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悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!  作者: 明。
ロザリンド7歳・ツンデレと日常編

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どっちの気持ちもわからなくもない。

 ディルク視点になります。

 ロザリンドを屋敷まで送る。俺の婚約者は安定の可愛らしさで俺との別れを惜しんでくれた。


「また明日」


 額にキスをすれば、愛らしく微笑む。そう、また明日。名残惜しく思いながら、明日は何をしようかと考えて…騎士団本部へ向かった。通いなれた道を歩き、通いなれた門をくぐる。


「あれ?ディルク?」


 同期のクルトンが話しかけてきた。彼は獣人である俺を差別しない、稀有な奴だ。


「やあ」


「復帰すんの?」


「いや、しないよ」


 苦笑すると、あからさまに肩を落とすクルトン。申し訳ないが、もう侯爵になるって決めたんだ。


「ちぇ~。あ、そういやさぁ、俺、今日はスゲー人に会ったんだぜ!」


「へー、誰?」


「ナイト・ヴァルキリー様!」


 顔がひきつっていないか不安だが、大丈夫だったらしい。気がつかなかったが、クルトンも居たらしい。その後、クルトンはナイト・ヴァルキリーの素晴らしさを語ってくれたが………正直勘弁してほしかった。


 多大なる精神力を消費して、ようやく騎士団長室にたどり着けた。なんで皆そんなにナイト・ヴァルキリーが好きなの!?クルトンが話してたら、次々と他の騎士達も賛同して………いや、もう考えるのやめよう。ナイト・ヴァルキリーには2度とならないと心に決めつつノックした。


「入れ」


「失礼します」


 つい騎士の礼をとった自分に苦笑した。


「何か用か?」


「用といいますか…アドバイスをしようかと」


「アドバイス?」


「マーサさんについてです。マーサさんはロザリンドに似ていて、必要なら自分を悪者にしてでも大切な者のために動く女性です」


「そうなんだ!マーサは最高だ!」


 ごめんなさい、団長。これから俺は酷いことを言うかもしれない。


「だから、このままならきっと、団長はマーサさんから嫌われます」


「…………なぜだ」


 団長は青ざめながらも続きを促した。


「団長が気持ちを押しつけているから。気持ちはよく解ります。いえ、俺の方が獣人だからもっと衝動が強いはず。好きだからって相手を尊重しない関係は、決して続かないと思います」


「………ああ…………そうだな」


「でも、今ならまだなんとかなると思うんです。マーサさんをよく見て、考えてください。気持ちを押しつけるだけでなく、どうしたら喜ぶか、何を好きか、自分と進む未来をどう考えているのか。マーサさんと結婚して、ずっと側に居るつもりなら、絶対にやらなきゃいけないことです」


「………ああ、そうか。考えてみよう」


 団長は頷いてくれた。


「俺も間違って、ロザリンドに嫌いと言われた事がありますよ」


「………………は?嬢ちゃんが!?嘘だろ!?」


「本当です。彼女の意思を無視して、自分の本能に負けて、他人を傷つけ…殺しそうになったんです」


「…………………そうか」


 まあ、謝りに行ったら土下座されたりしたけど、そこは省いていいよね。


「それから、あまり好き好き言われるとマーサさんは余計素直になれなくなりますよ。本当に好きだなぁって思った時だけにするといいです。嬉しいんだけど、恥ずかしいんですよ」


「わかった」


「あとは…贈り物は高価すぎると嫌がられます」


「そうなのか!?」


「その辺り、マーサさんはロザリンド寄りだと思いますよ。素朴な贈り物や、心がこもった品が喜ばれます」


「例えば?」


「綺麗だと思った野の花とか、ちょっとした小物とか、手づくりの品とかですね。団長木彫りが得意でしたし、可愛い髪留めとか作ったら喜ぶのでは?野の花でも喜ばれますよ」


「わかった。やってみよう」


「俺からの話は以上です。応援してますよ、団長」


「ああ、ありがとう」


 団長はいい笑顔をしていた。お節介とは思いつつ、うまくいくといいな。そして、俺は騎士団をあとにした。薄く気配を感じる。路地裏に入ると、気配の主を呼んだ。


「オルド」


「…なんだ」


 オルドは上から降りてきた。いつのまにかいなくなっていたが、彼は気ままだからとロザリンドは気にしていなかった。


「なんで俺の後をつけてたの?」


「…護衛だ」


「………変身セットを試したかったとか?」


「う」


 どうやら図星らしい。


「オルド、俺の頼みを聞いてくれたら稽古相手になってあげる。俺なら変身した状態で全力を出しても大丈夫だし」


「やる!」


 いや、内容ぐらい確認しなよ。まぁ、大した頼みじゃないけども。







 喫茶店でお茶をしていたら、オルドに呼んでもらった人が来た。


「…お待たせいたしました」


「すいません、マーサさん。いきなり呼び出してしまって」


「いえ、何のご用でしょうか。お嬢様のことですか?」


「いえ、マーサさんについてです。単刀直入に言います。好きと言われて照れ臭いのは解ります。でも、あんな風に拒絶されたら団長だっていつか離れてしまうかもしれません」


「…そう、ですわね。もとよりルドルフと私では、つり合いがとれていない…」


「マーサさん、団長はつり合いがとれてるからマーサさんが好きなんじゃないです。マーサさんだから好きなんですよ。俺もロザリンドとつり合いがとれてなくて悩みました。でもロザリンドだって同じです。そんなのどうだっていいんですよ」


「私は…ならどうしたら…」


「少しだけ、少しずつ素直になってみてください。きっと喜びますよ。恥ずかしいのを自分が我慢するだけで、相手が笑ってくれるなら嬉しくないですか?自分が相手を幸せにできるなんて最高だと思います」


「私が、ルドルフを幸せに?」


「そうです。したくないですか?」


「したいです!」


 マーサさんははっきりと告げた。


「では、そうですね。相手のしてくれた事を誉めるとか、嬉しいとか…感情を伝えるあたりからがいいと思います。いきなり好きっていうのは難しいです。手紙もいいと思いますよ。気持ちを整理できますし、言うよりは失敗しないと思います」


「手紙…やってみますわ」


「はい。応援しています。ロザリンドも貴女方が幸せなら喜びますから」


 大好きなつがいの笑顔を思うと、それだけで幸せになれる。


「お嬢様が…頑張りますわ。ありがとうございました、ディルク様。でも、何故先ほど話してくださらなかったのですか?」


「…俺もなかなかロザリンドに好きを返せなかったからね。内緒にしておいてください」


「かしこまりました」


 マーサさんは穏やかに微笑んだ。




 喫茶店で別れ、しばらく歩くと腰に誰かが抱きついてきた。


「ロザリンド?」


 まさか会話を聞かれてた?オルドがマーサを呼び出した場面を見ていたらしい。


「マーサと何話してたの?」


「体験談を少し…ちょうどロザリンドに会いたかった」


「へ?」


 ヒョイッと抱き上げて、抱きしめる。首もとに顔を埋めて匂いを堪能する。いい匂いだなぁ。このまま連れて帰りたいなぁ。


「ちょ!?街中!くすぐったい!ひあああああ!?」


 アワアワするロザリンドに、もう少し匂いを堪能したかったがやめることにした。ロザリンドをおろして、手を繋ぐ。


「送るよ」


「うう…誤魔化された」


 といいつつ、誤魔化されてくれる辺りがロザリンドだと思う。


「ロザリンド、大好き」


「わわわわ、私も大好き!」


 大好きと言えば、笑顔で返される。この上なく幸せだ。ロザリンドを送りながら、繋いだ手も…彼女が居るだけでたまらないぐらい幸せになれる。


「また明日」


 明日も約束がある。別れるのは寂しいけど、それもまた会えると思えば我慢できるし、会ったときの喜びがある。


「ロザリンド、俺ね、君に会えて幸せだよ。生まれてきてくれてありがとう」


「ふあ!?」


 耳もとで囁くと、彼女は真っ赤になる。可愛いなぁ。ちゅ、と耳、唇にキスをして帰宅した。


 ちょっとキザだったかな?後日ロザリンドに聞いてみたら、彼女は真っ赤になってプルプルしながら、


「ディルクがイケメン過ぎて辛い」


 と言っていた。ロザリンドは嫌じゃなかったみたいでホッとした。いけめんは、カッコいい男性だと言ってたから、多分誉められたんだろう。


 とりあえず、最近の悩みは、団長とマーサさんが経過報告に来ることだ。マーサさんの内容は可愛らしいからまだいいけど、団長は閨事情まで話さないでほしい。ロザリンドにまで話していると発覚した時は、団長の執務室に押し入り本気で説教して、団長が気絶するまで鍛練をした。


 目撃していた騎士がしばらくの間態度がおかしかったのは、気にしないことにした。


「あ、おはようございます、ディルク様!」


「え?あれがディルク様?」


「団長ボコボコ事件の!?」


 ボコボコにはしてない。体力が尽きるまで鍛練を強制しただけだ。微妙に怯えられているような……………………気にしないことにした。

 ディルク視点になるだけで、コメディとギャグがうすれる不思議。


 ディルクはスルーを覚えました。


 ちなみに騎士さん達はビビりつつも団長ボコボコとか、かっけぇ!と思ってます。団長の号泣は…彼の片想いは騎士団のなかでもはや常識のため、団長かわいそうぐらいにしか思われてません。

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