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悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!  作者: 明。
ロザリンド7歳・真夏の恋話編

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酒と涙と女と男

 ふと目が覚めて、喉が渇いたので水をのみに台所に向かった。あんまり寝た感じはしないから、まだ夜中だろう。


 台所に灯りがついていて、マーサがワインをのんでいた。


「マーサ」


「お嬢様…どうなさいました?」


「なんか目が覚めちゃった。喉が渇いたんだけど」


「ホットミルクをお作りします。お嬢様がもう少し大人でしたら、ホットワインにいたしましたけれど、残念ですわ」


「大人になったら一緒にお酒をのんでくれる?」


「喜んで」


 そうこうしているうちにホットミルクができたらしく、マーサは蜂蜜をたらしてくれた。甘くておいしい。


「ねえ、マーサ」


「はい」


 マーサはまたワインをひと口飲んだ。





「そういえば、マーサはいつルドルフさんと結婚するの?」




 マーサがワインを吹き出した。


「は!?な!?ししししししませんよ!?」


「そうなの?」


「な、何故そのような…」


「いや、猪豚亭のおかみさんから聞かれたから。よくルドルフさんと呑んでるんでしょ?」


「……はぁ、まぁ……お嬢様」


「うん?」


「本来は許されないと思いますが…話を聞いていただけますか?酔っぱらいの言葉だと流してくださって結構ですから」


「いいよ」


 マーサは背筋を伸ばすと、話を始めた。


「最近、ルドルフは呑むたびに求婚をするのです。でも酔っぱらいの言葉ですし…」


「酔っぱらいじゃなければ求婚を受けるの?求婚をされると分かってて呑みに行くなら、脈はあるよね?」


「………そうですね。酔っぱらいでなければ……受けるかもしれません」


「むしろ、マーサから呑む前に言っちゃうのは?」


「無理です」


 即答でした。


「私は可愛らしくもなければ若さもない。強さがとりえのおばさんです。自信がありません」


 私はそっとマーサの手を握った。


「マーサは私にとって優しい自慢のお姉さんです。マーサは美人でしっかりもので、頼りになる大人です。私が心から信頼できる大事な人です」


「お嬢様…」


 マーサはウルウルしています。


「よし、女は度胸!マーサ、私に任せなさい。魔法をかけてあげます」


 マーサにメイクを施し、ワンピースを着せて、髪もいつものまとめ髪ではなく少し下ろして結いました。


「お、お嬢様?」


「私からの魔法です。今日のマーサは素直になれます。ルドルフさんは呼び出しますから、頑張ってね。明日は動けるなら迎えに行きますから」


「え?ちょ!?な、なんの心配ですか!?」


 マーサは猪豚亭の個室に待機してもらい、ルドルフさんに緊急だと行ってもらいました。


 うまく行くかは、神のみぞ知る。まぁ、着飾ったマーサに見とれてたぐらいだから、大丈夫とは思うけどね。うむ。私、いい仕事した!




 いい時間だし寝ようと別荘の部屋に戻ったら、部屋の前にカーティス・アデイルとディルクが居ました。なんか二人がかりでディルクを止めようとしているようですね。


「…何してんの?」


「いや、ディルクがロザリンドと寝るって聞かなくて…ロザリンド!?」


「はい?ディルクはどうして…」


「ろざりんどらぁ…」


 酔いどれ天使がいらっしゃる!へらりと無防備に笑うディルク。私に抱きつくとスリスリしています。


「ろざりんど、すきぃ…いっしょに寝よ?」


「喜んで」


「即答か」


 呆れた様子のアデイル。マイダーリンからのお誘いです。断る理由などありません。


「ディルクはなんでこんなへべれけなの?」


「あー、俺らさぁ、元暗殺者だから薬に耐性あるだろ?酒にも耐性があって、普通の酒じゃ酔えねぇの」


「…普通じゃない酒を飲んだ結果が…今か」


「わりぃ」


 カーティスも悪いと思っているようで素直に謝罪してきました。珍しい。


「ろざりんど、かまって?」


 私の腰に巻きついたディルクが首をかしげる。可愛い。私よりでかいのに可愛い。


「喜んで!ディルク大好き!」


 力一杯抱きしめると、ディルクは幸せそうに笑う。


「えへへ、うれしいなぁ」


「お持ち帰りは可ですか」


「真顔で何をぬかすか、このバカ娘!」


「あた!」


 アデイルさんからデコピンをされました。


「あでいる、ろざりんどをいじめたら、めっ!」


「ディルク~、痛かったよ~」


 わざとらしく甘える私に、ディルクがじっと額を確認した。あ、これダメなやつだ。ディルクの目がヤバい。直感した。まずい!


「あでいる?」


 ディルクは目がマジである。殺気がヤバい。


「ちょ、待て!死ぬ死ぬ死ぬ!か、カーティス援護!」


「おー」


 カーティスもディルクに斬りかかるが、ディルクは余裕だ。


「ディルク、強くなってねぇか!?」


「最近魔力制御の習熟度が上がってまして、連敗記録更新中です。勝てやしない」


「マジか!」


「マジです」


 試しに魔法で援護しても当たらない。


「あぶなっ!?小娘!こっちがあぶねぇだろうが!」


 オネエの皮を捨てたアデイルに叱られました。逆にディルク以外に当たりそうですね。


「あっ!?」


 アデイルのショートソードが折れました。カーティスがフォローしたものの、カーティスだけでは勝てません。


「アデイル!」


 まだ試作段階でしたが、アデイル専用武器を投げ渡しました。一見鞭の様ですが、先には刃がついています。


「銘は土蛇です!使ってください!」


「これ…後で話を聞くからね!」


 アデイルが慣れた武器になったため、なんとか互角の勝負になってます。あの鞭もどき、実はゲームでアデイルが本気になった時に使った武器を模しています。予想通り、先ほどより動きがいい。


「ロザリンド、俺には?」


「まだ試作」


「あるんだ?」


「あるね」


 そんな会話をする余裕があるぐらいだ。


「ちょうだい」


「仕方ないね。銘は風花と風切です!」


 2刀で1対の双子剣を投げる。


「お?」


 カーティスの…私があげた古い剣が風花と風切に吸われてしまいました。


「へー、面白い剣だな」


 カーティスが再びディルクに斬りかかる。速い!カーティスは説明なしに使い方を理解したらしく、特殊効果の加速と風圧をうまく使いこなしています。


「くっ」


「ディルクに怪我させないでよ!?」


「わかってる!」


 カーティスとアデイルは少しずつディルクを追い詰める。しかし、ディルクが獣化するとまた拮抗した。いや、カーティスとアデイルが疲弊している。まずい。


 態勢を立て直すためにカーティスとアデイルがいったん距離を取ると、ディルクが座りこんだ。


「え?」


「ろざりんど、かーてぃす達にばっかりかまって…ずるい」


 か、可愛いいぃぃぃ!私の脳内はそのひとことで埋め尽くされた。お耳も尻尾もしょんぼりしてますよ!しくしくと泣き出すディルクに、私はもう、ドキがムネムネしてます(混乱)


「ごめんね、ディルク!全力でディルクにかまうから!」


「うん。ゴロゴロ…」


 満足げに喉をならす私のかわいこちゃん。尻尾も身体も素直に私に甘えてくれます。し、幸せぇぇ!天国はここにあった!


「美少女台無しね…デレデレだわ…武器のこととか聞きたかったけど、仕方ないわね」


「また噴火する前に、ディルク寝かしといて」


「任されました!」


 ディルクを寝かしつけるなんて、素晴らしいご褒美ですよ!私はディルクに甘えられながらディルクを誘導して、別の客室で眠ることにしました。

長くなったので、いったん切ります。

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ユハズ先生も絵が綺麗なので必見ですよ!!悪なりコミカライズ、スタート!! 「悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!コミカライズのリンクはこちら!」 小説二巻、発売中です。書き下ろしもありますよー 「悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!二巻のリンクはこちら!」
― 新着の感想 ―
[一言] ロザリンドの戦い で  私は大きな失敗をしました。あらかじめ夜着を手元に準備すべきでした。あるいは、ウエストポーチさんがあればどうにかできたのでしょうが、寝るのにウエストポーチをつけるバカは…
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