まだまだこれから
主賓は怒って帰りましたが、とりまき的な男達は残っています。よしよし、帰った主賓に伝えてね?これから何をするのか。むしろわざわざウルファネア貴族を集めたのはこのためです!
ジューダス様とジェスに目線で合図した。ジェスは頷き、貴族達に語りかけた。
「聖女の恵みは今までは王室のみの物としていたが、このたびウルファネアを救った肉の聖女への褒美として、一般にも流通することとなった!」
「というわけで、皆様に聖女の恵みがどれだけ美味しいか知っていただくための試食をしていただこうと思います。聖女の恵みに関しましては、私と兄、こちらのミルフィリア嬢との連名で事業を行います。興味のある方は後日お話をいたしましょう」
メイドさん達が山盛りのオニギリ、チャーハン、天津飯、炊き込みご飯、お茶漬け、炊き立て白米、牛丼、親子丼、天丼、カツ丼、中華丼、海鮮丼、巻き寿司、お寿司、ちらし鮨…などなど、各種米料理を並べていく。
「ロザリンドのごはん、おいしい…俺ロザリンドのごはんなら魚も好きだな…」
ディルクが幸せそうです。
「そうですか?では今度おいしいお魚料理を作りますね」
「うん」
「うめええええ!?」
「うますぎる!!」
「これ持ち帰れないか!?」
「ずるいぞ!私も持ち帰りたい!」
予想外に大盛況でした。レシピはミス・バタフライ経由になる事を告げ、白米の炊き方だけ教えました。皆様美味しいものへの食いつきが半端なくて、結構怖かったです。ディルクが前に出て全力で守ってくれました。ディルク様、超イケメンです!
今日は解散…という流れになった時、数人のウルファネア貴族に囲まれました。
「お話を伺いたいのですが…」
皆さん暗い表情です。なんですかね?ジェスに頼んでお城の一室を借りました。ディルク、ミルフィ、兄様、王子様達も一緒です。あ、空気になってますがカーティス達がもちろん護衛してますよ。
「さて、お話とは?」
総員から土下座されました。
『子供の命を救うために、聖女の恵みを分けてほしい』
それが彼らの願いでした。詳しく聞いたところ、あのマーシュ伯爵は宗教詐欺もどきまでやらかしていたもよう。めまいがした。
『聖女の恵みは滋養があり、病に効く』
藁にもすがりたい貴族の親は、高値で買って食べさせていたらしい。しかもそれが違法だと知っている…王家への献上品の横流しと理解しているから訴え出ることもできず…子供が治ると思いたくて疑うこともなかったようだ。
「ロザリンド」
怒りで自分の手を傷つけてしまったようです。ディルクが優しく私の手を撫でる。ディルクに寄りかかり、怒りを抑えてから、ゆっくりと語った。
「正直に、嘘偽りなく申し上げます。聖女の恵みに病を癒す効果はございません」
ウルファネアの貴族達は絶望した表情を見せたが、そこにはどこか諦めも見てとれた。きっと頭のどこかで理解していて…それでもすがりたかったのだろう。聖女の奇跡でもなんでもいいから、子供が助かると思いたかったのだろう。私は深く息を吸い込み、言葉を続けた。
「…聖女の恵みには治癒効果はありません。しかし私には浄化の加護精霊がおりますし、兄は薬に長けております。救える者はおりましょう。最善を尽くします。対価として、私の願いをきいてください」
結果として、子供達は全員どうにかできるたぐいの病気だった。多かったのが魔力による自家中毒だ。ジェスは成長抑制のみだったが、心臓等の重要臓器を蝕まれれば、死ぬ危険がある。クリスティアでは比較的ありふれた病気だが、魔法が珍しいウルファネアでは死の病だったようだ。ミルフィも治癒魔法専攻なので、手伝ってくれました。アルディン様、アルフィージ様も魔力コントロールが上手なんで、だいぶ頑張っていただきましたよ。
普通の病気はアリサと兄の薬でなんとかなりました。
「ロザリンド」
「…はい」
「僕は滋養がある薬草をご飯に混ぜるよう言いました」
「…はい。兄様のくれたやつを分量いじらず雑炊に混ぜました」
「他にもなんか混ぜた?」
「食材も普通のですよ!?特選品とかは使ってません!」
「じゃあなんで瀕死の子供が雑炊を鍋一杯一気に食べて、急に元気に走り回るんだよ!」
「知らない!知りません!本当に私はなにもしてませんよ!?」
しいて言うなら、雑炊混ぜながら早くよくなあれ~病気よ治れ~とおまじないはした。しかしそれでよくなったら医者はいらない!…という私にも兄にも原因不明の超回復が何件かありましたが、ま…まぁよくなったならいっか!!
更に今回依頼した貴族以外で子供が病に苦しみ聖女の恵みをたべさせたことがあるものや聖女の恵みを食べさせたものの亡くなった子供達の情報をもらったりと予想外の収穫がありました。
私はきちんと貴族達と対価を約束しました。因果応報とはまさにこの事です。よき行いも、悪い行いも、必ず最後は自分に帰ってくる。
マーシュ家は確実に破滅のカウントダウンが始まっています。どのような結末になるか、今から楽しみですね。




