占いとカエル
お姉さんは私達の解答が面白かったらしく、本来なら全問正解の景品なのよとチケットをくれました。なんでもお姉さんのお姉さんが高名な占い師さんだそうで、並ばず優先的に占ってくれるらしい。
「ちなみに、どっちが先に好きになったのかしら?」
「私です」
「俺です」
「え?」
「「……………」」
「ディルク、私は出会う前から好きでした」
「でもそれ、正確には俺じゃないでしょ?だから俺が先」
「いいえ!最初は憧れでしたが、すぐ好きになりました。熱烈アピール、ずっとしてました!」
「お、俺だって!」
「ふは、仲良しね」
お姉さんに笑われてなんとなくばつの悪い私達。お姉さんにお礼を言って別れました。
せっかくチケットを貰ったし、と場所をお姉さんに聞いていってみたら……
「すごいね」
「……帰る?」
長蛇の列でした。どのぐらい長いかというと、ブルジョワジーなネズミーランドの3大マウンテン並の行列です。基本小心者なロザリアと日本人のリンは、この行列をスルーするのは…別のとこ行こうかなと考えていたら、案内係のお兄さんが来て案内されてしまいました。
お香をたいているのか、不思議な香りがします。いかにもな占い館。黒や紫をメインに、星空をイメージしたデザイン。
「こんにちは。何を知りたいのかしら?」
先ほどのお姉さんとは双子なのだろうか。そっくりです。別に占ってほしい事はない。だが、デートで占いといえば…
「彼との相性を占ってください」
「わかったわ。知りたいことを念じながらカードを混ぜてね」
ディルクとの相性…ディルクとの相性…と念じながら混ぜた。カードはタロットによくにていた。
「……………まあ。すごい…もう一回やってみてもいいかしら?」
お姉さんはそのあと2回やり直したが、カードはまったく同じだった。ディルクは不安げにしています。カードを見る限り、悪い結果ではなさそう。
「すごい…初めてだわ!お嬢さん達は運命の恋人よ!何があろうと結ばれ、添い遂げるわ!長く占い師やってるけど、初めて見たわ。最高の相性よ!」
「運命の恋人…」
ディルクは乙女のようにほほを染めています。良かったね。私も嬉しいです。
「あ、でもすれ違いや誤解の暗示が未来にあるわね。きちんと話し合うことが大切よ。相手のためでも、ね」
「はい、わかりました」
「…あなた方の未来も占ってみていいかしら?」
「…かまいませんが…」
無理じゃないかな?と思いつつ、カードをディルクと混ぜた。
「!?」
「…これは」
「あ、やっぱり」
青ざめるお姉さん、驚くディルク、やっぱりなぁと思う私。
カードは全て真っ黒になっていた。カードに魔法がかかっているのか、お姉さんが天啓もちなのかは知らないが、魔に関わる私達の未来は予知も予測も不可能だろう。
「これは占い不可能ってことですかね?」
私は黒いカードを手に取りヒラヒラさせた。
「ええ…そうね。私には無理だわ」
「ディルク、大丈夫。ロザリアの未来予測が出来ないのと多分同じだから。それに、何があろうと私は私の望む未来をゲットしますから」
不安そうなディルクに微笑んでみせた。
「…そう、だね。俺達は今そのために動いているんだ」
自然と互いの手を取り、コツンと額をあわせた。
「私達が一緒なら大丈夫」
「俺達が一緒なら大丈夫」
重なった声に、笑みがこぼれた。
「そうね。予測できないだけで、あなた方の未来はきっと幸せに溢れているわ。これをどうぞ」
お姉さんに綺麗なカードをいただきました。
「幸せのお守りよ。悪いものを祓ってくれると言われているわ」
お札みたいなものかな?私とディルクの分をいただき、お姉さんにお礼を言って別れました。
時間もちょうどいいので、ディルクとランチです。町の公園の芝生にシートを敷いてお弁当を準備します。さりげなく手伝うディルクにこっそり胸キュンしつつ…準備完了!
「ディルク、あーん」
いつも通りディルクのお膝でディルクに食べさせます。
「ロザリンド、あーん」
公園に他に人がいないせいか、ディルクはデレデレです。はぅ…幸せ!ご飯を幸せそうに食べるディルクを間近で見る至福…朝から頑張ってこしらえたかいがあります!
「ロザリンドのご飯…」
ディルクはご飯と幸せを噛み締めています。この瞬間のために生きてる…と言っても過言ではありません。
「私、幸せそうにご飯を食べるディルクを見ると幸せです」
「…そうなの?」
「はい。作ってよかったと思います。ディルクが笑っているだけで幸せなんですが、それが私のご飯によるものだと思うと、もっと幸せです。おいしそうにご飯を食べるディルクが大好きです」
「…あ、あう………ロザリンドは俺をどうしたいの?そ、そんなこと言われたらせっかくのご飯の味がわかんなくなる…」
ディルクは首まで真っ赤です。いや、どうしたいのと言われたら…
「デレッデレに甘やかしてかまいたおして、たまにいじりたいです。あと、たまに甘えたい」
「いじるのは要らないよね!?」
「私のライフワークです」
「今すぐ変更して!」
「いじられて嬉しいくせに」
「う…………………たまにで」
恥じらいながらも肯定した。可愛いなぁ…
「承りました。はい、あーん」
「…おいし…!?」
「ふふ…ごちそうさま」
不意打ちで、ちゅーしてやりました。ディルクは真っ赤になって口をもぐもぐしています。
「もう…!」
ディルクが口に入れてたご飯を飲み込んだ直後、視界が反転した。
「わぁ!?」
や、やり過ぎた!?押し倒されてる!!い、いくら人がいないとはいえ外ですよ!?しかも私は結界をはってないわけで……
「んぅ………!?」
き、キスが深い!か、体の力が抜ける………まずいまずいまずい!
「ま、待って……」
せめて…せめて結界を………しかしディルクは舌なめずりをして…セクシー…ではなく!聞いてくれません。
「ロザリンド、可愛い…」
「ひょわああああ……」
いやいや、まずいから!これ以上はまずいと思いつつ、結界をはる余裕なんぞない。だ、誰か助けて!と思ったら…………
「やっと見つけたぞ……………!?な、何をしてるんだ!?ハレンチな!き、貴様ロリコンか!?」
カエルよ、助かったけど間が悪いよ!
「………………」
あ、ディルクがキレてる。さりげなくロリコンとか言ったし……まずい!カエルが八つ裂きにされるかもしんない!
「た、助けて!ウルファネアマスク、ウルファネアシャドウ!!」
けっこう本気で助けを求めました。カエルがやばい!私ではなくカエルを助けて!オッサン達はディルクの様子がおかしいことに気がついて、地味にビビっている。
「こ、来ない!?」
「ふはははは、奴らはいたいけな子供達に捕まっている!今ごろ楽しく遊んでいるはずだ!」
「くっ…!」
どちらもわりと子供好き…さすがに子供をふりきってはこられないだろう。つーか危険なのは自分だと理解しろ、カエル!!
「ご心配には及びません!」
「ウルファネアシャドウ!?」
「………私は子供に人気がないですから、ちち…ウルファネアマスクに任せてきました」
めちゃくちゃ哀愁漂ってるウルファネアシャドウ。う、うちの子達は君になついてるからね!ジェラルディンさんも力技遊びしてくれるからなついてはいるけど、君のよさである細やかな配慮を子供達も私もよくわかってるよ!
「う、ウルファネアシャドウの良さは初見でわかりにくいだけだよ!私はいつも感謝してるからね!」
「お嬢様…」
「カエルさん達は頼みました!ディルクは私がどうにかします!」
「は?」
ついていけてないカエル達。
「私のつがいがイチャイチャを邪魔されてキレてるんですよ!死にたくなければ逃げなさい!私も流血沙汰はごめんです!」
「!?」
状況を理解したカエル達は一斉に逃げ出した。逃げるのが遅いよ!殺気に気がついて!
「………ころす」
「待って待って待って!」
「ちょ!ディルク様!?ナイフを投げたらダメです!」
カエル達を庇うジャッシュ。なんとかナイフを叩き落とす。
こ、こうなれば奥の手だ!!
「ディルクぅ……デート、私も楽しみにしてたの。このお弁当もディルク喜んでくれるかなって、ディルクがおいしいって特に喜んでたおかずばっかり詰めて……だ、だからディルクに全部食べてほしいの………だめ?」
「くっ!!」
「ぐはっ!」
こうかはばつぐんだ(本日3回目)
どうでもいいが、ジャッシュもお嬢様可愛い…ディルク様羨ましいと悶えている。そして内心、私も甘えっこな口調が恥ずかしくて悶えている。
ディルクは丸まって悶えている。とても嬉しい。このままカエルを忘れさせてしまおう。
「ディルク、あーん」
「あ、あーん」
「おいしい?」
「…うん」
はにかんだディルクの笑顔に、私もにっこにこだ。
「ディルク、私幸せ」
「うん…俺も」
空気が読めるウルファネアシャドウは姿を消し、私達は幸せなランチタイムを過ごしました。
安定のらぶらぶでした。
まだまだデートは続きます。ようやくデートらしさが出せましたかね?




