歌の姫神様
今日は短めだから連投です。
海岸に行くと、人が集まってました。私達が来たのに気がつくと、皆さん道をあけてくれます。
砂浜には海精霊のお姉さん達と、山盛りの素材。
山盛り?山盛りである。山盛りに積まれている。欲しかったものから、あればラッキーな激レア素材まで。これ売ったら一生遊んで暮らせるんじゃないか?と思われる量である。
「奇跡の歌姫様!皆で頑張りましたわ!」
ほめてほめて!と尻尾…じゃなかった尾びれをびったんびったんするお姉さん達。水が跳ねる!地味に濡れるからやめてほしい。
「だからロザリンドですってば。それはともかく、すごいですね…皆さん頑張ってくださったのですね。ありがとうございます」
「いいえ、奇跡の歌姫様は恩人ですもの」
「それに、頑張って集めたらあの素晴らしい歌が聴けるかもって話で、聴いてない皆もどうしても聴きたいって、死に物狂いで集めたんですよ」
若そうな海精霊の女の子が笑顔で話しかけてきた。この子は昨日も居たな。
「ハードルが高いですね…」
正直、私の歌にそこまで価値はないと思うんだが。ああ、でも贈り人の歌だから珍しいのかな?まぁ、別に歌ぐらい減るもんでもないし、歌うのは嫌いじゃない。こんなに頑張ってくれたわけだし歌うぐらい、いいかと思う。
「では、昨日と同じでいいですか?」
「はい。他にもあれば何曲かお願いしたいです」
「では適当で」
指輪をギターにかえて、まずは昨日と同じ曲を。それから、ポップス、ジャズ、演歌、童謡、讚美歌…あらゆるジャンルの歌を思いつく限り歌った。
「あー、さすがに喉がきつ…」
「どうぞ。流石です、お嬢様。素晴らしい歌声でした」
「ありがとう」
できる従僕がアイスミルクティを差し出した。おいしい。ジャッシュは昨晩いったん帰宅して、マーサが休みになったんで代行で来てくれました。
ジャッシュは本当に気が利く。ミルクティのおかげで喉も潤った。のど飴までくれました。ありがたし。
あれ?そういやあ海精霊さん達、反応ないな。彼女達をみたら、固まっていた。そして、硬直が解けると涙を流して叫びだした。
「ブラボー!!」
一斉に拍手をしだす者、跳び跳ねる者など反応は様々だ。だから濡れるからやめてほしい。喜んでるようなんで、まぁいっか。
「奇跡の歌姫様ではなく、まさしく女神…!女神の歌声!!」
「歌の姫神様ですね!!」
まてまてまて!大げさ!!なんかランク上がってるじゃないか!!
「おお…すっげぇ歌だったべぇ」
「おら、鳥肌たっただよ」
「すっげぇ声だったなぁ。男みたいだったり、女みたいだったり…」
「あの姉ちゃん達が女神様だっつうのもわかるわぁ…吟遊詩人だってあんな歌声はなかなかないわなぁ…」
待って!!おっちゃんおばちゃん達まで納得しないで!本職の方が多分上手いよ!
「ぜひ…ぜひまた歌をお願いしたいです!また素材集めますから!」
「またあの素晴らしい歌を聴けるならば!素材などいくらでも集めますわ!」
キラッキラしている海精霊さん達。
「あー、機会があればね?当面これだけあれば不足はないかなぁ…」
不足どころか、大量に余るよね…どうしよう。あ、賢者のじい様の土産にしよう。きっとめちゃくちゃ喜ぶな。踊るんじゃないか?あのじい様紙一重系の天才だからな。
「はい!いつでもお申し付けくださいませ!」
「用件があればこれを!」
「ほら貝?」
手の平サイズのほら貝を渡されました。戦国武将がブフォーとかやるあれです。吹くの?いや、魔具だな。僅かに魔力がある。
「海精霊の証と言いまして、友好の証で、それをひとたび吹けばたちまち近くの海精霊やその眷族が集まり、お力になりましょう。素材が欲しいときはそれで呼び出してくださいませ」
私の社交辞令は通じていなかった。海精霊さんは呼び出される気まんまんである。黒い主従がクスクス笑っている。カーティス後でしめる。
もはや私の称号は修正がきかず、定着したようです。漁村のおっちゃん達にまで、歌の姫さんと呼ばれてました。神じゃないだけまし………いやいや、私は普通…よりちょっぴりおてんばな公爵令嬢です!
本当にどうしてこうなった!?
きりがいいのでここまでになります。
ちなみに補足。
この世界ではゆったりしたバラードや詩の朗読が主なんで、ロザリンドの歌はかなり珍しく、前衛的で素晴らしいものです。吟遊詩人がいたら即弟子入り志願しちゃうレベルだったりします。
ロザリンドはじっくり吟遊詩人の歌を聴いたことがないので、その事を知りません。




