神様達は基本迷惑
彼方さん視点になります。
シヴァはロザリンドちゃんのとこに行ったので眠れる…と思ったら、シヴァは戻ってきました。なんでや。
「帰れや」
『カナタ、カナタ!やっとあの子に会えたよ!僕お礼を言われちゃった!ありがとう、幸せだって!うふふふふ~嬉しいなぁ』
「さよか。良かったな。帰れや。俺は寝たいねん」
『ずるいわよ、シヴァ!あんたはまた綺麗な魂の贈り人と仲良くしてぇぇ!妾だって妾だって、可愛い贈り人が欲しいのにぃぃ』
またしてもウザいのがきてしまった。女神ミスティアである。俺の夢で騒ぎ立てるのはやめてくれないだろうか。ミスティアはシヴァの首をつかんでガクガク揺さぶっている。ヒステリーだが外見は神様なだけあって、作り物めいた美しさだ。完璧なプロポーションと整いすぎた美貌。しかし、キレてて台無しという残念さ。
ミスティアがキレるのはいつものことだ。もう面倒だからその辺で寝てしまおうかと思案していたら、更にウザいのが来てしまった。
『解せぬ。何故シヴァばかりが選ばれる…』
知識の神・インジェンス。見た目は頭良さそうだが、実はアホなんじゃないかと思うことがある。
「お前ら、ほんまなんで俺の夢に集合すんの?帰れや!」
『…すまない、カナタ』
スレングス、お前もか。お前は静かだしいざとなったらうるさい神々を捕獲してどっかに連れてってくれるからいいけどな。
武術の神・スレングス。寡黙ででかくてゴツい。見た目怖いが、優しいし気のいい奴だったりする。
「あー、早めに回収してくれ」
『…少し聞きたいんだが』
「ん?」
『カナタがもし、我ら4柱から天啓を得られるとしたなら、誰を選ぶ?』
「…多分シヴァ」
即答だった。だって俺、戦う系統の天啓を貰っても多分使いこなせないし。いや、シヴァの天啓も使いこなしてるかは微妙だけどな。
シヴァ以外の全員が地に伏せた。聞こえていたらしい。
『何故だ!』
『どうして!?』
『………(涙目)』
シヴァはどや顔をしている。ウザいから張り倒してもいいだろうか。
「あ、今ならスレングス」
『…………!!(ガッツポーズ)』
『妾の方が美しいのに!』
『解せぬ…………』
『え~、なんで~?』
「スレングスはうるさくないし、ええ奴やから。シヴァは来すぎや。ええかげんウザい」
『……………!!(勝利のマッスルポーズ)』
まぁ、スレングスも暑苦しいのだが言うと泣きかねないので黙っていた。沈黙は金なりである。
『くっ!妾の魅力が分からぬとは…このろりこんめ!』
「ロリちゃうし。貧乳が好きなだけやし」
『しかし、何故皆人の子は我らの申し出に同意せぬのか…何故我らを選ばぬのか…』
インジェンスが考えこむ。帰ってやれよ。
「顔が怖いからちゃうか」
『怖いのはむしろスレングスだろう』
あ、スレングス丸まった。お前は確かに見た目があまりにも厳ついから子供に号泣されるけど、いい奴だよ!頭を撫でてやりながらインジェンスに言ってやった。
「目つき悪い、高圧的、美形すぎるからやろ…多分。シヴァが1番普通っぽいねん。白いけど」
『妾は!?』
「美人過ぎ、がっつきすぎ、ギャップが酷い」
『そんな…妾が美しすぎるから!?』
後は人の話を都合いいとこしか聞かないからだろうな。
『も~、カナタ!ぼ・く・の!贈り人のロザリンドちゃんが居なかったら、大事なシュシュリーナちゃんが死んでたかもしれないんだから、もっと僕に感謝してよ!崇め称えてよ~!』
「…は?」
『もう死の運命をほぼ回避して起きない未来になったから話しちゃうけど、シュシュリーナちゃんは人柱になるはずだったんだよ』
「…なんの?」
『ちょ、シヴァ…』
怒りのあまり目が眩む。神々が怯えていたが気にならない。シヴァは俺に気がついていない。
『強いて言うなら世界の?あの子は世界のために死ぬ運命だったから、せめて死ぬまで幸せに過ごせるように君を贈ったんだよ』
「ふっざけんなぁぁぁぁ!!」
『ひぃっ!?』
「シュシュが死ぬ!?お前、マジでふざけんなや!いてこますぞ!!」
『や、だから回避して……』
「だからなんや!」
自分の無力さが腹立たしい。自分の不甲斐なさが腹立たしい。彼女が抱えていたものに気がつけなかった自分が何より腹立たしい!
『あ~、悪かったよ。カナタはひ弱だし、話しても悲しいだけだから言わなかったんだよ……おわびにシュシュリーナちゃんの運命が変わった瞬間を見せてあげるから!』
「ひ弱は余計や…」
目の前に映像が現れる。黒い男を追い回すロザリンドちゃん。何してんだ。
「あはははははははは」
「怖い怖い怖い怖い怖い!真顔でくるなぁぁぁ!!」
ロザリンドちゃんは超真顔で部屋中を走り回る。そうこうしているうちに、ついに黒いのが部屋のすみに追い詰められた。
「カバディカバディカバディカバディカバディ」
「は?」
「カバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディ」
カバディをノンブレスで唱え続ける。無表情の残念な美少女。意味不明かつ俊敏な動きと呪文的なカバディに、黒いのが怯えてる。
「カバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディカバディ」
「い、いやああああああ!!」
そして、絶叫とともに黒いのが倒れた。
「………これ何?」
映像がシュール過ぎてわけわかめだった。どうしてこうなった。
『あの黒い男の中に居る魔をどうにかするため、抑えるためにシュシュリーナちゃんは命を落とす運命だった。でもあの子が魔を怖がらせて抑え、さらに力をつけさせない的確な指示まで出したからね』
「…なんでカバディ」
『さあ?面白いよね、カバディで間接的に世界を救っちゃってる聖女』
なんだか衝撃的すぎる映像に、頭が働かない。わけがわからない。なんでだ。
「寝るわ」
『ええ!?僕放置!?』
「眠いから寝る」
『え~、仕方ないなぁ。また明日ね』
「だから来んな!」
叫びながらも意識は遠のき、俺はようやく眠れたのでした。




