仔猫とおやすみなさい
ラビーシャちゃんも下がり、さて寝ようと布団に入るとかすかにカリカリと何かを引っ掻く音がした。音に意識を集中する。
カリカリ…カリカリ…にゃーん……ふにゃーん………
音を認識した私は素早く起き上がり、客室のドアを勢いよく開いた。するとコロリンと愛しの仔猫が転がり込んだ。いや、豹だけどにゃんこにしか見えない。ふらふらと私の足元にくると丸まってしまった。
この私の内心をどう表現したらよいでしょうか。ディルクったら、私の匂いを辿ってきたの?あんなに可愛い声で私を呼んでたんですね?そして、私を見つけて安心して寝ちゃったんですね。
か わ い い
ふおおおおお!!たぎる!萌える!!君を好きだと叫びたい!!この素晴らしさを後世にまで伝えたい!!
えーいどーりぁぁぁぁん!!(意味不明)
しかし、私はこの奇跡のもふエンジェルを抱っこして一緒に寝るという使命があるのです。叫んだら起きちゃうかもしれないし、ディルクを置いて走りに行くわけにもいかないし、そもそもカーラーついてるから外にも行けない、転がれない。せめて、この迸るパッションを鎮静させるために転がりたかった…!
「ふみゅん…ろじゃりんど……しゅき…………」
「○△◻☆↑↑↓↓↓LRLRBA!?」
はっ!!可愛いディルクによる可愛いすぎる寝言に何故か隠しコマンド入力が(混乱)
幸い私の叫びでディルクは起きませんでした。
そっとディルクを抱き上げてベッドに運ぶ。まぁ、明け方魔法をかけてとなりに運べばいいだろう。カーラー姿はちょっと間抜けだから見せたくない。
「はぅ…可愛いすぎる…」
ベッドに下ろすと私にピッタリくっついて離れません。その心地よい温かさに、私も眠ってしまいました。
朝、目の前が肌色でした。鍛えられた筋肉に包まれています。朝から眼福です。拝んでおこう。とりあえず腕から抜け出そう……………………がっちりと固定されてます。これが噂の人間シートベルト!?
「ふぬぅ!」
頑張ってみるが、それでも抜け出せない。
「仕方ない…」
そっと耳元でディルクにささやきました。
「ディルクのえっち…」
「!?」
寝ぼけたディルクの腕が外れました。今がチャンス!!
「ディルク、仔猫になって」
「ん…」
そして仔猫を隣室に移したのですが………
「ふやーん…にゃーん……」
悲しげな声で鳴かれて動けない…!なんて切ない声で鳴くんだ!しかし、間抜けなカーラー姿を見せるわけにはいかないし、お弁当の仕込みやお出かけ準備をしなければ!
「また後でね。大好きなディルク」
「みゅう…」
ディルクにちゅっとキスを落として自分の客室に戻った。部屋にはラビーシャちゃんとジャッシュが待機していた。
「「おはようございます、お嬢様」」
「おはよう。ジャッシュもなの?」
「悔しいですが、髪を結う技術はジャッシュさんが上ですから。お嬢様は本日デートというある意味勝負の日なのです。ならば自分の感情は二の次でお嬢様を完璧にさらに美しく輝かせるべきです」
「ラビーシャちゃん…」
本当にできたメイドです。
「私も精一杯役割を果たさせていただきます」
私はデートに行くはずなんだけど、戦場にでも行くみたいだね…まぁいいけど。
着替えてヘアメイクとお化粧を施された。あれだ!今日の私は可愛いのよ的な!
「お嬢様、綺麗」
「ええ、これならばディルク様も見蕩れるでしょう。大変お綺麗ですよ、お嬢様」
「ありがとう」
巻き髪を活かして半分下ろした大人っぽい髪形。白を基調に青のグラデーションが鮮やかなドレスワンピ。少女趣味すぎないが甘めで、ディルク好みのはず。リボン小物類もワンピースに合わせてあり、あつらえたような…………………よく考えたら私、こんなワンピース持ってなかったよね?
「ラビーシャちゃんや」
「はい」
「このワンピースの出所は?」
「ディルク様からの贈り物です。たまに一式届くんですよ。最近お嬢様に似合うものをセットでこっそり贈るのが趣味なのかなってマーサさんと話してました」
「……おうふ」
知らぬ間に貢がれていたようです。あまりたくさんはいらないといっておかなきゃ。
「どちらかと言えば…ディルク様は『趣味・お嬢様』なのでは?」
「それだ!」
「どれだ!意味わかんない!」
ジャッシュの言葉に納得するラビーシャちゃんと、納得いかない私。
「ディルク様はお嬢様の事を考えていたり、お嬢様の事を話したり、お嬢様と居るときが楽しそうですので、間違ってないかと」
「う…」
他人からみてもとか………う、嬉しいけど恥ずかしい!
「お嬢様も『趣味・ディルク様』ですけどね」
「納得した!」
趣味はディルクを愛でることと観察することです!
「「では行ってらっしゃいませ、お嬢様」」
できるメイドと従僕に見送られ、私はとりあえず朝ごはんを食べに行くことに。今日のデートが楽しみです!




