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悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!  作者: 明。
ロザリンド7歳・訴えて勝つぞ編
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黒幕令嬢、本領発揮

 ロザリンドさんは正義の味方ではありません。しいていうなら自分の味方です。



 30分の休憩後、私もスタンバイしました。さぁ、舞台は整った。後は開幕するだけです。


 証言台にはマーシュ伯爵。かなり憔悴してますな。どうすれば逃げられるか、必死に考えてるんだろうね。逃げ道なんてないけど。


「では、裁判を再開する!」


 裁判長が宣言した。


「お待ちください!な、何かの間違いです!マーシュ伯爵はお優しい方!こんな…お兄様、酷いです!」


「ロザリンド…」


「そうですわ、目を覚ましなさいロザリンド!」


「ミルフィリア!?」


 ヒーローは遅れてやってくる。我らが悪役令嬢(ヒーロー)ミルフィリア様、参上です!きゃー、素敵!


「間に合ったようですわね?わたくし、ミルフィリア=ローレルはマーシュ伯爵を糾弾いたします!」


 周囲が一斉にざわついた。


「静粛に!静粛に!どういうことかね?」


「わたくしはクリスティアに一足先に帰還する予定でしたの。そこで暴漢に襲われましたわ。マーシュ伯爵、彼らは貴方に雇われ私を殺そうとしたと申しておりますわ」


「私は関係ない!」


「…そうですわね…わたくしが一足先に帰ることを貴方が知るはずありませんわ」


「…まさか…ミルフィリア、ごめんなさい。私、マーシュ伯爵に話したわ。ミルフィリアが一足先に帰ることを」


 マーシュ伯爵に視線が集まった。


「まぁ!ならなんの問題もありませんわね。往生際が悪いですわよ、マーシュ伯爵!そろそろ罪を認めたらいかが?」


「…お前さえ、お前さえ居なければ!お前が全てを狂わせたんだ!お前さえ居なければァァァ!!」


 とちくるったマーシュ伯爵がミルフィに襲いかかる。小気味いいハリセンの音と共に、マーシュ伯爵は鼻血を噴き出しつつ吹っ飛んだ。


「異義あり!!うちのミルフィになにしてくれんですかぁぁ!!」


 そう、ミルフィは演技をしていただけだ。黒幕は私ですから!吹っ飛びぶりに爆笑するアルフィージ様と兄。しかも武器はハリセン(もちろん指輪だから威力はスゴい)というシュールさです。


「は?」


 私の様子がガラッとかわり、周囲もマーシュ伯爵もびっくりである。ちょっと予定より早かったが、レッツネタバレ!


「ミルフィリアが居なくても、貴方は捕まりましたよ、おバカさん。貴方は私に嵌められたんですよ。ミルフィリアに貴方を散々コケにしてもらい嫌悪と憎悪を煽り、私を信頼するよう仕向けて誘導したんです。見事に引っ掛かりましたねぇ。バーカバーカ」


「は?な…!?」


「貴方はミルフィリアに手を出すべきではなかったんですよ。罠だったんです。私がミルフィリアの帰還予定を伝えたことさえも」


「な…!?」


「ちなみに、水田の1件はちゃあんと陛下に報告済みですよ。貴方を慎重にさせないため、弄ぶためにレオールさんに見逃したふりをしてもらったの」


「あ…あ…」


「さらにさらにぃ、証拠証拠って言ってましたけど…ラビーシャ!」


「はい、ご主人様。こちらになります」


 うちの忍者(メイド)がずっしりした資料を持ってきた。私はそれを掲げる。


「裏帳簿~」


 おどけてドラ○もん風に言ってみる。見覚えあるでしょ?君んちの裏帳簿さんだもんね。あ、顔色が真っ白だね。


「このラビーシャは超有能な私の専属メイドなんですよ。行儀見習いとして潜入してもらってました。ラビーシャ、潜入捜査お疲れ様です」


「ご主人様にさらに朗報です。商人からも裏がとれてます。こちら報告書になります。この帳簿はまちがいなく本物です。ミルフィリア様暗殺の契約書もありましたのでお持ちしました」


「うがぁぁぁぁぁぁぁ!」


 自らをかきむしるマーシュ伯爵。あっはっは。

 裁判官さんは首をかしげた。


「…貴方達は既に確たる証拠を持っていたわけですか?何故すぐに出さなかったのですか?」


「弄ぶためです。すぐにとどめをさしたらつまらないでしょう?散々いたぶったあげくに裏切られて絶望して欲しかったんです」


 裁判官さんは笑顔で黙りました。沈黙は金なりですね?若干顔がひきつっているのはスルーしますよ。

 マーシュ伯爵が呻いた。


「わ、私は何も…」


「…ええ、そうね『私には』なにもしていない」


「は…?」


「けれど、私の友人のお父上を嵌めて領地を取り上げ3年も投獄させ、私の友人を経済的に困窮させ、病気の身内を持つ人達から金をまきあげた。あんたがしてきたことに比べたら、可愛いもんじゃない?」


 今回の計画には私の良心(ディルク)も反対しなかった。つまりはそういうことだ。


「ミチェルさんは貴方を友人だと言ってましたよ?貴方が嵌めたと理解していてもね」


「…ロザリンドさん、もう…」


 もういい。充分だ。ミチェルさんは言った。だがしかし、私は満足してないよ!


「お断りします!」


「え!?」


「嫌だなぁ、ミチェルさんたら!私がこの程度で許すはずないじゃないですか!私の親友(ミルフィ)に牙をむいたことを、死ぬほど後悔させてやります!生きることより死ねない地獄ですよ!私は身内に手を出した輩は基本的に許しません!」


 お前が囮にしたんだろうというつっこみは受け付けませんよ!したくなかったんだからね!本当は!


 そして、私は上映会をいたしました。その名も【マーシュ伯爵の黒歴史事件簿】

 内容は、マーシュ伯爵の隠したい過去を徹底取材!恥ずかしい子供時代の失敗談から、ミチェルさんと比較された悲しい少年期、さらには惚れた女性にミチェルさんが好きだからとふられた思い出、思春期のこっぱずかしいポエムなどなど!黒歴史満載です!


「素晴らしいな。的確に心をえぐっている」


「さすがはロザリンド…」


「まぁ、こんなものまで用意してましたのね」


 感心するアルフィージ様と兄とミルフィ。頑張ったよ!睡眠時間も削ったよ!

 ミチェルさんは遠い目をしてます。でもこの事件簿作ってて思ったけど、ミチェルさんはマーシュ伯爵にとって越えられない壁だったみたいなんだよね。年も近いし、比較され…長年のコンプレックスが歪みまくってこんなことになったのかな?


「う…う…許さない、許さない…」


 あ、ついにマーシュ伯爵が泣いた。怒りに燃えて、憎悪をこめて私を睨んでいる。


「う、うわあ!?」


 突如ジューダス様から魔が飛び出し、マーシュ伯爵に入り込んだ。憎悪に惹かれたか?精神的にズタズタだったせいか、魔はマーシュ伯爵を鼠の魔物的な姿にしてしまった。


「ミルフィ、天啓を!」


「はい!『覚醒接触(アウェイクキス)!』」


 ミルフィは私の手の甲にキスをした。一気に身体中から力がみなぎる。私は婚約指輪で白い騎士服風の衣装にかえる。さらに指輪をナックルにしてマーシュ伯爵に襲いかかる。


「ていていていていてい!」


「ちゅううぅ~」


 ちなみに指輪はチタに聖属性付与をしてもらってます。こうかはばつぐんだ!マーシュ伯爵はサンドバッグと化しています。負ける気がしない!


「私のこの手が輝き燃える!敵を倒せと轟き叫ぶ!」


 魔力をナックルに集束する。ナックルの魔力が聖属性に変換され、黄金の炎になる。ナックルが燃えているかのようだ。


「爆熱!黄金波無星(ゴールデンハムスター)!!」


 技名は相手が鼠だからと超適当につけたが、効果はバッチリで、マーシュ伯爵は綺麗さっぱり浄化されました。

 念のためジューダス様のとこに行ったら、また隠れちゃったらしいとのこと。毛虫並みに嫌われてます。カバディの呪いでダメ押ししときました。あと、勝手に出てくんな、出たら構い倒してやるとおまじない(脅し)をしておきました。


「な、なんで私ばかりがこんな目に…」


 マーシュ伯爵は魔を倒すついでに本人も浄化されたらしく、ただ泣いていた。

ついでに私がボコったからボロボロです。


「甘えてんじゃないですよ!コンプレックス上等!なんでって、先に自分がやらかしちゃったからでしょうが!貴方はミチェルさんに負けないよう努力するなり別の優れた部分を伸ばすなりしたらよかったんですよ!勝手に劣等感を持ったあげく、他人を陥れたからです!」


 深呼吸をする。これは、自分自身にも、周囲の人間にも伝えるべきことだ。


「マーシュ伯爵、貴方は全ての貴族を侮辱しました。貴族として、してはならないことをしたのです。貴族であるならば、その責務を果たさねばならない。権力があるからこそ厳しく己を律し、特権があるからこそ国に…民に尽くさねばならない。貴方は本当に血筋以外の部分で『貴族たる自分』を誇れますか?」


「あ…」


 私の言葉にマーシュ伯爵は目を見開いた。場は先程の喧騒が嘘のように静かだ。


 ミチェルさんがゆっくりと近づき、マーシュ伯爵に穏やかに話しかける。


「…ミーキル、私はお前が羨ましかったよ。お前は社交的で私をフォローしてくれることもあった。お前を苦しめていたことを知らなかった。すまない」


「あ…あ…あああああああ!!」


 彼はようやく自分の罪を悔いたのか、悲痛な声で泣きじゃくった。


 裁判長が動いた。ハッキリと通る声だ。


「判決を言い渡す!ミチェル=ラトルは無罪!真犯人としてマーシュ伯爵と共犯の貴族を捕縛し、後日裁判とする!!」


 こうして、裁判は終了した。共犯の貴族?もちろんお仕置しましたよ。内容は秘密ですが、ディルクに途中止められた、とだけ言っておきます。

 それから私の一連のマーシュ伯爵への仕打ちやら、他貴族へのお仕置を見たウルファネア貴族達が『ロザリンド=ローゼンベルクは決して怒らせてはならない。そして彼女の身内に手を出してはならない』と心に刻んだらしい。

 ロザリンドは最近ディルクを判断基準にしています。ディルクは常識人だし、ロザリンドが心から信頼しているからです。ただし、止められてもやめるかはまた別の問題です(笑)

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ユハズ先生も絵が綺麗なので必見ですよ!!悪なりコミカライズ、スタート!! 「悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!コミカライズのリンクはこちら!」 小説二巻、発売中です。書き下ろしもありますよー 「悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!二巻のリンクはこちら!」
― 新着の感想 ―
[気になる点] バルキリーの叫びから絶対G○ン知ってると思いましたw [一言] とある賢者「ロザリンド! こぉのバカ弟子がー!!」
[一言] ゴールデンハムスターがただただ風評被害受けただけだったwww ミルフィとディルクに見捨てられるとは…ロザリンドを唯一止められる良心なのに。
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