表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!  作者: 明。
ロザリンド7歳・真夏の恋話編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

213/729

聖女の遺産と武器

 とりあえず、本日はタコ狩りはやめて別荘に戻ってきました。シーダ君のちみっこが退屈しないように、トランポリンとテント、さらにヴァルキリージェットコースターをご用意。たまに脱線するから保護者必須…と思いきや浮いた!

 ヴァルキリーは最近茶目っ気を覚えたらしい。誰だ、原因は!と文句言ったら、ロザリンドじゃね?とカーティスに言われました。否定できぬ。


「すいませんが、私はちょっとこもります」


「は?何をする気だい?」


「アルフィージ様の武器を作っときたいんですよね」


「私の?」


「素材が揃ったんで、完成品を作れると思います!」


「完成品か…それは興味があるね」


「まぁ、満足していただけると思いますよ」


「わ、私にも武器を作ってくださいませんか!?」


「ミルフィ?」


 ミルフィは意志の輝きに満ちた瞳で私を見つめる。弱いんだよね…この綺麗な瞳に。


「必ずや、ロザリィの武器にふさわしい人間になってみせますわ!だから…だから、私も貴女達と共に戦う資格をください!」


「う」


「ロザリィは私をロザリィの弱点だと言いましたわ。私は足手まといなど嫌ですわ!守られるばかりのお姫様なんてごめんです!私は貴女の親友でしょう!ならば隣に立ってこそですわ!一方的に守るのではなく、共に戦わせてくださいませ!」


「……………はぁ」


 勝てる気がしない。説得は無理だろうなぁ。

 本来彼女をいさめるべきジルバは神妙にしている。ミルフィに無茶させたくないが、気持ちが分かるんだろう。彼は私に実力不足を指摘されたばかりだから。


「…わかりました」


 それだけ返答すると、私は聖女の遺産…隠れ家の鍵を使った。


「俺も行く!邪魔しないから!」


「うん」


 ディルクを連れて扉をくぐると景色が変わる。


「オカエリナサイマセ」


 私の腰までしかないどう見てもロボなナビィ君がお出迎えしてくれた。ナビィ君は円筒形に手足がついたロボだ。本人はロボではなく管理AIだと言っている。


「ちょっと工房使うよ」


「カシコマリマシタ。ゲート、オープン」


 ナビィ君があけた隠し扉を通ると、研究室的な部屋に移動した。ここは、救世の聖女の工房。彼女が遺した真の遺産だ。





 この部屋は隠し部屋だった。発見もたまたまだ。貰った隠れ家を探索していたら『この字を読めた貴方へ』と彫ってある壁を見つけた。よく見ると字の下に鍵穴が隠されていて、隠れ家の鍵で開けられた。


 隠し部屋でナビィ君に出会い、ナビィ君に認められて私はこの隠れ家の本当の主になった。


 隠れ家はただの家ではなく、救世の聖女が遺した真の遺産だった。ナビィ君はここの守護者(ガーディアン)だ。ナビィ君に会えなければ、ここはただの隠れ家。ナビィ君が認めなければ、隠し部屋…真の遺産にたどり着けないばかりか隠れ家から追い出される。


 真の遺産とは、隠し部屋。魔法の温室とこの工房。温室にはレア物魔法植物が管理され、工房には魔法がかかっていた。シヴァの祝福だそうだ。この工房の錬金釜を使えば、合成に失敗せず素晴らしい品が作れる。今までの武器もここで製作した。


「ディルクはどうする?」


「大人しく見ているよ」


「わかった」


 錬金釜にミスリル銀、オリハルコン…素材を入れていく。先ずは予定通りアルフィージ様の武器を作ろう。あらかじめもらっといたアルフィージ様の血もたらす。使用者の血を武器に練り込むことで、魔力が融合しやすくなり、他者が使えなくなるのだ。さて、あとは……


『光の薔薇の花びらを入れるといいよ』


「え?」


 なんか声が聞こえた。懐かしいような…ずいぶん前に聞いた声だ。


「ロザリンド?」


 急にキョロキョロしだした私にディルクが声をかけた。


「声、聞こえなかった?」


 私はディルクに確認したが、ディルクは首を振った。気のせい?しかし光の薔薇…聖属性が多少つくかもしれない。いい考えだ。チタに花びらをわけてもらい、錬金釜に魔力を満たす。そして作りたいものをイメージする。アルフィージ様の得意武器はレイピア。優美なレイピアをイメージする。怜悧で美しい、アルフィージ様だけの…


 無事に武器は完成した。すぐにミルフィの武器にとりかかる。ミルフィの得意属性は水、緑、光。水が1番得意。対応素材を錬金釜に入れていく。彼女の血も入れた。アルフィージ様の武器と同じく最後に光の薔薇の花びらを入れた。


 蓮の紋章を刻んだ美しい腕輪。私のイメージ通りだ。自然と笑みがこぼれた。


 それからいくつか必要なものを錬成したり、調合したりした。


「作りたいものは作れました。ディルク、付き合ってくれてありがとう」


「ううん、真剣なロザリンドを見るのも楽しいし…この釜も面白いから。溶けて混ざって…不思議な魔具だね」


 錬金釜を見つめるディルク。確かに不思議だよね、この釜も。


「確かに。じゃあ戻ろっか」


「…その前に…ちょっと充電させて?」


「ひゃあ!?」


 ディルクに抱きよせられてスリスリされた。


「ま…待って!恥ずか死ぬ!」


 私はまだ昨日のダメージが残ってるんだよ!嫌ではないけど、恥ずかしい!!


「…だって、ミルフィリア嬢の匂いがするのがやだ…我慢してたんだけど……どうしても駄目?」


 ディルクはしゅんとしてしまった。私は朝ディルクを悲しませた負い目もあり…いや、言い訳だね。心臓は割れそうだけど、私もディルクがイチャイチャしたいならしたい!女は度胸です!

 ディルクの腕にそっと触れる。すり、とすり寄る。目は合わせられなかったが、震える声で伝えた。


「す、好きにして……」


 なんとか了承の意思は伝わった…はずだが、ディルクが動かない。あれ?おかしいなと思って顔を上げたら、ディルクが照れて…いや、悶えてました。


「俺のロザリンドが可愛すぎる…」


 いや?可愛いってのはミルフィみたいのを言うのであって、私は違うよ。言ってて悲しいが可愛くないよ。ディルクのツボがわからん。


「んん…」


 その後、復活したディルクに容赦なくスリスリぎゅうぎゅうされました。うう…嬉しいんだけど恥ずか死ぬ!と思いつつ耐えました。恥ずか死ぬ時に可愛い連発はやめていただきたい。ディルクは無意識でどSなんだろうか。何かが爆発しそうでした。





 工房から出た私達。ぐったりな私とご機嫌なディルク。


「大丈夫か?」


 アルディン様に心配されました。なぜ人は、大丈夫じゃないと思った時に大丈夫かと聞くのだろう。


「恥ずか死ぬ手前でした…」


「ああ…」


 なにかを察してアルディン様に呆れられました。


「ディルク、ほどほどにな?」


「…まぁ、その…善処します」


 え!?しなくていい!ディルクの裾をちょっとひきました。


「…善処…いらない。ディルクがしたいようにが…いい、です」


「………前言撤回します。可愛いんですよ…くっそ可愛いんですよ!善処できない…!」


「うん、まぁ…大体わかった」


 アルディン様が遠い目になっちゃいました。いや、ごめんなさい。


「それで、私の武器はどうなったのかな?」


 アルフィージ様が楽しげだ。私も笑顔で応じました。


「ふっふっふ。バッチリですよ!今の私の最高傑作です!」


 ポーチから、氷の魔力が溢れる。予定していたアルフィージ様の最強装備、海王のレイピアとは違う出来ばえだが私の言葉に偽りはない。

 優美な刀身から溢れる膨大な水の魔力。繊細な彫刻が柄にまで施され、アルフィージ様を思わせる。


 アルフィージ様は迷わず手に取る。魔力が呼応して溶けて混ざっていく。


「素晴らしいな…」


 アルフィージ様は刀身に触れる。


「銘は氷雨です」


「氷雨…汝、我が生涯の剣となれ」


 氷雨がアルフィージ様に呼応した。アルフィージ様の魔力を増幅して歓喜している。あれはアルフィージ様だけの魔剣だ。


「大事に使ってくださいね」


「…これにふさわしくなるのは大変そうだな」


 言葉とは裏腹にアルフィージ様は嬉しそうだった。気に入ったみたいで何よりです。


「ロザリンドは伝説の鍛冶職人にでもなる気か?」


「あははー」


 アルディン様が引いてます。私じゃなく、錬金釜がチートなんだよ。でも言えない。あれはマスター登録した私にしか使えないらしいし、守秘義務があるんだよねー。




「あれが完成品…か」


「アタシ達のが試作品だってのも頷けるわね…何よあのでたらめな魔力…」


「あれと同レベルの武器にふさわしく…か。めちゃくちゃ難題だな」


「…今以上に精進する必要がありますね」


 元暗殺者組とジャッシュが呟いてました。大丈夫!後7年あるから!


「ミルフィにはこれね」


「腕輪?」


 ミルフィに腕輪をはめた。腕輪は彼女に呼応して可憐な蒼水晶の蓮を象る美しい腕輪に変わる。優しい魔力を感じる。


「まぁ…」


「ミルフィ、弓の構えを」


「こうですの?」


 ミルフィの腕輪が弓に変わる。意匠は腕輪と同じでミルフィにふさわしい繊細な作りだ。


「銘は水蓮。矢は魔力になります。弓の形状をしてはいますが、魔力増幅器だと考えてください。無詠唱でも威力を落とさず魔法が使えるはずです。ミルフィは実戦が圧倒的に足りない。練習として、ディルクに射ちまくってください。かすれば合格。ディルク、いいよね?」


「かまわないよ」


「行きます!」


 ミルフィは正直、かなり筋が良かった。いや、天才だった。数日…いや、数ヵ月はかかるとふんでいた。

 しかしミルフィは連続射撃や曲がる矢・回復・閃光等々の特殊攻撃をあっという間にマスターして、矢がディルクに直撃しそうだったので、とっさに結界で弾きました。あの…ディルクを中心にクレーターできてんだけど……

 私を含めて、全員がその威力にドン引きしています。


「……この場合は合格ですの?」


「合格です」


 文句なしです。ミルフィは幼い頃からお父様と狩りをしていて弓の扱いに慣れていたそうです。


 しかし、天賦の才としか言いようがない。貰ったばかりの弓のポテンシャルを引き出し、威嚇攻撃で足を止めてからの拡散弾2連射撃…1射目の死角からの2射目である。


 ミルフィは非常に優れた射手でした。知らなかった……人生色々、ありますよね。



 情報補足

 アルフィージ様最強武器とミルフィの腕輪はどちらかといえば魔具よりなので元暗殺者組と違い細かい調整は不要でした。

 本来だとアルフィージルートで水の精霊王イベントがあり、素材を集めてアルフィージの最強武器を作る流れでした。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユハズ先生も絵が綺麗なので必見ですよ!!悪なりコミカライズ、スタート!! 「悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!コミカライズのリンクはこちら!」 小説二巻、発売中です。書き下ろしもありますよー 「悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!二巻のリンクはこちら!」
― 新着の感想 ―
懐かしい声って、やっぱり先代の聖女「こ◯は」さんですよね〜。 そっか〜、もう今のロザリンド(=凛)にとっては「誰だか直ぐに特定出来ないけど、懐かしい声」になっちゃってるんですね……(p_-)ホロリ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ