良薬は………黒い?
今回も兄視点です。
完成した薬は冷やしたほうが飲みやすいと闇様が言うので水の属性が得意なミルフィリア嬢に冷やしてもらった。
「………これ、本当にロザリィに飲ませますの?」
「……大丈夫なのか?ルーを疑ってる訳じゃないが、これは……」
「………………大丈夫、僕もそう思ってるから」
「「それ大丈夫じゃない!?」」
とはいえ、皆の気持ちが詰まったこの薬。大丈夫!自分を信じろルーベルト!レシピに忠実に、丁寧に作ったんだ!
なんか真っ黒だし泡がでまくってて気持ち悪いけど、見た目が悪いけど大丈夫だ!多分!ロザリンドは飲んでくれる!
ロザリンドが寝ている客室をノックする。まだ辛いのだろう、ディルクによりかかりぼんやりとした様子だ。触れると熱があるのがわかる。ロザリンドがゆっくりと目を覚ました。
「にいさま?」
「これ、皆が材料を採ってきたんだ。魔力酔いの治療薬だよ」
瓶に入れた薬を手渡す。コップよりもインパクトはマシなはずだ。ディルクが明らかに顔をしかめた。
「…なんか黒いしシュワシュワしてるし大丈夫なの?」
僕は目をそらした。僕もそう思う。
「闇様からレシピをもらって忠実に作ったんだ。工程が超面倒だったけど、頑張った。足りない材料は皆で手分けして採ってきたんだよ」
「えええ…私がディルクをもふっている間に!?気がつかなかった!」
「ハルや魔獣達がわからないようにしていたからね」
「だからうちの魔獣さん達が一発芸を披露するとか言い出したのね」
「…何してたの!?」
「結構すごかったよ」
ディルクの反応からして比較的普通の芸だったのだろうか。
「ちなみにスノータイガーの白雪君が綱渡り、カミナリトカゲの上村君は雷で花火みたいにしてた。ウォータースパイダーの水月さんが水芸、クリスタルラビットの栗栖君は人参早食い、ウィンドホークの北条君は風魔法を組み合わせたダンス。パラライズスネイクの真昼さんは連続脱皮してたけど、そこまで体を張らなくてもよかったと思う」
「……そう」
魔獣達もロザリンドが精霊の不在に気がつかないよう必死だったようだ。別に魔力酔いすると精霊は側に寄れないから出かけたことにすれば……いや、不自然だね。ロザリンドの精霊はロザリンドが大好きだから近寄れなくても理由がない限り離れたがらないだろう。
ロザリンドはしげしげと薬を見つめ、当然の確認をしてきた。
「兄様、これの材料は?」
「はい、レシピ」
確認するロザリンド。最初は平然としていたが、少しずつ顔がひきつっていく。
「ストックしてなかったやばい素材があるんですが!皆は無事なの!?これ採りに行っちゃったの!?」
慌てだすロザリンド。特に魔力食いの葉は危険だものね。うっかりディルクと離れてしまい、辛そうにしている。落ち着かせるよう頭を撫でて微笑んだ。自分は危険に率先して突っこんでいくくせにね。
「安心して、皆無事だよ。魔力酔いしてる間、精霊は近寄れないから飲んだら話を聞いたら?」
「そうなんですか?」
「魔力酔い患者が精霊に近寄りすぎると互いの魔力に感応して症状が悪化するんだよ。だからだろうね。放っておいても治るけど治したかったんでしょ。ロザリンドが苦しむのが嫌なのもあるだろうけど」
「…みんな」
ロザリンドの瞳から涙がこぼれた。
「精霊だけじゃないよ。ミルフィリア嬢、シーダ君、マーサ、ラビーシャ、ジャッシュ、ジェラルディンさんも協力したんだ。薬作成にはゲータと、多少トサーケンが貢献したよ。多少ね」
「ミルフィ!?え!?まさか魔力食い採取とか言いませんよね?ミルフィは無事ですか!?」
「無事だったけど………」
そういえば、魔力食い採取チームにいた気がする。伝えるべきだろうか。
「兄様!?沈黙が怖い!!」
「………多分、魔力食い採取チームだった」
「ミルフィィィ!?」
ロザリンドが絶叫した。しまった、言うべきじゃなかったか。
「ロザリンド落ち着いて!ミルフィリア嬢にはロザリンドの武器もあるんだ、怪我もしてなかったんでしょ?」
「…目立った外傷は無かったよ。さっさと飲んで、元気になって精霊達やミルフィリア嬢達から話を聞いたらいいんじゃない?」
そして、ロザリンドは一気に薬をあおった。うちの妹、度胸あるな!?
「甲羅!?」
と叫んだ。何故甲羅?そして盛大にむせたのだった。




