竜のお願い
母の妊娠発覚から数日。私は母のお腹に耳をあてていました。まだ3ヶ月だからお腹も目立ちませんし、音もしません。
「お姉ちゃんだよ~」
「うふふふ…」
お腹の子に話しかける私。私を撫でる母。
「母様、私赤ちゃんのために服を作りました!」
この世界では赤ちゃんは布にくるむか着物風の服を着るかしかない。だから、私はロンパースタイプの服を作りました!むろんボタンはパチンと留めるタイプです。オモチャもリンの世界のものを参考に各種揃えました。
「あらあら…うふふ」
「…なんか初孫を喜ぶおじいちゃんみたいだね…」
兄は呆れた様子です。
「いいじゃないですか!一緒にめちゃくちゃ可愛がりましょうね、兄様!」
「…そうだね」
苦笑しつつも同意をいただきました。兄だって、母の体調を気遣って滋養のある薬草やら、妊婦に必要な栄養を調べてダンに指示したりしてるくせに。兄も外に出さないだけで新しい家族を楽しみにしているのです。ちなみに父も赤ちゃんグッズを大量購入し過ぎて母に叱られてました。ちなみにグッズは大半を孤児院に寄付しました。
そんなやりとりをしていたら、コウが来た。
「お姉ちゃん、お願いがあるんだ」
珍しく悩んだ様子のコウから相談されました。
今現在、私たちはレイデ火山に来ております。コウのお願いは、ご両親に会いたいと友達を紹介したいということでした。
さすがにうちの子供達全員は無理なんで、ジェンドとオルドを連れていくことに。彼らなら自衛ができるし、ジェンドにはいい経験だとジェラルディンさんからもOKいただきました。
今回のメンバーは私、ディルク、コウ、ジェラルディンさん、ジャッシュ、ラビーシャちゃん、ジェンド、オルド。レイデ火山は活火山だからなんとなく他より暑い気がする…例によってコウが居るから魔物はたいして出てきません。
それよりも気になるのは、山全体からよくない気配がすること。皆も感じているようで、ピリピリしています。
水の精霊王の件もありますし、火の精霊王にも何か起きているのかもしれません。
目指すはさすがに山頂。炎の神殿です。空から行けると楽だったのですが、ゲームだと山頂は結界があるから外からだと歩くしかない。転移は可だから1回行けばなんとかなるんだけどね。
「…ロザリンドが出かけると必ず何かが起こるし、気を引き締めていこう」
全員だまって頷いた。
「待って!人をトラブルメーカーみたく言わないで!」
「別にロザリンドが元凶だとは思ってないし言ってないよ。ただ、俺は以前騎士団の討伐依頼でここに来たけど、空気がおかしい。何かが起きているのは間違いないと思う。さらにロザリンドは妙に事件に巻き込まれるから、気をつけておくべきだと言っただけ」
「…そっか」
鬼が出るか、蛇が出るか…山頂では何が待っているのでしょうか。警戒しつつ進むのでした。
今日は短めです。
珍しくやや真面目なターンでした。




