世界一のパパ
父の腱鞘炎を治療したら、対抗したいのか英雄が言い出しました。
「わははははは!子供達よ!高い高いをしてやるぞ!」
「わーい!」
「おとーさん、カッコいい!」
「…おお…」
マリー、ジェンド、オルドが大人げないオッサンのもとに集まりました。ヤキモチ妬くなよ、オッサン。
「あれ?ポッチとネックスは行かないの?」
「…………(こくり)」
「うん。ジェンドパパの高い高いはじょーきゅーしゃ向けなんだ」
「は?」
ポッチの説明の意味はすぐに理解するはめになった。
「きゃははははは!」
「ぎゃああああ!?怖い怖い!落ちる落ちる!」
あれは高い高いではありません。投げてます!確かに上級者…というか、身体能力が高くないと危険です。見てるこっちがハラハラします。
「あのね、僕とネックスでパパさんにお手紙書いたの」
「………………(こくり)」
もじもじしながら二人は父に手紙を渡した。
「………そうか、ありがとう」
父は嬉しそうです。どれどれ?どんなお手紙…
「上手い!ポッチが描いたの!?スゴいなこれ!」
父の似顔絵に、いつもありがとう、だいすき、おしごとおつかれさまと書かれている。絵が肖像画か?というほど上手すぎて、拙い字とアンバランスになっている。
「…額に飾るか。ポッチ、ネックス…本当にありがとう」
無表情に見えるが、かすかに笑っている父。優しくポッチとネックスを撫でた。
「えへへ。あのね、パパさんに引き取ってもらって、僕らすっごく幸せなの。いつも、たくさんありがとう」
「………(にこり)」
「パパ大好き!パパは世界一カッコいいお父さんです!!」
「ロザリンド…!ポッチ、ネックス…お前達は血が繋がっていなくとも、大事な私の子供だよ!」
父が泣いた!?全員まとめてぎゅーされました。
「お嬢様…サービスし過ぎ」
「サービスじゃない!私が連れてきた子達にも分け隔てなく優しいなんて、素敵じゃないですか!素直に誉めただけですよ!我が家のパパは世界一です!」
「マリーもパパさん好き!ぎゅーするの!」
「僕も!」
「…………混ざっていいか?」
マリー、ジェンド、オルドも戻ってきました。オルドもってスゴいな!いつの間になついたの!?
父は照れつつ皆にハグをしています。ちなみにやはり表情は変わらないけど耳が赤いので照れてます。多分。
「にゃふふ、パパはナデナデ上手なの~」
そしてマリーはいつの間にか父にずいぶんなついている模様。私より娘らしいな…
「くっ…ルーファス殿、どちらが父として優れているか勝負だ!」
いや、勝負にならなくね?どうやって優劣つけんの?愛息子をとられて拗ねたオッサンは、わけのわからんことを言い出した。
「受けてたとう」
父、受けちゃいました!えええええ!?とりあえず、兄も急遽呼んだら面白そうだからとミチェルさんも参加するらしいです。大丈夫か?
「さあ、世界一のパパは誰だ対決!司会はラビーシャです!解説は…」
「…アークです」
「………ゲータです」
「ぱっとしない従者コンビでお送りします」
「「オイ!!」」
ツッコミも息がピッタリですね。
「審判は公平にということで、悪戯大好きツンデレスイ君とわりと常識人なハル君です」
「…泣かすよ?」
「まあまあ…皆がんばれ~」
「あ、俺は投獄されてて体力弱ってるから天啓(植物)ありでいいか?」
ミチェルさんが挙手した。
「「ありで」」
「…魔法はありか?」
父が挙手した。
「「ありで」」
「…というか体力の化けもの(ジェラルディンさん)がいるから、ないと勝負にならないでしょ」
「「なるほど」」
辛辣なスイに頷く父とミチェルさん。どうでもいいが、ミチェルさんとジェラルディンさんも幼馴染らしいです。
「さて、初戦は子供の危機を救え!お父さんはいざって時に子供を抱えて逃げなければなりません!というわけで、お嬢様を連れて逃げてください!」
順番はくじ引き。最初はミチェルさんです。
「それでは、よーいどん!!」
正直、私は油断していました。相手は非常識さんの友人で、投獄中に苔を改造する猛者です。また、ジェラルディンさんを知りながら、面白そうだからと参加した剛の者だったのです。
「ぎゃああああ!?」
まさかのサボノバさんを使ってきやがりました!!サボノバさんことレジェンディア=キングシャボテンの機動力は魔物でも最高ランクです。抱えられる私は、風になりました。
「きゅう…」
急激な移動で酔った…と思ったら治りました。耳飾りの状態異常無効化が発動したようです。ミチェルさんは人類には不可能じゃね?という値を弾き出しました。
「はっや!サボテン速い!?」
「レジェンディア=キングシャボテンはSSSランクで植物系魔物でも最高の速さっすから…お嬢様は大丈夫か?」
ゲータは兄の助手を兼ねてるだけあって、知っていたようです。あまり大丈夫じゃなかったよ。
「兄さん、解説ありがとうございます!アークさんはただの感想ですね」
「うるせー!」
次は父です。
「…魔法ありなら、走らなくても…」
私のヒントを分かってくれたらしく、父は転移をしました。
「まさかの転移!確かに走らねばならないというルールはありませんでした!審判の判定は!?」
「「あり」」
「ありということで、暫定一位は旦那様になりました!」
最後はジェラルディンさんです。嫌な予感しかしない。
「変身!」
ジェラルディンさんはウルファネアマスクに変身しました。身体強化をプラスしたようです。
「よーい」
!?魔力が急速に下肢に集中している!や、やばい!!
「どん!」
爆発的な、まさしくロケットスタートでした。音の壁を越えた気がしました。サボノバさんとは比べ物にならないほどのGがかかったと思ったらゴールしてましたよ。とっさに結界をはってよかった…あまりにも急激な移動で頭がくらくらします。目が回る……
「では、結果発表!」
1位➡父
2位➡ミチェルさん
3位➡ジェラルディンさん
タイム的にはジェラルディンさんが速かった。しかし、この種目は『子供を逃がす』のだから、移動後私にダメージがあったものは減点された。そのためこの結果となった。
この種目、なんで私を運ばせるんだと言ったら『私なら不測の事態が起きても自力でなんとかできるから』と返答されました。ポッチなんかの非戦闘員が運ばれてたら大惨事になっていたかもしれません。というか、かけっこ的な種目で不測の事態が予測されるって……今後に不安しかありません。以降がマトモな種目であることを祈ります。
正直、どうしてこうなったとしか言いようがありません。しかし書いてて楽しいです。
長くなりそうなんでいったん切ります。




