リンと彼方さんの関係
おふざけ回になります。楽しかったです。
ゆらゆらと夢の中、久しぶりに私達は夢で顔をあわせた。
「いつも一緒に居るのに久しぶりな気がするね」
「そうですね。変な感じです」
ふふふ、とロザリアが笑う。彼女は3歳から7歳の姿に成長していた。
「…リンは若くなってませんか?」
鏡を出してのぞきこむ。確かに若返っている。高校生ぐらいか?
「うん。なんでだ」
「恐らくは融合しかかったゆえであろう」
闇様がゆらり、と現れた。
「なるほど。闇様、今夜はよろしくお願いします」
「…本当にやるのか?」
「有言実行!恩は倍にして返せ、恨みは10倍にして返せをモットーにしています!」
「わかった。我はかまわぬ。協力しよう」
「じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい、気をつけてください。闇様、私の半身をよろしくお願いいたします」
「うむ。まかせよ」
闇様と手を繋ぎ、夢を渡った。
「へー、ここが彼方さんの夢か」
他人の夢に渡るのは初めてだ。彼方さんの夢は柔らかな色合いで柔らかい。雲みたいなふわふわな床と青空が広がっていた。
「ふむ、カナタの意識はあちらだ。帰りたいか、用件があれば呼ぶがよい」
「ありがとう、闇様。感謝してます、本気で!」
「うむ。我もリン達と居るのは楽しいぞ」
闇様はへらりと笑うと消えてしまった。
「彼方さーん」
彼方さんに駆け寄る。
「…リンちゃん?ロザリンドちゃん?か。どないしたん?」
「リンでいいですよ。闇様に夢わたりの魔法で連れてきてもらいました。彼方さんの夢を借りたいんですが、いいですか?」
「あ?かまわんけど、自分のじゃあかんの?」
「ロザリアへの影響が心配なんで、やめた方がいいかなと。今日はまだ神様は居ないんですか?」
「いや、多分そろそろ…」
「やあやあ、こんばんはー。珍しいお客さんだね!」
白くて軽い神様が現れた。
「彼方さん、今日教えた魔法を試しに使ってみてください。的はアレです」
「おう?」
「へ?」
「大丈夫、仮にも神様ですもの!あ、見本いりますよね?ていていていていてい!」
魔法で作った炎の矢をポイポイ投げまくる。
「ちょ!あっつ!?危ないでしょ!ヒトに炎の矢を投げるんじゃありません!」
「まだ余裕ですね?ならば、ていていていていてい!!」
「増えたぁぁ!?」
逃げまどうシヴァ、炎の矢を投げまくる私、固まる彼方さん。なんというカオスでしょうか。
「さて手本は見せましたし、彼方さんどうぞ」
「できるかぁぁぁ!?」
ハリセンで叩かれました。天啓で出したようです。音は派手ですが痛くはない。
「なんでなん!?いきなりご乱心はやめてや!びっくりしたわ!」
「…仕打ちについてはいいんですか?」
「当ててないし、正直毎晩来るのにイラついてたからスッキリしたわ」
「君ら本当に酷いな!?僕神様だよ!?もうちょっと敬いなよ!」
シヴァが苦情を言ってきた。まぁ正論かもしれないけど、私に聞く義理はない。
「私はこの世界の住民ではないですから、聞く義理はないです。死なない代わりにロザリアを助けるという条件を果たしています。敬う必要もありません。貴方自身が私達を侮っていますしね」
「え?」
「慰めるだけの贈り人!?ふざけんな!!私はロザリアを死なせたりなんかしない!私はあの子と生き延びてみせる!」
「!!」
「私も彼方さんと同じなんでしょう?覆せない死の運命の苦痛を和らげる為に喚ばれた贈り人なんでしょう?」
「…否定はしないよ」
白い神様は苦笑した。
「私は抗って抗って、絶対絶対ロザリアと素敵なお婆ちゃんになってディルクと一緒に死にますからね!」
「…いや、本当に予想外だよねぇ。勘なのか、頭がいいのか…あの子にそっくりだよ。何一つ思い通りに動かないんだから…ふふ、ふふふ、あはははは!本当に退屈しないよ!」
「ちなみに、神様に夢の中で拷問したらどうなります?」
「ちょっと待った!何するつもり!?」
「一応ここ俺の夢やから、スプラッタはやめてな?」
「いや、私もスプラッタは嫌いです。苦痛を与えすぎて精神が弱ると消滅したりするかとか確認をしたくて」
「怖いんだけど!多分拷問されても消滅はしないよ!神の力を使いすぎたら消滅はあり得るけど…」
「わかりました」
私はうなずき、彼方さんに話しかけた。
「彼方さん、昼間ロザリア…ロザリンドからこれだけは必ず覚えるようにという魔法を習いましたね?」
「あ?おう」
こそこそと内緒話をした。私から聞いた内容に、彼方さんが心底呆れた表情をした。
「…………そんなアホなことさせるために教えたんか?しかし、正直嫌いではない!」
「あざっす!親分!!」
「行くでぇ、子分!!」
「ア、ア、アァニキィィ!!」
「ウィィース!!」
私達の意味不明なテンションに戸惑うシヴァ。
いやぁ懐かしいわ、このノリ。筋肉はないがマッスルポーズをかます私達。間違いなくアホである。いやいや違う。私達は、通じあっているのだ!!
私達はゲームでずっとこのノリだった。だから、恋愛なんて芽生えるはずもない。我々は純粋な同志である。ソウルフレンドなのである!
「え?え?」
完全についていけないシヴァに、私達は息のあった嫌がらせを開始した。
「「カバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディ」」
彼方さんと私は加速の魔法を使い、高速のカバディを披露する。彼方さんも真顔だ。やるな!彼方さん!
そして、シヴァの前後で唱和した。息ピッタリですよ!やたらハモりつつ、呪文のようにノンブレスでカバディをひたすら唱え続ける。
「「カバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディ」」
「ちょ!怖い!意味不明な上に速い!怖い!真顔だから、なお怖い!!いやああああ!やめてぇぇぇ!!」
シヴァを囲んでしばらくカバディをしてやった。マジ泣きした辺りで許してさしあげました。
「「イエーイ!!」」
ノリノリでハイタッチする私達。
「君達本当は双子かなんかじゃないの!?息がピッタリすぎる!!」
「「いいえ、ソウルフレンドです」」
「仲いいな!」
「「そこは否定しない」」
「いいかげんハモるのやめて!」
「「いや、わざとじゃない」」
本当にわざとではありません。驚異のシンクロ率ですよ。そんなアホなことをしていたせいか、いつの間にか現れた奴に気がつくのが遅れた。
「!?」
背後からいきなり襲われ、とっさに彼方さんを担いで回避した。リンなのにロザリンド並みに動ける辺りが流石夢だねぇ。または融合しかけたから?
「スレングス!?」
私達を襲った筋肉ムキムキの大男さんは武の神様でしたか!咄嗟にいつもの双剣を出して応戦するが、ジェラルディンさん並みに強い!大剣であんな素早く動けるの、反則じゃないかな!?
そして、さらにいつのまにかセクシーダイナマイトな羨まけしからん美女とクールメガネ系イケメンも増えてました。どちら様?
「やめろ、スレングス!」
彼方さんが制止するが、スレングスさんは聞く気がないようだ。くっそ、夢なのに一撃がやたら重たい。さばくので手一杯だ。魔法を使い、距離を稼ぐ。
ちょっと考えたが勝てる気がしない。勝てる気がしないなら、汚い手だね!相手は不意打ちしたんだから、汚い手を使ってもいいよね!
「即興必殺技!ローリングシヴァ!!」
「え!?うわああああああ!?」
説明しよう!ローリングシヴァとは!まず鞭をご用意。シヴァを鞭でぐるぐる巻きにします。そして、独楽の要領で敵に投げつける即興必殺技である!よいこは真似しちゃいけません!
「…!!」
流石に驚いたスレングスさんは大剣を放り投げてシヴァをキャッチ。やった!両手が塞がった上に武器も手放した!瞬時に背後に回り、攻撃を開始した。
「唸れ!我がゴールデンフィンガー!!秘奥義!KUSUGURI地獄!!」
「………!?…………!!あ…あは…あはははははは!!ひゃめ!?あはははははははは!!ひゃははははははは!!やめれあああははははははははは!!」
「うおぉ…」
彼方さんがドン引きしています。絞り出すようなうおぉいただきました。スレングスさんは私のテクで腹筋を痙攣させ、涙と鼻水を撒き散らしてえらいこっちゃなお顔です。武人だろーが暗殺者だろーが、鍛えられない部分だからねぇ。正攻法にこだわらなければ有効な手段ですよね、くすぐり。
「まぁ…スレングスが笑ってるわ」
「うむ。明日は雨か」
謎の二人は頭が残念らしい。そしてシヴァは目を回している。物理的に回したから仕方ないね。
「ひゃめあははははははは!!おねあはははははは!!とめれええええ!!」
「…スレングス、もう攻撃せぇへんな?」
スレングスさんは泣きながらコクコク頷いた。
「リンちゃん、やめてゆうてるし、許したって?一緒に謝るから」
「仕方ないですね。彼方さんに免じて許しますが…次はありませんよ?」
「…!!(コクコク!)」
「で、なんでいきなり攻撃をしたんや」
「……………」
「あー、さよか」
「…声が小さすぎて分からなかったんですが」
「手合わせしたかったんやって。マトモに戦える相手がおらんから」
「なるほど。なら口で言え」
「…素直に言っても断られる、と思った。私はこのような見た目だ…怖かろう」
「いや?別に?」
「「………………」」
冒険者ギルドで荒くれ者のおっさんにたまに絡まれてボコる私が怖がるはずもない。
「リンちゃんは規格外やから…」
「どーゆー意味すか、兄さん」
「胸に手ぇ当てて考えてみなさい」
「……立派な大胸筋でした!」
スレングスさんの胸に手を当てました。
「お前ナチュラルに仮にも神様に対してセクハラすんなや!」
彼方さんのハリセンでしばかれました。いや、立派だったから、つい。
「……………(ポッ)」
「お前も恥じらうな!乙女か!」
スレングスさんもしばかれました。正直すまん。しかし、カッチカチでした。筋肉すごかった。
「あー、手合わせはまた今度ね」
「…………(コクコク)」
この神様は可愛いかもしれん。そして、なんか他の…白い神様と残念な男女が笑いすぎて痙攣しているのだが、どうしたらいいのかしら。
長くなりましたので、切ります。
彼方さんとリンはわりと同類で、ノリがめちゃくちゃいい人種でした。彼方さんはやや常識人ですが、笑いをとるためなら体も張るタイプのお方です。




