神様と意外な事実
さて、すっかり大人しくなった残念な男女。女性は女神ミスティアで、男性はインジェンスだそうです。この世界の神様大丈夫なのか?いろんな意味でさぁ。
闇様とスイも帰りました。闇様は帰りは送るからちゃんと呼ぶのだぞと私を撫でていきました。闇様、私をいくつだとお思いですか?聞きたかったが答えが怖かったのでやめました。闇様達を見送り、改めてシヴァに向き合った。
「そういえば、シヴァ」
「なぁに?」
「あのゲーム…『ルーンアースオンライン』と『素敵な恋しちゃお☆胸キュン☆ときめきマジカルアカデミー☆願いを叶える贈り人☆』ってシヴァが作ったの?」
「は?」
「うん。そーだよ」
「はああああああ!?」
やっぱりか。シヴァは私が未来を変えていると言った。つまり、ある程度未来を予測できるか知っているということだ。彼方さんはびっくりして叫んでいる。
いや、ちょっと考えれば分かるんじゃない?この世界はあくまでゲームに似ている…いや、この世界をモデルにゲームが作られたと考える方があり得る話だ。
「上手いシステムだよね。好きなゲームの世界に行けると言われれば行きたがる人間もいるだろうし、何より基礎知識はゲームで自然に刷り込まれているから説明も少なくてすむ」
「でっしょ~!?僕天才だよね!」
残念な神様達がそんな手段が…しかしゲームとはなんだと首をかしげている。後でシヴァに聞いてくれ。私は面倒だから説明しない。
「しかし、何故に乙女ゲーム?」
「ん?魔が差した」
そうなのか。確かに魔が差したとした言いようがない攻略対象だったけど。
「作ってたゲームがRPGばっかりだったからさぁ、ニュージャンルに挑戦しようとして失敗した感が否めない」
「攻略対象の人選からして失敗だと思いますよ。なんで、なんでディルク様が攻略対象じゃないんですかぁぁぁ!」
「え?気になるとこそこなんか?そこ重要なの?」
「そこなんだ。好きだね…」
呆れた様子の彼方さんとシヴァ。
「最重要事項ですよ!ディルク様の元に通いすぎて何回ノーマルエンドになったことか……!」
「「……………」」
とても残念なモノを見るような目で見られました。解せぬ。スレングスさんはよしよししてくれました。天使がいた。ゴツいし神だけど。
「…じゃあ、ディルクをメインヒーローにしてあのゲーム作り直す?」
「…え、ぜひお願…いや、ダメ!ディルクは私だけのモノだから他人が口説くなんて…!」
「どっちなのさ」
ゲームでディルク様を攻略したい!しかし、シヴァがそれを売りに出してしまったら、ディルク様が……!
「………やっぱりいいです」
「泣くほどか」
私は泣いていました。見たかった!見たかったが、私以外といちゃつくディルク様は見たくない!仕方ない…明日はディルクと本気でイチャイチャイチャイチャしよう!ゲームのディルク様より、リアルのディルクだ!あれ?よく考えたら超贅沢ではないかしら……
「なんか浮上したねぇ。しっかし、こんなに面白いのは最後の勇者ぐらいだよ」
ケラケラ笑うシヴァ。
「最後の勇者って?」
「ウルファネアの救世の聖女だよ。超変わった娘だったよ。ずっとお面被ってたし」
「「なぜお面」」
私と彼方さんがまたしてもシンクロした。
「確か…素顔を見せたくないのと眼鏡を守るためかな?」
「…救世の聖女は私と同じ天啓を持ってたんですよね?」
「うん」
「近眼を治せばよかったのでは?」
全員その手があった!という表情をした。気がついて!
「そういえば、救世の聖女が願ったから召喚が出来なくなったと聞いたけど…」
シヴァは昔を懐かしむような表情になった。
「約束したからねぇ。勇者やるかわりに願いを3つ叶えろって言われてさ。彼女は本人の意思なしでは連れてくるなって願ったんだよ」
「「待て」」
私と彼方さんがシンクロした。
「昔は勝手に拐ってたってこと!?」
「お巡りさぁぁん!誘拐犯や!」
大騒ぎな私達。本人の意思ぐらいは確認しようよ!
「昔はどーじんゲームとして僕のゲームを売って、それを気に入った人をルーンアークの民に勇者として引き渡してたんだよね。大概が俺TUEEEEE!とか、ゲームの世界が現実に!とか、異世界ヒャッフーとかって喜んだけど、彼女だけは怒ってた」
「「そりゃそーだろ」」
たまたま先人達が異世界を楽しんだだけで、救世の聖女の反応は至極まともである。
「それに、彼女だけが誰とも違う道を選んだんだよ。今の君みたいにね。悩んで、セオリー通りじゃない道を進んで…神でも予測できない結果を導きだした」
シヴァの笑顔は穏やかで、救世の聖女を懐かしんでいるようだった。
「ゲームの設定や、道筋は起こりえた未来なんだよね?」
「そうだよ。君が関わった者達は大なり小なりその未来を変えた。未来は全く違う方向に進んでいる」
「あ!そういやスイとハルも死ぬ運命だったってどういうことですか!?」
「ああ、ユグドラシルをマグチェリアと共に命と引き換えに救うんだよ。魔力が足らなくて、彼らは死んでマグチェリアも枯れる。ゲームの英雄の墓は彼らの墓だよ」
「セェェフ!私偉い!うちの可愛い子達が無事で良かった!!」
「そしてユグドラシルは嘆き悲しんで…世界中のユグドラシルが活動停止して世界中が食糧難になっちゃうわ、大海嘯が起きちゃうわ、世界が大変なことに」
私達は固まった。先に硬直が解けた彼方さんに頭をぐちゃぐちゃにされた。
「でかした、リンちゃん!」
「予想以上に超大変な事態だったぁぁ!?」
「無意識で世界を救ってたんだよ。というわけで、願いを叶えるから勇者になってくれないかな?」
「だが断る」
「なんで!?」
「厄介な気配しかしない。まだ世界の危機は残ってるしね」
シヴァが苦笑した。
「そうだね。無理強いはしないよ。ただ、僕らも世界が滅んでほしいわけじゃないから、気が変わったら呼んで」
「そうします」
まぁ、気が変わることはそうそうないと思うけど。
「…リン」
スレングスが私にひざまづいた。
「カナタと共に私の天啓を受けてはくれないか」
スレングスの瞳は穏やかで優しい。まっすぐな目に弱いんでやめてほしい。
「彼方さんは仲良しだからさておき、何故私に?ちなみになんの天啓をくれるおつもりで?」
「君に死なないでほしい。私の天啓なら、きっと君の助けになる。天啓は究極武器師、ありとあらゆる武器を使いこなす、常時発動型天啓だ。君のつがいとお揃いだな」
「…お願いします。彼方さんも受けてください」
「ああ。頼むで、スレングス」
「…………(にっこり)」
スレングスは私と彼方さんの右手にキスをした。なにかが入り込む不思議な感覚。優しくて温かい何かを感じた。
「天啓を与えた」
スレングスさんが私達を撫でた。とても嬉しいようだ。
「君達が幸せに暮らすことを願う」
武の神様は、とても優しく微笑んだ。
私はこの時気がついていなかった。なんでも作れちゃう『シヴァの寵愛』持ちが、武器ならなんでも使いこなせちゃう『究極武器師』を持つ結果、さらにとんでもないチートとなってしまうことに。
どうしてこうなった!?
すいません、作者が寝落ちして遅れました。
ようやくゲームの真実がだせましたね。
ジャッシュさんは危うく世界を危機にさらすとこでした。事実を知ったら自殺しかねないのでリンも伝えないでしょう。知らない方がいいこともあるよね!