神様は軽いかもしれない
ゆらゆら、水面を漂うような感覚から、一気に目が覚めたような気がした。
『やあ、3年ぐらいぶり?』
私の目の前にはにこやかに笑う白いお兄さん。目は銀色?服も髪も白い。どちらかといえば美形かなって感じで穏やかそうな印象を受けた。白いけど、普通っぽい。
確かに、会ったことがある。いつだっけ?
そう思ったら一気に記憶が呼び覚まされた。
『やあ、死にそうだね』
あの日、多分心臓発作を起こして…意識を失う前にやたら軽い声がした。そばには、全体的に白い人。いつからいたのかな…もう体が動かない。
『君の魂はもったいないなぁ。ねえ、君なら多分助けられる女の子がいるんだ。死にたくないでしょ?君を死なせない代わりに女の子を助けてよ』
「しにたく、ない」
私は確かにそう言った。必死だった。今意識がなくなれば死ぬと本能的に理解していた。白い人が神でも悪魔でもかまわない。死にたくないと心から願った。私、なにもしてない。何もできなかった。後悔ばかりで…私は、本当は誰かを助けられる人になりたかった。
『オッケー、ならおいで。身体はもう使えないから、魂だけだね』
身体から魂が離れると、泣き声が聞こえた。
「たすけなきゃ…」
私は朦朧としながらも約束を覚えていた。女の子を助けなきゃいけない。あの子が私を喚んだんだ。あの子が私を呼んでいるんだ。行かなきゃ、助けなきゃ……今すぐに!
「なかないで…いま、たすけるから……」
『え!?ちょっと待って!まだ説明が!えええええ!?』
焦る白い人の手をするりと抜けて、私は一直線に女の子の所に行った。
「たすけに、きたよ」
もう大丈夫だよ、という気持ちを込めてにっこりと小さな女の子に微笑んだ。
「あなたは……?」
泣いていた女の子がゆっくりと顔をあげた。泣いていたのは、ロザリアだった。彼女に触れて、私は意識をなくしていく。
『うわあああ…だ、大丈夫かなぁ?あ、天啓!天啓はちゃんとあげるからね!』
最後に聞いたのは、アワアワした白い人の声だった。
『………大丈夫?やっぱり僕が居るのは良くないみたいだねぇ』
「いえ…出会った日の記憶が戻っただけです。すいません」
チュートリアルスキップは自分のせいでした。少し気を失っていたみたい。夢の中で夢を見るなんて変な感じ。私は…リン…凛だね。贈り人の私にしか神様は会えないってことかな?
『僕はシヴァ。無理をしてでも言いたいことがあるんだって?』
「あ、はい。まずひとつめ。この世界に連れてきてくれてありがとうございます」
『…………………………はい?』
「どうしても直接お礼を言いたかったんです。私は今、とても幸せですから」
『あははははは!いや、文句言われるかぶっ飛ばされるかと思ってたよ!ハリセン対策にへるめっとまで用意したのに~』
「シヴァさん、それはハゲヅラですよ。頭を守りませんよ。お礼はきちんと相手の顔をみていいたいじゃないですか」
シヴァさんは日本のバラエティーをこよなく愛する神様でした。暇神とも言う。ようやく笑いがおさまったシヴァさんは私に問いかけた。
『もうひとつは?』
「…答え合わせをしたくて。あれはーーー」
『……まさかヒント無しで真実に辿り着くなんてね。正しいよ。詳しくは話してやれないけどね』
真っ白な神様は、肯定した。確証は得た。後は走り続けるだけ。この質問は直接神様に聞くべきだと感じた。
『そろそろ目覚めなさい。これ以上は本当にまずいみたいだ。見守っているよ、我が愛し子達。幸せにおなり』
「あ、あと、アルフィージ様達の武器作るときにヒントをありがとう」
3つになったけど、まぁいっか。シヴァさんはへらりと笑って手を振った。あの時の声はやっぱり彼だったのか。
急速に意識が現実へと戻ろうとしているのがわかった。
私は愛しいこのルーンアークで生きていく。今度こそ、悔いのない人生を。
短めですがきりがいいので今日はここまでです。




