…殺さない、無理はしない。尾行ぐらいなら、できる」
「あ、僕も!お話聞くのは得意だよ!」
「…なら、オルドには特殊な任務をお願いします。ポッチは……」
「私と組みます。ポッチなら問題ありません。明日にでも研修生として潜入いたします」
流石は有能すぎるメイド、ラビーシャちゃん…とりあえずの方針は決定しました。
「ロザリンド、僕は?」
「兄様はこのままでお願いします。変に動くと感づかれる可能性もありますし。あ、モヤ…エルンストって子が味方になりました」
「エルンストって、エルンスト=ベンダー!?」
「それそれ」
「孤高の天才魔具職人をどうやって!?僕は無視されたよ!?」
「んー、向こうが私を知ってました」
「ロザリンド、説明」
「………へーい」
迷子になったくだりを隠そうとしましたが、だめでした。兄は鋭いです。洗いざらい話をさせられました。
「ロザリンド、正座」
説教タイムですね…わかりました。素直に正座する私。兄、超怖い!!涙目で父に助けを求める私。
「ルー、あまりロザリンドを責めるな」
「………父様は黙ってて」
そして、何故か私の隣に正座する父。
なんでだ。
母とアークとマーサがプルプルしている。私はどうしていいかわからず、兄も固まっている。天然過ぎる父の行動により、兄の怒りが軽減されたらしい。迷子になったら必ずすぐに兄を呼ぶ、単独行動はしないと約束させられたぐらいで、思ったより叱られずにすみました。
「父様、ありがとう」
「うむ」
天然父に癒されつつ、明日も頑張ろうと思います。ちなみに隣に正座したのは、一緒に叱られて怒りを分散させようと思ったらしい。父…兄は悪くない人を叱ったりはしないし、その意図は伝わってなかったよと思いました。
短めですが、今日はここまで。チームロザリンドが始動しました。




